ニューヨーク(NY)事情


   YT/1992-6-13

 ニューヨーク(NY)について、2回の出張で感じたことをまと
めてみたいと思います。

1.なぜNYか?
 NYはアメリカの縮図とともに、世界の縮図でもあり このNY
をよく調べると世界の今後の動向がよくわかるはずである。
なぜNYが世界縮図なのか? これは、いろいろな民族がいること
と、そのありかたが途上国と先進国の様相とよく似ていることであ
る。

2.シェアの考え方
 アメリカは、身分差別のない国としての建前があるため、人種や
身分差別をシェアということでたくみに仕組んでいる。

 たとえば、NY市営地下鉄は1ドル25セントであるが、コネチ
カットに行く快速電車は15ドルもする。この結果は、地下鉄に乗
れるハーレムやブロンクス・ブルックリンなどの地域に黒人や下層
階級の人が住むことになる。そして中産階級や上流階級の人が地下
鉄のないフォートリーやコネチカットに住んでいる。

 NYのマンハッタン島は海に面した所から1STから215ST
のストリートと縦の方向にアベニーによって道と街が構成されてい
る。

 マンハッタンを車で通ると、この街の様子が極端に違う。コロン
ビア大学がある100STでそれより上は、ハーレムであり黒人が
住み、それより下は、上流階級が住む街であり、街が1つの道で完
全にわれる。1方は暗い・汚い街であり、1方は明るい・きれいな
街である。このコントラストがシェアの考え方の根本であろう。

 デパートでも高級なデパートでは、ポロシャツが200ドルの物
しかないが、中級のデパートでは30ドルの物が中心である。デパ
ートもこのように階級分けをしている。

 なぜシェアが必要なのでしょうか? 人間の能力のレベルが極端
に違いすぎるため、またアメリカの国是でもある移民の流入ため、
言語能力の違う民族がいる。

この人達にも、仕事と衣食住を提供する必要がある。このため、安
いものと高いものをシェアする必要がでてきたのであろう。NYの
やりかたが異質な人達を共存させる1つの方法であろう。

3.ジョブ・シェアについて
 シェアのなかで1番興味を持ったのが、仕事のやり方である。
今回、日系企業のコンピュータ・システムの設計で2回の出張をし
たが、現地のキーマンから『ジョブ・シェアを必ずシステムの中に
入れてくれ』と要求された。

 このジョブ・シェアとは、優秀な人とできない人の能力差があま
りにもありすぎるため、この両者を有効に組み合わせて、仕事をす
ることを意図したシステムである。このため、最低レベルの従業員
については単能の職務をマニュアル化して、それ以外のことは失敗
する可能性があるためできないようにして万全を期することとなる。

日本ではアメリカではすべての従業員が職務をマニュアル化されて
いるように言われているが、あるレべル以上の社員はあまりマニュ
アルはない。日本の社員と同じである。

 よって、課長・係長以上が日本の社員レベルのように思うし、そ
の様に会社も処遇している。そのため、課長が技術力や管理技術を
必要しているが、一方休みの考え方は日本の一般社員並である。

5時には会社を出る。日曜出勤のときは必ず代休を要求されるとの
こと。これも若くして課長や係長になるため、家庭の奥さんや子供
さんとのスキンシップを大事にしているためである。これをしない
と離婚の可能性もあるため やめをえない面がある。もう一方、ほ
とんど会社にいる猛烈社員もいる。

 このため、能力の差も大きいが給与差も大きい。
最低賃金は年2万ドル(260万円)、課長レベルは年6〜7万ドル
(780〜910万円)程度、日本からの派遣社員は年20万ドル
(2600万円)となるが、役員クラスは年200万円(2億円)
ももらっている。

4.シェアの危険性について
 最低賃金年2万ドルは安いと思われるでしょうが、これでも職が
あるだけまだなしであり、今は職がないホームレスが多い。このよ
うに貧冨の差が、大きくなってしまったことにより、ある地域は犯
罪の多発地域となる。
ハーレム・ブロンクス・ブルックリンには入るなと言われる。車で
通るだけでも雰囲気がおかしいのがわかる。

 ハーレムでは黒人が中心であり、他民族が入ると危ないとのこと
。また、一つの民族は集団で住む傾向にある。中国人街など、韓国
人や中南米の人々などもそれぞれ固まる傾向にある。このような地
域にいくと他民族の人は迫害を受ける可能性がある。日本人はこの
ような固まらないで、上流階級・中産階級の白人の住む地域に住ん
でいる。

 身分の固定化が進み、最下層の人たちにあきらめの気持ちがでて
きた。このため職場での犯罪が増加しているようである。そして
益々会社は最下層の従業員を信用しなくなる。日・土曜日や休日に
会社に入れないとか、自分の部屋しか入れないようにするなどセキ
ュリティが厳しい。

 この社会全体でそれぞれの階級が自己主張すると、特に最下層の
人々がそうすると暴動という形になるのであろう。NYでもロサン
ジェルスと同様に暴動が起こりそうだったとのこと。しかし、NY
では黒人リーダが暴動は止めようと制止したため、15軒の焼討ち
で終わった。しかし、これがワシントンでは暴動は絶対にないのだ
そうである。なぜかというとこの街全体が黒人の街であり、白人は
すべて他の州の郊外から通勤しているためであるそうだ。

 一つ、気になるのが韓国人たちである。フォートリーのある街に
いくとハングル文字のみで書かれた看板しかない店が続いていて、
アメリカではなく韓国にいるような錯覚に陥る。韓国人がロスで暴
動の標的になった理由がわかったように思った。韓国人は自分達だ
けの街を作って、明確に排他的に他民族を退けている。この街の白
人たちは頭にきているとのことである。
フォートリーは白人の街であり、韓国人は後から住み始めた。

5.シェア以外のこと
 ダウンタウンへ行こうと言うと、我々は繁華街に行くことになる
が、NYではSTの若番の方へ行くこととなる。アップタウンは
STの高い方へ行く意味である。 ジャズの名曲で『A列車で行こ
う』があるが、これは地下鉄のAに乗って、ハーレムへ行こうであ
ることを知った。NYの地下鉄は都営三田線というような路線ごと
の名前がなく、1〜9とA〜Zなどの記号が路線名となっている。

 このため、ある場所を案内するためには、Aの地下鉄で
UPTOWN方向に乗り、145STで降りてと言うことになる。
この通り行くとハーレムになるので皆さんは実行しないでくだいね。

 もう1つ、食事では中国料理・イタリア料理・フランス料理がお
いしい。この3カ国の料理は万国共通でうまい。またビールはバド
ワイザーが1番おいしい。しかしなぜ日本で飲むバドワイザーはお
いしくないのであろうか?
それに比べて、ステーキは1級の店でもあまりおいしいと感じない。

6.今後のNYについて
 移民によって、国が成り立っているアメリカではそれが有効働く
ように国のシステムができている。これはローマ帝国でも唐帝国で
もおなじである。しかしこのことが、長所でも短所にもなっている。

 異民族同士が、協力している間は社会はうまく機能するが、民族
が排他的になると社会の荒廃する。しかし、現在荒廃のNYをきれ
いにする方向にある。これは、米国経済が好景気であり、NYの行
政費用が潤沢であるため。

 再開発事業が盛んになっている。
  しかし、社会資本の老朽化は進んで社会のインフラがダメになる
可能性がある。もう1つ、銃社会のため、下層の人が高級住宅街で
発砲する事件が瀕発している。

この面からのシェアが嫉妬になっている可能性がある。
しかし、東京には移民を入れないのか? 日本が覇権を取り、世界
に影響するようになると、入れるよう圧力が掛るはず。入れるとす
れば、今の中にNYの仕組みを研究しておくべきである。
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