733−1.死してなお残すもの



こんにちは、白鳥です。
皆さま方にどうしてもお読み頂きたくて、以下の原稿をお送り致し
ます。この言論が今の日本ではまったくの空理空論であることは
十二分に心得ているつもりです。
(なお、この言論は「コスモ戦略コラム」でも配信したものです。
ダブって受信されている方々にはお詫びを申し上げます)
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死してなお残すもの

二十世紀の最大のリーダーは誰かというアンケートでインドのマハ
トマ・ガンジーの名が上げられた。ガンジーは完全非暴力で英国か
ら独立を勝ち取ったインドの英雄として名高い名声を世界中で得て
いる。ガンジーの非暴力思想、またその実際行動の影響はアメリカ
にも及びキング牧師の非暴力による黒人開放をも導いた。
ガンジーもキング牧師もイエス・キリストの生き方から大きな影響
を受けた人物である。

かつて日本の旧社会党は完全非武装中立論なる政策を掲げ、自民党
のやり方に真っ向から反対をしていた。その社会党の心構えとガン
ジーのそれと同じと捉えるのは明らかなる間違いであることは誰し
も分かっていると思う。旧社会党にカンジーのような実際的な心構
えがあった訳では毛頭ない。

もし日本が世界に向けて真に「平和国家」であるということをアピ
ールしたいのであれば、日本はやはり軍隊(現在の自衛隊)を総解
散すべきであろう。防衛的軍事というのは自国の言い分であって、
諸外国の中には攻撃を意図したものだという受け取り方をするとこ
ろも実際上あるだろう。

それに世界のほとんどの国は軍隊を持っているが、どこの国もそれ
が攻撃のための軍隊であるとは言わない。そして「軍事力」を背景
にしない外交というものは、軍事力が最大の脅威だと捉える多くの
国々の中にあっては無効力に等しい。そういう「現実」というもの
が分からないまま、旧社会党は空虚な論を展開して自己満足に浸っ
ていたのは事実だ。

しかしながら、二十年前と現在では世界の情勢は明らかに違ってき
た。かつてはアメリカとソ連邦の対立という構図であったものが、
現在はそのソ連が解体してしまい、東欧の諸国もソ連の影響下を脱
してしまった。また中国が力をつけ出し、一時仲の悪かったソ連(
現在ロシア)との蜜月時代の到来もささやかれる情勢にもなりつつ
ある。また、ロシアとアメリカの仲も取りざたされるくらいの情勢
にもなってきている。

現在、中東のいくつかの国々が話題になっているが、実はその影で
大国の思惑が大きな渦を巻いているに違いない。二十一世紀から
二十二世紀に向けて世界の主導権を握るための凄まじいまでの駆け
引きが大国同士の間では行なわれていることだろう。
だから、軍事的には世界の中で決して大国ではない国同士の表立っ
た争いにだけ目を奪われていたんでは、国際情勢を見誤ってしまう
だろう。

また大国の裏にいて、その大国を操ろうとする国際的な財閥グルー
プの影響力も見過ごすことはできない。このようなことは表立って
はどこのマスコミにも公表はされにくい事情というものがある。と
いうのは、どこの国のマスコミもまたこの巨大財閥グループの影響
下にあるからである。従っていかにマスコミと言えども大スポンサ
ーにとって不利となるような記事は自社にとっても不利となるので
書けないのである。

話が横道に逸れないようにしよう。
国際情勢が一頃とは大きく違って来ているのは事実だし、そんな中
で、日本としての国際戦略もまた変更を余儀なくされて当然だ。

私は、自国の「得」を考える現実的な戦略も確かに重要に違いない
が、しかし、それだけに目を奪われてはいけないと思うのだ。そこ
でカンジーの話になる。

カンジーの完全非暴力運動では多くの被害者が出た。だが、インド
は最終的には非暴力で勝利を勝ち取ることができた。それはなぜか
。それは世界の人々の「こころ」に訴えかけたからではなかろうか
。カンジーの運動は世界中に大きく報じられた。
無抵抗なインドの貧しい民を機関銃で撃ち殺す映像を見て、世界の
国民が黙っているわけがない。ガンジーは文字通りイエスの教えを
実践しようとしたのだ。また、それを熱い心と熱弁をもってインド
の国民全体に訴えかけた。そのカンジーの言葉に多くのインドの民
が胸を打たれ、ガンジーに従った。キング牧師にしても同じだ。

もし、今日本国民全体が、世界の恒久平和を心から願い、世界平和
の先鋒役としての自国の使命を真に自覚するなら、完全非武装中立
を世界に向けて宣言するのは非常に意味深いことであるだろう。
そこにおいては世界の反応を計算するのではなく、日本としての
「天命」を自覚し、例え日本がどこかの国から襲われ、日本という
国が滅び去ろうとも絶対に軍事力では抵抗はしないという覚悟を持
って、世界平和を全国民が一丸となって訴え続けるのである。

例えわが国がどこかの国から襲われて国が敗れようと、日本人が一
人残らず世界からいなくなるわけではない。生き延びた者たちの中
から必ずや日本という国の精神を受け継ぎ、世界に訴えつづけてい
く者が現われるだろう。また世界の国々も軍事的抵抗を完全に捨て
去った国民が惨殺されるのをじっと手をこまねいて見ているような
ことは決してないだろう。

しかし、このような選択をするには非常なる「勇気」がいるのも確
かだ。またガンジーのような心で国民全体に訴えかけることのでき
る指導者が現われないと出来ないことだ。
しかし、悲しいかな現在の日本には、例えそのように訴えかけても
その心を理解するだけの意識レベルを持った国民はおらず、またそ
のような「勇気」をもって国民を導けるリーダーもいない。従って
今私が述べたような意見はまったくの空理空論として片付けられて
しまうのがオチだということは充分に分かってる。

PSIU 代表 白鳥 宙(富山県在住)
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ガンジーを手本とする限界
白鳥さんのご意見は、「自分の利益ばかり追求する国際戦略は墓穴
を掘る」ということだと思います。大賛成です。世界人類、地球上
のありとあらゆる生物無生物のことを考えた上で戦略を立てる、志
を立てることが大切です。

しかしながら、白鳥さんに限らず、多くの方がガンジーを引き合い
に出しておられますが、彼は本当に手本になるのかなと、いつも疑
問に思います。僕も実際にガンジーに会って話をしたわけではない
ので、本(とくに長崎暢子さんや石田保昭さん、荒松雄さんの本)
から読みかじった知識であり、あるいは五年前に10日間だけ旅行し
て感じたインドの印象でしかないのですが。

安易に手本を第三者に求めるのは危険ではないでしょうか。ガンジ
ーがそれほどすばらしかったのなら、現在のインドの混迷(少なく
とも貧富の差と人口爆発の点では、世界でももっともひどい国の
ひとつではないでしょうか)と、ガンジーの思想をどう結び付けて
説明できるのでしょうか。

みんな、ガンジーの神話に騙されていませんか。結論を急がないま
でも、もうすこし検討してみてもいいのではないかと思います。

得丸久文
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白鳥です。
私自身ガンジーについては詳しく知っているわけではありません。
その政策論や人となりについても充分な認識を持っているわけでは
ありません。ただ、ある著名なマスコミか何かが行なったアンケー
ト結果で彼が二十世紀の最大のリーダーだと思っているという事実
が出ただけです。
私はただ、彼の持っていたであろう「信念」の強さのことを言いた
かっただけです。「信念」がなければ何事もなしえることは出来な
いというのは万人が認めるところだと思います。

もとより、政治に功と罪はつきものです。リーダーの持っていた志
がそのまま万人に伝わったわけでもありません。

またこういうことも言えるかも知れません。如何にすばらしい動機
から発した行動でも、それが多くの人にとっての目先の幸福に繋が
らない場合もあるでしょう。
しかし、いつまでも人々の心に残るのは、その人の心根の部分だと
私は信じています。これはイエスや釈迦やあなたのお好きな孔子に
関しても同じです。

カンジーが語り草にされるのは、彼が間違いなくインドを独立に導
いた指導者だからです。独立することが良かったか悪かったかを私
は問題にしているのではありません。またガンジーの思想の正当性
や優秀性を問題にしているのでもありません。そのあたりの私の言
いたいことは、得丸さんなら充分にお分かり頂いているものと思い
ます。

また日本の政策に関して言えば、私は、「もし日本が世界に向けて
真に「平和国家」であるということをアピールしたいのであれば、
」という前提でお話をしたのであって、私自身としては一切の軍事
力を放棄した完全平和国家が良いのかどこにも負けないくらいの軍
事力を持って、世界平和のために貢献する道を選び取るのがよいの
かという判断は今の私には出来ません。
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初めて投稿します。
我が国では教科書などでガンジーが高く評価されていますが、欧米
ではインド独立の功績としては、むしろチャンドラ・ボーズの方が
評価はずっと上です。1947年のインド独立当時も、アトリー英首相
は、ガンジーよりはチャンドラ・ボースの自由インド軍と日本軍の
果たした役割の方が遥かに大きかったことを認めています。
現在のインドでも一般庶民レベルでは、チャンドラ・ボーズは、イ
ンド独立の父として神様のように崇拝されています。かつて、イン
ド出身の米国人と話していて、チャンドラ・ボーズの話題になった
時、急に盛り上がってチャンドラ・ボーズの人柄や日本との友好を
延々と語り出したことに驚いたことがあります。

福井さんも仰っているように、非暴力は机上の理想ではあっても、
力がないと正義すら実現出来ないのが厳然たる現実です。
「ならず者」に対して非暴力を訴えてもつけあがるばかりです。
警察という力があって始めて社会秩序が保たれます。「イジメ」に
対し非暴力でいるといつまでもイジメが続きますが、勇気を持って
一度痛い目にあわせればイジメは終わります。
湾岸戦争では、クエートを侵攻したイラクに対し非暴力では何も解
決しませんでした。多国籍軍という力があってこそ自由は回復し、
戦後クエートは(日本を除く)各国に感謝したのでした。

なお、チャンドラ・ボーズについては以下が参考になります。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h9/jog002.htm

純


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