(読者からの依頼) どうも毎回面白く見させてもっらています。一つ質問と言うか 手助けをしていただきたくメールしました。このたび僕が大学の 入試で志願理由書を書くにあたり、これからなぜ国際的な考えが 必要となってくるのかということを聞きたいと思います。桜美林 大学の国際関係学部を受けるのでどうかアドバイスお願いします。 isseiさん −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (橘さんからの回答) 国際という言葉は非常に魅力的ですよね。僕も大学を選ぶときには 「国際関係」という言葉に強く引かれましたし、「経済大国である 日本はもっと世界に貢献しなくては。そのためにはもっと『国際化』 する必要がある」と考えていました。でも、学部時代、修士課程と 勉強を続けていくにつれて、どうも世間で言われている「国際化」 はちょっと違うんじゃないかと考えるようになりました。 国際関係学部を志望されるのであれば、恐らく学校で世界史の授業 をとっていることと思います。近代ヨーロッパの成立を考えてみま しょう。近代国家の成立にはさまざまな要素が複雑に関係している わけですが、その中でも資本主義経済の成立・拡大はとても重要だ と思います。それによって勢力を得たブルジョアジーが市民革命を 成功させ、自由民主主義国家を建設するにいたったわけですから。 で、その資本主義経済というのはその発生・拡大の経緯から考えて 「国際的経済制度」ですよね。ということは、「近代国家≒自由民 主主義国家」というのは初めから「国際化」した国家ではないでし ょうか。言い換えると、日本はこれから「国際化」しなければなら ないといいますが、「近代国家≒自由民主主義国家」である日本は 近代化を目指したその時点からもう「国際化」していると思うのです。 これから「国際化」しようというのは、国際関係の問題性を無視し た言葉だと思います。この言葉に従えば、例えば発展途上国の問題 はその国の政策が悪いからということで片付けられてしまいます。 つまり「一国枠」でしか「国際問題」を考えていないということな のです。途上国は、そのほとんどが植民地でした。確かに現在は 「政治的」には独立していますが、「経済的」には依然「従属」し たままです。なぜなら資本主義経済の仕組みは根本的に変わってな いからです。 ですから「国際化」という言葉によって、今までずっと隠蔽されて きた問題があるはずです。僕はその隠蔽されてきた問題を明らかに するためには、「国際化」という言葉そのものを「問い直す」こと によって国際関係を「捉え直す」ことが必要だと考えます。そして それには、文字通りの「国際的な考え」が必要だと思います。 +*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+ 橘 秀和 or Hidekazu Tachibana hide-t@21.fm http://www.portnet.ne.jp/~kazu-t/index.html (諸般の事情により大幅に完成が遅れています..) +*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+ ============================== (読者Fからお礼) 橘さんは、現役の研究者だけある。的確なアドバイス。issei さん、よかったですね。参考にしてください。 F