754−2. 「南亜の同志」に関連して



長谷です。
コラムNO.740−1「南亜の同志」に関連して発言します。

スイスが中立でいられるのは、特殊な理由が有ります。
決して武装してるからではない。

皆さんご存じかと思いますが、まず一つには秘密主義の金融界。
マネーロンダリングの温床、と言われており批判も大きいですが、
組織が秘密資金を隠しておくには便利です。
立場や利害関係の対立する複数の国や組織が使うので、お互いに
攻め込むことがない。

また、そういった特殊な背景を利用した諜報組織の情報交換の場
となっていること。戦争がある無しに関らずこういった場は必要
とされます。諜報組織のエージェントは対立する組織であっても
顔見知りで、互いに自分達の利害に関係ない情報は交換する場合
があると言われているほどです。

そういった事情の国ですから軍隊といっても申し訳程度のものに
過ぎません。隣接の国に比べれば、警察組織に毛がはえた程度で
しかありません。何故なれば、この国では軍の役割は国境侵犯を
監視する程度で十分だからです。

しかし、廻りを陸に囲まれ海を持たない国ゆえの問題もあります。
世界大戦のようにヨーロッパ中が戦争になってしまえば、周りの
国が総べて戦争になる訳ですから物資がスイスには入ってこなく
なります。なれば自給自足するしかありませんが、山がちの国
ゆえに、国民全てが食べられるほどではなりません。

そこで食えなくなった彼らは、傭兵としてヨーロッパの他の国に
雇われ、結局戦うことを選んだのです。結果、立場の違う国に
雇われたスイスの傭兵同士が戦ったという話もあるといいます。
自国の為に戦って居るのならともかく、何ともやりきれない話
ではないでしょうか。

このように、スイスの中立は決して奇麗事で成り立っているわけ
ではありません。中立だから戦わないで済むなんてことは誤解で
しかありません。

スイスはこのような歴史と事情がありますが、この事情は国に
よって変わってくるでしょう。

日本の自衛隊の場合、他国の一般民衆から見たら過剰な力を持つ
軍隊に見えているはずです。何といっても装備と陸海空の定員数、
予算の使い方などで見ると世界の五指に入ろうかという「軍隊」
です。「自衛隊」と称していても軍隊と思っていないのは日本
だけで、他国は「軍隊」として見ています。それが強力にみえま
すし、過去のいきさつもあります。そもそもそれ自体が不利です。

この状態で日本が更に強力な軍備をしても近隣諸国の反発が酷く
なるだけで利があるようには思えません。そもそも自国意識を
高めるがの目的をも合わせもつ軍備増強は間違いです。
過去、内政の失敗を外に逸らそうとして軍備増強した例は沢山
ありますが、それが良い結果に繋がった例もまたあまり有りませ
ん。

ただ少しの知識があればその内容がお寒いことをすぐに理解でき
ます。

まず有事の弾薬量はせいぜい3日分。如何に最新鋭の兵器を持と
うとも弾薬と燃料が無ければ鉄の屑です。
尚、燃料である化石燃料は、日本自国で殆ど生産が無いのは誰し
もが知っておりますね。タンカーを沈められたら一巻の終わりで
あるのは昔と変わっていません。

また防衛主力ともいえるジェット戦闘機や対潜哨戒機はアメリカ
のライセンス生産だが、アビオニクス(電子装備)のソフトウェア
をアメリカに握られているので、いざとなれば兵器として無効に
させられることもあり得ないとはいえない。

またあれだけの装備を持ちながら、弾道弾ミサイルを確実に捕捉、
迎撃できるシステムも存在していません。

要は、現在の自衛隊は張り子の虎でしかないのです。

「日本に攻め込んだらヤバイ」と思わせているのは、現状、アメ
リカ軍が各地に駐留しているからに過ぎません。その中身は決し
て「守る」部隊でないという実態もありますが、実は中身はどう
でも良いのです。もっともそれなりの「張り子」は要りますが。
なんとなればアメリカに有利な「口実」を与えてはいけないから
こそ攻めてこないのですから。
(そもそもそれで失敗したのが過去の日本でありましたが)

そういったことがあるから日本は確かに他国に舐められています。
しかし結果的に戦火に遭わないで済んでいられるのであれば、
それも一つの方法でしょう。

だが現在のこの方法は、経済が疲弊した今の日本にはあまりにも
高コストになっています。自衛隊の装備、運用だけでなく駐留
米軍の駐留費用の9割まで負担していますしね。

さて軍備を増強する以外の、低コストでの方法があるのかどうか
と言うと、現状は確実として言えるものは存在しないのではない
だろうか。あるのかもしれないが、実際にそれを行えている国は
いないようで、それを模索するのが今後の課題ではないだろうか。

さて武装中立についていえば、スイスはあくまで例外で、他の国
は既に武装中立を標榜していても事実は違っている。

例えばオーストリアや北欧諸国はEUに加盟することで中立とは
いえなくなった。EUとNATOとは違うものの、EUの実態は
地域経済同盟であるからして、加盟する国と対応を基本的に同調
せざるを得ない。イギリスやフランスのような発言権の強い国で
あれば自国の都合が悪いときだけそっぽを向くことはできる。
しかし、そもそもこれらの国はそのような力を持たなかったので、
武装中立していたのである。
紛争の理由は基本的に経済の利害対立から起こるのであるから、
最早中立とはいえないだろう。

尚、抑止力としてのアメリカ軍の存在価値は認めるものの、いざ
有事に日本を守ってくれるかどうかということになると疑問符が
つくというのが私の考えです。かの国は近隣にその国に対する
脅威が存在していても、自国の利益にそぐわなくなればすぐに
撤退しますので。

最近では、テロ事件以降、基地ゲートでは基地外に向け市民が
歩いているところに平気で機関銃を向けております。むろん直接
日本人に向けられたものではないが、日本駐留であっても日本を
守るのが先ではなく自国であるという意識の現われだろう。

しかも、湾岸戦争以来、戦闘で死者が出ることについてやたらと
敏感になっています。

もっとも、例え同盟があっても、アメリカでなくとも他国の為に
命を賭そう、などとは考えないのではないかと思うのですが。
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長谷 
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福井です
長谷様のご意見は、自衛隊の装備は大きいが実力が無いから、
もっと拡充すべきだというのか、反対に不要だから縮小すべきだ
というのか、結論が解からないのです。
後者だとは推測できるのですが?
政治行動の話なら判断は基本的に一つであり、引き伸ばす事、
結論を表明しないことはアンフェアーと取られます。
日本の政治家が世界に通用しない原因であり、結果だと思いますが。
さて、自衛隊の評価について一言。日本は隣にシナ、朝鮮、ロシ
アという問題国家群を抱え、竹島、尖閣諸島、北方四島から教科
書問題まで退屈するひまのない状況ですが、現状から軍備を縮小
したら縮小分だけ踏み込まれると思います。
今回海上保安庁法の改正で(保安庁は軍事力の一端です)武器使
用条件が緩和されたので、昨年3月の北朝鮮スパイ船事件のよう
に領海侵犯に対し、砲撃が可能になりました。あの時、巡視船は
相手に当てないように銃撃していましたが、さぞ悔しいし、難し
かったことと同情いたしました。今後は同様の場面では素直に撃
沈できます。
もし米軍が頼りにならないとしたら、同等の軍事力を日本が用意
する必要が出てきます。

そもそも"近隣諸国"と言われますが、シナ、朝鮮だけが五月蝿い
のだから"中朝2国”と表現しないと、台湾、タイ、インドネシア
、ヴェトナム、等のアジア諸国が誤解を受けるのです。
これらの諸国も特にシナには迷惑をかけられて困っているのです。
少しは自衛隊に関わる状況が好転し始めて喜んでいるのですが、
軍事は国の基本、今後も真摯に考えてゆきたいと思って居ります。
宜しくご指導の程お願いします。

福井直冶
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長谷です。
福井さま、ご指摘ありがとうございます
確かに私の意見には軍備拡充か縮小かの結論を書いておりません
でしたね。

これは現時点で何とかしようとしたら「拡充」しかないだろう、
と思います。

ただ、私の考えでは「拡充」ではなく内容をもっと整理して効率
的なものにすべきと思っています。これは具体的に述べると色々
ありますので省略しますが、例えば空中給油機の整備などです。
あまり現在の予算を拡張しないでできるでしょう。

本当はこれは「拡充」ではないのですが、諸外国は「拡充」と
取るでしょうから、取り敢えずそう呼んでおきます。

しかし、できれば武装拡充と取られる行為を取るのでは無く、他
の方法は無いかという考察をしてみたほうがいいと思っています。
決して結論をぼかしたつもりはありませんでしたが、誤解を招く
部分があったようです。

さて幾つか反論がございます。

尖閣諸島などは極端な話、欲しいところにくれてやっていいので
は?。果たして領有を固持するだけの価値があるのでしょうか?
海底資源があるからとかいいますが、開発には莫大な金が掛かる
筈で、経済的にモトが取れるのかどうか、はなはだ怪しいと考え
ています。

保安庁の巡視船ですが、法令が改正されたとて侵犯する船に物理
的に追いつける高速船が多数配備されなければ、武器使用条件が
緩和されたとしても絵にかいた餅です。

そもそも現状では、巡視船そのものが配備されている場所がかな
り「疎」なのです。高速な侵犯船がその「疎」な部分を突いてき
たらどうにもなりません。本気で防ごうと思えばもっと密に配置
せねばなりませんが、それは現時点では高速巡視船の大量建造と
なり、早晩に整備するのは無理でしょう。乗組員の養成という
問題も出てきます。

それから巡視船に装備されている砲ですが、砲というのは幾ら
改良されたといっても100%命中する訳ではありません。相手が
止まっていれば100%当たるでしょうが、海では相手は常に動い
ているからです。あれはあくまで威嚇のための装備でしかあり
ません。

結局、船を船で追い掛けるというのは非効率なのです。レーダー
や衛星の無い時代ならしょうがありませんが、今はもっと良い
テクノロジーがあります。偵察衛星を打ち上げてこれで監視、
追い返すのは航空機、という連係プレーが一番金がかからず効率
的です。従って海上保安庁よりも自衛隊の力が必要でしょう。

また私が「近隣諸国」と書いているのは中朝だけではなく他の国
をも意識した書き方です。日本の動向を注視しているのは中朝だけ
ではありません。中国が口を出したときには、他のアジアの国々
も口には出さないだけで苦々しく思っているのです。
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長谷 
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飯塚です。

>今後は同様の場面では素直に撃沈できます。

前後の内容から何かを参照していっておられるようですが、
「撃沈」させて何か解決するのでしょうか?
公海上で他国の艦船を沈めれば、非難されるのはこちらですし、
ただでさえ神経質になっている諸外国の神経を逆なでするとは思い
ませんか?

防衛だろうが何だろうが、撃沈となれば交戦ととらえられるでしょ
うから、そのまま戦争状態になってしまうことも最悪のケースとし
て考えられなくもありません。
戦争状態になっても北朝鮮が海を渡って攻め込むことはないにせよ
、アメリカの先の大事件のように公然とテロ行為を仕掛けてきたら
、日本には守る手だてがありません。アメリカも、航空機テロも
炭疽菌にはほとんど抵抗のしようがありませんでした。

私はあちこちでこういう防衛問題での議論はなにやら感覚や感情で
議論されているようで、心配です。我々は職業軍人ではないので
戦闘行為には関わることはないにせよ、相手が悪いからといって、
撃沈だの撃墜だの安易に発言するのは、少々危険かなと思います。

我々はアメリカ人ではないのですから・・・(本音です)。

防衛についての議論ですが、現在自衛隊はRMAという構想に基づき、
現在兵力を削減することが決まっています。最終的には2割程度削減
するともこと。ご存じでしたか?
もしご存じないようでしたら、(株)ジャパン・ミリタリー・レビュ
ー社の月刊「軍事研究」誌2001年4・5月号を参照されるといい
でしょう。また、このRMAについては現在議論が活発になされている
ので、大型書店で参考書籍を見つけることは容易です。
また、離島の防衛問題に関する文章は同じく月刊「軍事研究」誌の
2001年4・5・6号に掲載されています。

こういう雑誌や書籍で予備知識を備えて議論された方がより有意義な
議論ができると思いますので、是非。
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長谷です。
飯塚さんのおっしゃるように、侵犯船の撃沈は交戦を覚悟しなく
てはなりません。公海上であろうがなかろうが、その危険性は
孕んでいるでしょう、口実さえ有れば戦争を仕掛けるような国が
あることを考えると、自国の領海内であってもその危険性が無い
とはいえません。従ってそれ自体、軽々しく行ってよいものでは
なく、後先のことをよく考えたうえでの行動が必要でしょう。

しかし、様々なケースを想定したシミュレーションを行っておく
のは無益でしょうか? 守る手だてが無いのであれば、その方法
を考えなくてはなりません。どのような方法を取れば後々より
有益になるか、を論議するのはけして軽々しいことではないの
ではないかと思います。

日本ではこのようなことが市井で議論にならないのは、一には
教育で戦争が悲惨で絶対悪と教えた結果、現状の世界情勢につい
てマスコミの言うことを信じることしかできず、冷静な分析を
できない国民を作ってしまったことにあると思いますが、二には
自重論自体が議論を封じ込めていることもあるのでは?という
気がします。
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長谷 
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コスモス
 長谷さん、はじめまして。

御投稿への反論・誤りの指摘を。

> そこで食えなくなった彼らは、傭兵としてヨーロッパの他の国に
> 雇われ、結局戦うことを選んだのです。結果、立場の違う国に
> 雇われたスイスの傭兵同士が戦ったという話もあるといいます。
> 自国の為に戦って居るのならともかく、何ともやりきれない話
> ではないでしょうか。
> このように、スイスの中立は決して奇麗事で成り立っているわけ
> ではありません。中立だから戦わないで済むなんてことは誤解で
> しかありません。

 スイスの中立というのは、別に現在の日本の左翼のように、世界平
和のため、などというような理想の下にあるわけではありません。
中立の宣言というのは、世界を分ける陣営の中での、ひとつの役割に
過ぎないのです。

 平和のための中立国家であるならば、それに関連した世界の哲学者
・科学者を集めた平和のためのシンポジュウム(アメリカのサイラス
・イートン氏のパグウォッシュ会議みたいな)を恒例行事のように開
くべきですが、そうではないのが現状ですよね。ましてやマネーロン
ダリングというのもやめるべきでしょう。
粗探しになるのがイヤなので、指摘したくないのですが、

> 日本の自衛隊の場合、他国の一般民衆から見たら過剰な力を持つ
> 軍隊に見えているはずです。

 ここから下に下って、

> 要は、現在の自衛隊は張り子の虎でしかないのです。

 につながる文章は、お気づきと思いますが、変ですよね。


> 最近では、テロ事件以降、基地ゲートでは基地外に向け市民が
> 歩いているところに平気で機関銃を向けております。むろん直接
> 日本人に向けられたものではないが、日本駐留であっても日本を
> 守るのが先ではなく自国であるという意識の現われだろう。

 これは普通の対応なんです。奪われてはならない兵器を保有している
以上、軍隊は平時であっても、自国民だろうが駐留国国民であろうが
警戒していなくてはならないのです。

 卑近な例であげるならば、「愛車に鍵をつけたまま離れて、それを泥
棒に乗り逃げされ、その泥棒が愛車で人身事故を起こした際、所有者は
法律的にその事故の責任を負うことになっている」のです。
 なぜなら、自動車というのは基本的に凶器であり(人を殺せますから
)、その所有には盗まれ、悪用されないようにする義務があるからなの
です。
 兵士が非戦闘員に対しても警戒しなければならない理由を、この例で
多少なりとも御理解いただけると思います。

 御意見に関する反論・あるいは反感というものは、誰しも感じ、抱く
ものでしょう。今回は、誤りがある、という点を指摘させていただきま
した。
===============================
長谷です。

コスモスさん、こんにちは。

ご指摘のように、私の文章は読み返してみると分かりにくいですね。
今後は気をつけたいと思います。

スイスについては、ご指摘のとおりです。

>  粗探しになるのがイヤなので、指摘したくないのですが、
> 
> > 日本の自衛隊の場合、他国の一般民衆から見たら過剰な力を持つ
> > 軍隊に見えているはずです。
> 
>  ここから下に下って、
> 
> > 要は、現在の自衛隊は張り子の虎でしかないのです。
> 
>  につながる文章は、お気づきと思いますが、変ですよね。

折角ご指摘くださったのですが、敢えて反論させていただきます。
問題の視点が違います。

張り子の虎という認識は政府指導者や専門アナリスト側でのものです。
しかし一般民衆には事実を詳細に知らせず、単に数や使っている予算
の額を知らせておくだけで何となく脅威だ、と知らせておいている(
世論を操作する)ということです。
その方が、自国民を団結し易く、外交カードが増えるのではありま
せんか。

駐留基地ゲートから外に機関銃を向けるのは、ご指摘のとおり
普通の対応でしょう。ただ、武器の管理の責務があるのは解り
ますが、それが第一義ではないはずです。

今後とも事実の誤認等有りましたらご指摘ください。
---
長谷


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