752−1.特殊法人・金融機関と国益



2001-12-19 21世紀研究会   永田通
◯ 「日本再生」    『国家戦略』 その9 
    ★△ 特殊法人・金融機関と国益 △★

1、特殊法人(公社・公団・官主導の法人等)と金融機関(銀行・信金
・信組・農協・金融公庫等)は、1945年の敗戦後の日本復興に多大の
功績(国益に貢献)を残しました。
1-1、ところが、1989年のバブル頂点頃を境に流れが変わり、良い仕
組みシステムと信じられていた特殊法人・金融機関が、逆に日本の
財政・経済を悪化させ、放置すると日本国家を崩壊させる一大要因
となりつつあります。
1-2、江戸(徳川)時代、日本の中核権力組織であった全国各地の藩が
、技術革新を怠った事もあり、財政的にも窮乏し、海外勢の圧力を
契機に、明治維新となります。藩と戦後の金融機関は、どこか似て
おりませんか。―(幕府や大蔵=財務省の保護下(親方日の丸)、大小
が全国に分布、床の間を背にして座す、国益(国家全体)の事を考え
ない等々)。
1-3、明治から1945年にかけての日本の中核権力組織であった日本帝
国軍組織は、日清・日露の戦勝と自己の実力を過大評価し、世界を
見渡す国家戦略不足のまま大戦に突入しました。多大の物資と戦費
を浪費した結末は、戦後の極めて大変な窮乏であります。軍と特殊
法人はどこか似ておりませんか。―(採算・減価償却の意識なく実質
赤字でも自己増殖を止めない、仲間の利得が先で大局観に欠ける
等々)。

2、特殊法人も金融機関も共に、既得権益に守られて自己の改革へ
の確たる意志が弱く、周辺の情勢・圧力(官僚・族議員・関係業者
等々)が加わって旧態依然を続け、制度疲労を起こし、カネ食い虫(
連続的予想外の財政支出が不可欠)と成り下がり、反国益の存在と
なっております。
2-1、早春の野焼きがないと、優秀な新芽は出て来ません。明治維新
では、藩は全て廃止となりました。1945年の敗戦では、全ての軍組
織は完全に消滅しました。必要性の低下した制度・組織が存続して
いるとかえって害悪となります。
2-2、もし、「△△藩は維新に功績があったから特別に残そう。△△
師団は、対戦国と戦闘していないから治安の維持に転用しょう。」
と言うような主張を続けていたならば、利害や思惑が錯綜し、明治
維新も戦後復興も大幅に遅れ、或は挫折したかも知れません。
2-3、現在の構造改革でも、各個の事情を考慮し、選別(廃止・改良
存続・民営化・合併統合等)を続けていると、関係者の思惑・各論反
対の抵抗勢力が続出して、長期間を要する間に財政の方が枯渇し、
国家破綻へと繋がる事必至の状況であります。

3、国益(真の日本再生)のためには、特殊法人・金融機関ともに、
旧来の仕組みシステム全廃を念頭に置いて、次に述べる方法・手段
で、新規の仕組み制度を構築する事が、結局、迅速・コスト小・財
政支出の節約・関係者の心の整理が早い、と考えられます。関係各
位の冷静かつ格段の再考を願うところであります。
3-1、特殊法人については、今後一切の財政支出(財政投融資・貸付
・一般会計からの繰入・出資・赤字補填・公債への政府保証等)を廃
止します。当該特殊法人は、「自己の実力と責任で資金を調達し運
営せよ」という事となります。理由は、カネ食い虫の特殊法人に資
金を投入し続ける国家財政の余裕がないからであります。
3-2、1〜2年の推移考慮期間を経て、財政投融資・貸付等の返済を
法人に要請します。また1〜2年の推移考慮期間の後、返済に応じ
ない(返済できない)特殊法人の場合、当人が退職しない限り役職員
全員も返済義務を負担する旨の制度改革を実行します。人が激減し
た特殊法人は自然消滅します。
3-3、特殊法人の事業で、不要不急のものは消滅のままにします。
必要なものは一時国家が受け継ぎ、将来は良く研究の上、民営・新
組織等に移管します。
3-4、金融機関については、ペイオフを予定通り実施します。どんな
に経営が悪化しても政府の公的資金投入は一切行いません。倒れる
金融機関は救済しないという事となります。1000万円の限度は年々
引き下げ、3年後には、国家保証はゼロとします。理由は、金融機関
の有する真の不良債権は続々発生し、誰もが今後「要償却の不良債
権額」を把握できていないからであります。
また、金融機関全体の規模(機関数・店舗数・従業員数)が過大であ
り、現在の33〜38%で十分と推測されるからでもあります。経営悪
化金融機関に多額の公的資金投入しても、結局海外勢に安く買い叩
かれて経営権が移る例(旧長銀等)の二の舞となります。
3-5、預金者と融資先のため、また金融の機能(資金の保管・融資・
決済送金)を確保するため、預金バンク・融資バンク等々機能特化の
「銀行」を新設します。制度仕組みを全く新たにする事となります。
現金融機関の役職員のうち、能力と意欲ある人々は移行して活躍し
てもらいます。―詳しくは2001年6月号・直接金融3〜4を、ホーム
頁( www.onyx.dti.ne.jp/~ntt007 )でご覧願います。
3-6、預金バンク(第1預金バンク・第2預金バンク等、バンクとしたの
は従来の銀行と区別し混乱防止のため)を新設します。普通預金のみ
とし、利息は一切付けません。ペイオフは無く、預金は全額保護しま
す。重複投資を避け経費節減を図るため、窓口は設けず、出し入れは
、郵貯・コンビニ等のATM機を活用します。支店というより管理保守
センターを幾つか設置します。余資は国債で運用します。国債の日銀
引受は絶対避けるべきですが、預金バンクの国債購入は国民の投資(
余資運用)に近づきます。融資はしません。
3-7、融資バンクを新設します。当初は国家主導で作り、廃業・倒産
金融機関の肩代わり融資になるかもしれませんが、将来性のない企業
・事業への融資は、断固避けるべきであります。土木建設等で生産性
が低く旧来システムに依存してきた部門は、出直す(悪化した企業自
体は解体し、技術集団は生かす)事を断行しないと日本再生は実現し
ません。
3-8、特殊法人・金融機関の従業員、及びこれら機関の関係・取引先
企業の従業者等で、生活困難となった人々は、医食住一切無料の「施
設」(2001年11月号参照)に入所して頂き、時間をかけて再出発をして
もらいます。

4、今回のバブル崩壊に伴う不況は、循環型ではなく世界レベルでの
地殻変動的根底基盤の変動、つまり、明治維新・1945年敗戦と同列と
認識すべきであります。
4-1、目前の痛み(失業と倒産の増大、所得の激減)や国際的メンツ(対
外援助・国連拠出金水準の低下等)に拘泥し、構造改革を先送りして
いますと、財政赤字は一層増大し日本国の資金繰りがストップしかね
ません。日本の再生や国際的復活(生産性水準、国債格付け等)は遙か
遠くになり、少子化による伝統的日本人の減少を加味しますと、25〜
40年後の我が国は、全く不透明となります。
4-2、国益のため構造改革を断行せんとするリーダーの何人かが、相次
いで暗殺される非常事態を恐れずに進まないと、成功はありません。
旧国鉄の総裁が原因不明(暗殺?)の死を遂げられ、かえって国鉄改革
が進んだのであります。既得権益にしがみつく守旧派のカットに踏み
切る時期に、余裕はありません。


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