662−1.産業コストと雇用の先行き



各位       2001-9-17 21世紀研究会   永田通
 8月17日送信の日本再生、『国家戦略その5―首相議員制と参院選
挙』に続きまして、『国家戦略その6―産業コストと雇用の先行き』
を送信申し上げます。
                 ntt007@mx12.freecom.ne.jp

◯ 「日本再生」     『国家戦略』 その6   
 ★△ 産業コストと雇用の先行き △★

1、明治以降の我が国は、「モノ作り」を基盤にして発展、1950年頃
からは、信頼度の高い工業製品の輸出で、経済大国への道を歩いて
参りました。
ところが昨今、国内での生産はコスト高で採算割れとなり、海外で
作って持ち込んだ(輸入した)方が有利と、大きく変わって来ました。
1-1、ネギ・椎茸・い草等の農産物、タオル・ネクタイ等の衣料品、
テレビ・電子部品等の工業製品、色々な分野で次々に国際競争力を
失っております。
1-2、「モノ作り」の基礎をなす産業コストが、東アジアの諸地域の
2倍以上、しかも不況になっても高いところに張り付いたままになっ
ている事が、大きな要因と考えられます。
1-3、産業コスト高は、人件費だけでなく、エネルギー・交通等の
公共的・インフラ(産業経済の基盤)的要素が大きくかかわり、製造
拠点の海外移転を促進しております。

2、工業はもちろん農漁業においても、産業コストが高過ぎますと、
海外生産・輸入の増加をもたらし、結果として全体の雇用機会は縮
減して行きます。
2-1、大部分のサービス産業は、技術習得型でなく、熟練労働者をあ
まり必要としません。従ってパート型雇用形態と成り易く、一家の
大黒柱が働けばよい、との仕組みは崩れて行きます。
2-2、介護・福祉・コンビニ等のサービス産業の多くは、国際水準か
ら見て生産性が低く、税収増や国富への貢献度合いが、かなり少な
いと推測されます。
2-3、独身者・未婚者や夫婦共稼ぎの増加は、出産数の減少、親によ
る子育て(教育)の質的低下等に繋がり、良質な青少年の減少、やが
て国家衰亡の道を歩む事となります。

3、『日本再生』をはかり、我が国を活盛国(将来に希望の持てる活
き活きとした盛んな国)にするためには、生産性を高め、税収増や
国富への貢献度合いの大きい産業を育成しないと成功しません。
3-1、失業保険の給付期間延長、ワークシェアリング(賃金額は下が
っても、2人でする仕事を3人でし、パイを分け合い等しく貧乏にな
る)等は、目先の痛みを緩和するだけで、税収増や国富への貢献度
は殆どなく、財政悪化を促進し、緊迫感の喪失と依頼心の増加で国
際競争力を弱める要因となります。
3-2、資源の乏しい日本は、産業コストを引下げ、国際競争力のある
「モノ作り」を基盤として、高度技術立国を目指すのが最善であり
ます。
3-3、これらを怠ると、付加価値の高い産業(製造・技術開発等)は海
外に移動し、国内には輸出入に適しない生産性の低い業種だけが取
残され、雇用はあっても低賃金で喘ぐ事となります。法人税・所得
税が低迷し、極めて高率(20〜40%か)の消費税が、庶民の負担とな
る可能性が高いと予想されます。

4、産業コストを国際水準以下に保持するには、既存の概念を大幅に
変更し、仕組み・制度を抜本的に改変する必要があります。以下に
具体策を列挙します。
4-1、高速道路は西欧並に無料とします。当然道路関連公団は不要と
なります。軽油引取税と貨物車重量税を廃止します。国内線航空機
の着陸料を貨物部分は無料とします(旅客部分は有料のまま残し、
列車利用を促進)。船舶の港湾費用を無料又は大幅低減します。こ
れらで、物流のコストを国際競争力あるものに近づけます。
4-2、電力・ガス・上下水道を半額で供給できるよう関連の仕組みを
改革すべきであります。電力設備は、最大供給時を基準に建設する
必要があるので、夏の全国高校野球大会は、電力需要の少ない5月連
休か10月体育の日を含む週に開催時期をずらす、等々の様々な工夫
が必要となります。
極めて少数の住民の反対で、原子力発電所が事実上建設不能となる
のは、特に産業コスト面から見直す必要があり、安い電力を将来ど
う確保すべきかを、国家全体の見地で再構築する事が肝要でありま
す。
4-3、官の組織やサービスの内、税収増や国富への貢献度合いの高い
もの、国家維持のため不可欠のものを除き、民営化でコスト重視運
営に移行します。そうでない組織は、半分以下をメドに大幅縮減し
ます。官の縮減模範は、国会縮減から始めるべきで、先ず国会関連
予算を3分の1程度に小さくし、議員定数も大幅に減らす必要があり
ます。もちろん特殊法人の殆ど全部は、廃止又は民営は当然であり
ます。改革を渋る法人に対しては、一切の資金投入を即刻停止する
と共に、資金回収を強力に進めるべきであります。
4-4、中央と地方の格差を是正し、住コストの高い大都市特に首都圏
から地方への定住を促進する事が肝要であります。このため、通信
を市内と市外の二本立てとし、その差を2〜3倍以内と大幅に縮小し
ます。航空運賃を幹線は全国一律(東京大阪も東京沖縄も同一、東
京大阪は値上げ東京沖縄は値下げ)とします。中央に高いコストを
負担して出張する回数を大幅削減するため、光ファイバーを含む通
信網の整備が不可欠であります。
4-5、現在の金融制度では、日銀-銀行等間をいくら金融緩和しても、
銀行等-企業間には資金が流れないので、直接金融システムに移行
する必要があります。資金パイプが詰まっていては、産業コスト引
下げは全く困難であります。―詳細は国家戦略その3『直接金融戦略
』01年6月分。
4-6、官の借金660兆円を何時までも放置する事は、国際社会が許しま
せん。日本国債の格付け低下、金利上昇(価格の低下)、引受者の減
少、必要額の国公債発行が不可能となります。景気に悪影響を及ぼ
したとしても、歳出規模は、国家の実力(通常ベースの歳入税収)に
収斂されるべきであります。
4-7、金食い虫で国家財政の命取りとも成りかねない公的年金・医療
保険は、全廃を目指し準備する必要があります。預かった資金を無
税で返還するために、運用(融資)先から資金を引き揚げます。運用
先の一部は解体されましょう。
4-8、社会保障・福祉は、補助金・支援金等を全廃し、本当の生活弱
者を支える施設に一本化します。ここでは日本国籍を有する人は、
誰でも無条件で入り、医食住の無料提供を受ける事ができます。
心身や技能が回復した人は巣立って行けるようにします。
4-9、幹線道路は、物流の根幹と位置付けて自動車優先とし(人は近
くの別の道を通る)、その信号は、幹線相互の平面交差を除き廃止
します。その他道路からの進入は、赤の点滅(一時停車)によります
。速度規制は撤廃、安全は車間距離の確保に変えます。これで燃料
コストと時間の縮減をはかり、産業コストを大きく抑制します。
4-10、生鮮食料品等で自動車配送を要するものを除き、長距離輸送
は船舶の活用を大幅に増やし、国家全体の輸送コストを下げる事を
真剣に考慮する必要があります。このため港湾設備の効率化と船員
保険制度(保険料高過ぎ)の見直しが不可欠となります。
4-11、コンビニは便利なものですが、国家的見地で頻繁な配送コス
トを勘案しますと、店舗の少ない地域を除き、店舗数や配送回数に
再考の余地があります。

4-12、日本で人件費高騰・高止まりの主因は、勤労者が右肩上がり
の経済発展を夢見て諸外国の水準・状況を考慮せず、特に大都会で
ローンにより高額の住居を取得してしまった事にあると考えられま
す。転職が進まない原因でもあります。(食費等の生活費は、それ程
でもないのに、住宅ローンの返済が大きいため、低めの給与ではや
って行けない。住居を売却しても借金だけが残り住む場所を失う。
共稼ぎに走ると、子育て・教育がおろそかになる。)
4-13、前項の問題を解決するには、一つの屋敷の広さを1000〜3000u
と想定し、この中に何らかの関連者(血縁・婚姻縁・学校縁・仕事
縁・趣味縁・思想縁等)が、10戸程度までの住宅を建てて小集団を形
成して、個・核家族を極力なくし、互いに協力し合って生活する、
女性が安心して子供を出産し、これを精神的にも支える環境のもと
で、みんなで子育てに当る『華僑客家』のような考え方が必要であ
ります。―日本国の将来像その5『少子化と帰化人受入れ』01年2月
分参照。
かっこいい大都会の生活に見切りをつけ、家計のコスト高(特に住宅
ローン)を解消しないと、国際競争力は復活せず、銀行・住宅金融公
庫等の住宅ローン不良債権化は、湧き水のように止まりません。
一時の混乱を我慢して、日本の経済水準(ピークの半分程度以下)に
合った家計にする外ありません。

4-14、高度技術立国には、学校教育が欠かせません。文化芸術系の
割合を大幅に縮小し、若い時にはまず理工系を学んでもらい、科学
技術的発想を身に付けさせるため、理工系定員を80%前後とします。
4-15、良好な環境の維持は大切ですが、地球温暖化防止(例、京都議
定書)は世界全体に関連しており、日本だけが多額のコストを負担し
ても、「労多くして効殆ど無し」でありまして、それより産業コス
トの縮減・財政再建・構造改革が先であります。
4-16、日本の財政事情が改善された暁には良いとしても、今は、政
府開発援助やテロ対策で、他国のために出費を負担できる状況では
ありません。日本国自身の破綻(財政・金融)を回避する諸策の断行
を先行すべきであります。
(a19ksl6.txt)


コラム目次に戻る
トップページに戻る