イスラム世界の研究(2)



 今回は、中央アジアの攻防をみたいと思います。
 この地域は、旧支配国ロシア、トルコ族の地域であるのでトルコ、
イスラム教ということでシーア派のイラン、スンニ派のパキスタン
とサウジなど諸勢力が、激突している地域なのです。

 この地域に、スラブ民族専門家の秋野豊さんが行かれ、不慮の死に
合い、この地域の研究が急がれていたはずです。しかし、今回の
キルギスでの日本人拉致事件を再度起こすことになり、地域研究を
十分にせずに派遣させることの危険性を日本政府や関係者の皆様は、
再度知って、懲りてほしいのです。諸民族の激突の場ですよ。ここは。

 安全はタダと思っていませんか?ダメですよ。そのような感覚では。
地域開発援助は身の安全が確保されている状態で可能なのですから。
身に危険がある地域の開発はしたらダメです。各勢力の分捕り合戦が起き、
より紛争が拡大することになるのです。

 タジキスタンは、内戦時、ロシア軍が介入したため、今でもロシア軍が
アフガンとの国境に展開している。このタジクの原理主義者に武器を援助
しているのがタリバンで、その裏にサウジが見えるのです。しかし、東の
シーア派住民はイランから援助を受けています。政府はロシアの力が強い
のです。このタジクの原理主義ゲリラがキルギスやウズベキに拡大してい
ます。
 だから、注意が必要なのです。サウジは対内原理主義ですから、イスラ
ム国家には厳しいのです。この現実を忘れないことが必要。そのサウジの
代理人がアフガンのタリバンなのです。このタリバンが中央アジアで活動
をすると混乱が起こるでしょう。タリバンはスンニ派の神学校の学生たち
ですからイスラム原理主義者=ワハープ派の中核です。

 トルクメンは、イランと接しているため、イランの影響を受けている。
キリル文字からペルシャ文字化の実験もしていると聞く。しかし、ウズベキ
人はスンニ派であるので、すぐにイラン化できるとは思えない。また、
ここはトルコ系民族国家であるのでトルコの影響もある。その裏に米国の陰
が見える。ここは、石油等の資源が豊富であるため、諸外国は狙っている。

 ウズベキ・キルギス・カザフは、イスラム化が進んでいますが、まだ政治
的な混乱になっていない。

 しかし、5ケ国の辺境地帯は入り組んでいるため、要注意が必要なのは
今回の日本人拉致事件で知ったと思う。何せ、サウジと米国とロシアの3者
が裏で糸を引いている構図が見えるのです。

 このため、米国はラディン氏引き渡しに絡めて、タリバンをサウジから
引き離す国連決議をしたのです。サウジも表面的には米国に従っているよ
うに見えますが、本当でしょうか??奇々怪々ですよ。この米国とサウジ
の駆け引き!!!サウジがタリバンへの支援を本当に止めるのかどうかで
す。楽しみですね。この結果。どちらにしても、ここでも米国戦略の綻び
が出ている。

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(読者からの反論)
読者Yより

初めまして。私自身にはコラム34は非常に参考になる内容で、この
ような説明をいただいたことに感謝していたのですが、読者クレーム
に対する回答を読み、いささかがっかり致しました。国際戦略コラム
と名打って大々的にMMを発行している割には、ずいぶん情緒的で
logical mindに欠けるのではないですか。

1. この読者からのクレームにたいし、どこに、「すいません」と
謝る必要があるのでしょうか。著者Fさんがいろいろな事実から所見
を導いているのに対し、クレームを書いた方はただ一言、「内容の面で
「カチン」と神経に障る」と書いてあるだけです。いったいどの部分が
どのように気に障ったのか、全くわからない文章で、こんなコメントに
対しては謝るより先に説明を求めるべきだと思います。その上で、明ら
かな事実誤認や偏見が認められれば、そこで初めてその内容をMM上で
明らかにし、読者に説明をするべきだと思います。

2. 日本人のなかにも真剣にイスラムを研究し、プラスの部分も
マイナスの部分も含めて理解しようとしている人がいるのは事実だと思
います。ほかならぬ、このクレームを付けられた方は日本人で、自ら
イスラム教を信仰し、イスラム教に対して一家言ある方のようです
(MMに掲載された内容ではどこまでの造詣をお持ちなのかまではわかり
ませんが)。著者Fさんが「我々日本人は」などとひとくくりにされるの
は概論では正しいかもしれませんが、少なくともこのコラムを読むような
レベルの人を対象とする回答としてはおかしいし、クレームを付けられた
方に対してもかえって失礼だと思います。

3. 著者Fさんも、イスラム研究をするまではイスラムに対し偏見を持
っていらっしゃったのでしょうが、イスラム研究をされて自ら得心される
まで偏見をといた上で本稿を書かれたのでしょう。ならば、「偏見がもと
で読者の神経に障ったことを反省します」などと安易な謝り方をしないで、
真剣に本稿をチェックし、本当に偏見が入った記述があったのか、また、
あったならばどの部分が偏見に基づいた記述であったのか改めてMMで明
らかにされることが真の意味でのintellectual honestyであると思います。

少々厳しいことを書きましたが、冒頭にも述べたように、貴稿によりいろ
いろな知識が得られることを非常に感謝しております。イスラム社会、
仏教社会、キリスト社会の力の均衡が歴史の一つのキーワードであるとい
うのが私の持論であり、イスラム教には多大な関心があります。
是非、がんばってイスラム研究とMM執筆を続けてください。それでは、
イスラム研究の続編を楽しみにしています。

Yoneyaさん
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(著者Fからの弁解)
 Yoneyaさんの言うとおりですが、読者からのクレームはイスラム世界の
研究(1)より前に来ていたものです。このため、読者kenkoさんがクレーム
を付けたのは、その前数回のコラム記事に対してなのです。

 私Fは迂闊にも、日本人のイスラム教徒の方がいるとは思っていなくて、
クレームが来た時ハッキリ言って、ビックリしました。このため、自己
チェックを自分の記事に対して行い、ラディン氏がらみの所に、イスラム
教徒の方から見ると、偏見的と見られるなと思いましたので、謝罪しまし
た。今後は、クレーム箇所を指摘してもらいますので、より明確になると
考えています。

 ラディン氏の見え方が、私Fはオウム教の凶悪犯人と同等に見ていまし
た。しかし、イスラム教徒の中では、それとは違い、聖者の要素を持って
見られているようです。カブールノートにもありますが。

 しかし、この凶悪犯との見え方は日本一般では、当然と思いましたので、
「我々日本人」と総称しました。この部分は、本当にイスラム研究している
方しか、わからないと思います。
        F

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