人本主義対資本主義


    F/1993-7-3

  日本と欧米の比較論の1つです。参考にしてください。

1.欧米科学技術の問題点と日本の考え方について

 科学技術は、全体を部分・部分に分割し、その部分を解析することに よって部分をよくし、その後再度部分を組み立てることで全体をより良く できるということで成り立っている。しかし、ある部分だけがあまりにも 精致すぎて全体としては使いものにならないことが増えているし、 それ以上に、精致さが感性的であり多値的な分野になってしまったことで わかりにくくなってしまった。
もう1つ、人間にとってよいものだけを選別して、悪いものは排除する思想になっているため、全体のバランスが くずれることがしばしば発生している。
 一方、日本の最近の考え方は、全体のバランスは善と悪の2つが調和して いる状態であるとの前提で2値論理で考えている。そのことによって、 精致さを求めないためわかりやすい。
 このことは、サンマーク出版、船井幸雄の『これから10年本物の発見』 に良い例がある。
たとえば、琉球大のヒガ教授が開発したEM農法である。 『自然界には2つの方向性がある。1つは蘇生の方向、もう1つは崩壊の方向。 自然界は、この2つの方向のバランスによって成り立っている。常に蘇生の 方向に少し微生物相を引っ張ると農業の生産力に直接結びつくことになる。』 とヒガ先生は言われている。EM農法で出た利益はすべてその国に還元される。 この原則があるため、特定の企業の金儲けには無縁である。
 船井総研の会長である船井幸雄先生の本は、すべて人間の生き方や物の 考え方の中心が記述されているため、日本の一般化原理の考え方の生まれる 理由がわかる。

2.事象の歴史的意味について
 1章の理由により、日本の発見や発明の方が、欧米の発明より一般性が 高いという現象が生じてきている。その日本の発明は、陰陽理論である 2値論理と人類を平等に見て、金儲けをせずに人類の役に立てたいとの人類愛が 裏打ちされているように思う。これに対して欧米の発明は、精致に議論し ようとして多様に論理立てる多値論理と個人主義の悪い面であるエゴイズム であり、その結果の金儲けだけであると見える。
 一般性の高い文明は、低い文明を支配する可能性が高い。欧米諸国は 一般性の高い理由で19世紀以降世界を制覇してきた。ただ中国の歴史を 見ると、蒙古のように一般性の低い文明が中国の高い文明を支配することも あった。しかし、少なくても一般性の高い文明の人々は支配されるのを嫌う ことは確かである。蒙古が少し衰えると、中国でも支配権を脱換している。
 日本とアメリカの2国関係も、アメリカが強い状況から見直しの時期に来て いる。

3.アメリカの方向について
 もう1つ日本とアメリカの問題は、日本の一般性の高い商品や制度を 輸出するとアメリカのエリート社会を潰すことである。現実として、アメリカで 大問題となっているが、ホワイトカラーを中心とした人員合理化の嵐が IBMやDECなどの製造業で吹き荒れている。しかし、現在日本的経営を 取り入れているアメリカの会社では、エリート社員がほしいがエリート社員は 逃げていくそうである。それは管理者と労働者を同一の人間と見る日本的経営は、 エリートから見ると権益侵害と見えるのであろう。
 アメリカは、エリートしかできない感性のきく世界や特殊解でのコンサルトの 世界でしか商売がない状態になっている。この商売は、弁護士や弁理士、 企業コンサルタントなどのサービス産業である。この世界に逃げ込むしか ない、これを日本は深追いするのは止めた方がいい。

4.人本主義とは
 このアメリカと日本の違いの根元は何か?という疑問があったが、この違いは、 人本主義社会の日本と資本主義社会の欧米であるとの説明が一番わかりやすい。
 人本主義の説明は、ちくま学芸文庫から出版されている伊丹敬之の『人本主義企業』 を読んでもらえばわかるが、要約すると、企業の所有権は資本主義では資本家で あるが、人本主義では従業員である。
このため、日本では社長であっても、給与は新入社員の給与の数倍程度で あるが、アメリカでは社長と労働者では100倍以上違う。
人本主義企業では、経営の関与も労働者まで参加できるようにしている。 一方資本主義では経営は、経営者・管理者やエリートが独占している。 もう1つ、人本主義社会では、同一の相手と長期継続的に 取引関係ができ、その関係の維持のため共同利益の最大化を原理とし、利害の 調整をしている。これを取り上げて、資本主義社会欧米諸国のエリートから 系列取引はおかしいと言われることになる。
 ヒトを最も重要な資源と考え、ヒトとヒトとの関係を、企業内外において 継続的かつ円滑に努力するのが人本主義である。

5.人本主義対資本主義
 今まで、世界は社会主義・共産主義対資本主義の戦いを戦後40年続けて きたが、これは資本主義の勝利であった。次は日本を盟主とした 人本主義対欧米を盟主とした資本主義の2つのイデオロギーの争いが 開始されたが、欧米諸国でも日本のような考え方で国々の製品や制度に しないと戦えないと思ってきている。かれら欧米は、人本主義と呼ばずに、 知識創造型経営と呼ぶ。これは、一橋大の野中先生が人本主義を知識創造に 非常によいと欧米の資本家やエリートを説得し、最初は自分達の権益が 犯されるとの理由から拒否反応を示していたが、日本との競争に負けるため、 欧米の政治家も人本主義・知識創造経営として取り入れ始めた。日本が簡単 に勝ってしまった。
 労働者が面白く働くのはいいことである。労働時間が長いのは公正である。 知識・系列取引はいい等々となり、日本的経営批判は欧米のエリートたちの 発言からなくなっている。

6.日本の国際戦略
 人本主義は、東アジアに早い時期から浸透している。これは、東アジアに 日本のODAが重点的に投資されたためで、日本の人本主義もこのODAと 企業進出に伴って浸透した。今後も、日本のPKO・ODAなどの国際貢献は、 人本主義国の増大のために行うことが重要である。今までイデオロギーなしの 国際貢献と言っていたが、これからは人本主義の拡大を図るためのODAなど の国際貢献であると言うように転換する必要がある。

7.日本の政治制度
 今回の日本の政治改革は世界を指導できる日本への衣替えする痛みである。 ここで2大保守政党が誕生すれば政権交代が可能になり、世界に対して日本の 政治の透明性が確保でき、日本政治に対する安心感が増すことになる。

 どちらにしても、日本の政治体制を2大政党化して政権交代のできる ことが重要であろう。しかし、ジタバタしないことかもしれない自自公体制 になり、またダメであった。

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