661−1.得丸コラム



東京は秋の気配の平和な朝だ。  得丸
−1− 駒沢公園の隣の高層マンション計画
東京都世田谷区にある都立駒沢公園の南に隣接している都立大学跡
地4haが、今年1月に長谷工に転売された。今、そこに19階だて
の高層マンションが計画されている。これができると、ジョギング
や散歩をしている人たちにとっては、圧迫感もあり、また日影にも
なるので、やめてもらいたいのだが、どうすればやめてもらえるか
わからない。
 
自爆飛行機が飛び込んでくる可能性を考えると、もう高層アパート
に住みたいなんて人は減るのではないかと思うのだが。それとも、
みんな、自分だけはそのような目に会わないだろうと信じているの
だろうか。
 
私はたまたま東京の自宅が、長谷工の高層マンションの敷地の近く
にあるので、長谷工の住民説明会にも参加しましたが、彼らは土地
を金に変えることしか頭にない。建設しようとしているマンション
は、銭湯の下足箱のような旧式の設計で、付近の環境ともそぐわな
いのだけれども、まったくおかまいなし。4haの中に道一本つくる
わけではなく、駐車場も世帯数分しか作らないので、800世帯の
マンションにやってくる友人や宅配便の車は、付近に迷惑駐車する
しかない。(もうすでに迷惑駐車取締りのための巡回と110番通
報を検討している主婦もいるらしい。長谷工の無計画さが、近隣住
民の恨みをかい、それが後々まで尾を引くのだ)
 
公園を訪れる人たちはこの計画を全く知らされていない。彼らが、
この高層マンションを恨みに思ったら、一体どういうことがおきる
のだろう。
 
それにしても、21世紀とは思えないいいかげんな設計しか提示さ
れないところが悲しい。もちろん、そんな会社だからバブルで失敗
して、経営が危なくなっているのだろうが。日本の住宅産業は、「
不足の経済」でなりたってきたのだということがわかる。
(「不足の経済」:東ドイツのトラバントという車は、何年も先ま
で予約で一杯だったが、それはほかにいいものが買えない状況にあ
ったからだ。日本の建築会社は、確信犯的にいい住宅を供給しない
カルテルを結ぶことによって、陳腐で安普請の住宅を販売しつづけ
ることができるのだ)
 
企業は金儲け以外のことを考えなくていいのか、社会的責任はない
のか、長谷工の社長は建設省OBで、取引先銀行からも多数の幹部が
送り込まれているそうだが、おかげでいっそう算盤ずくの仕事ぶり
になっているのだという。こんなことでは、ちっとも再建に向かわ
ないのではないか。
 
戦後の日本は、戦争に負けたけど、経済で成功したというが、エコ
ノミックアニマルとはよくいったものだ。人間性を失って、金、金
、金。金がすべての社会になっている。
ゼネコンの社員や経営者に比べたら、神戸のサカキバラ少年のほう
が、まだまともな感受性をしているのかもしれない。
 
−2− 人間は今の自分しかわからない
ゼネコン社員が、社会のことをまったく顧みず、会社の利益のみを
追求している姿は、実にさびしいが、人間なんて所詮そんなもので
しかないのかもしれない。
 
人間の悲しさは、今自分が置かれている状況しか目に入らないこと
だ。未来を予測することもできなければ(だから温暖化対策もちっ
とも進まない)、過去を思い出すこともできない(歴史による刷り
込みが重大な意味をもつのもこのためだ)。
 
そして、それぞれの人間は、自分の都合しか考えない利己的な存在
である。(人間は、自分がすでに知っていることしか新たに知るこ
とができない、という「知のパラドクス」も作用する)
 
今の自分の立場でしか考えない、今の自分のことしかわからない。
これは現代日本だけの現象ではない。古今東西そうだった。
歴史上実に多くの過ちが繰り返されてきた。
 
古代中国の優秀で誠実な政治家の多くは、讒言(ざんげん、言われ
なき誹謗中傷)によって、刑死するか、失脚している。世の中、い
い仕事をする人間よりも、そいつの足を引っ張ろうとしている人間
のほうが断然多いのだ。
 
自分の立場でしかものを考えられないから、すぐにひがんだり、疑
ったりする。自分の立場を離れられないから、今しか考えられない
。君主も遠くにいる忠臣のことよりも、近くにいる大うそつきのお
べっか使いの言葉をついつい信じて、判断を誤るのだ。
 
孔子や孟子の学問、道元の禅、そういったものが目指しているのは
、今の自分から自由になることだ。このちっぽけで、必ずいつかど
こかで一回死ぬことが運命づけられている命にとらわれるな。宇宙
の法則を身に付けて、それにあわせて生きていきなさい。そうすれ
ば正しい判断ができる。そうすれば正しく生きていける。そのため
にこそ、学問をするのであり、修行をするのだ。
 
学問も修行も、自我というちっぽけで、間違いやすい存在から自由
になるための訓練である。
 
−3ー 世界のベイルート化
このように考えてくると、今回の航空機乗っ取りによるインティフ
ァーダにも、また別の解釈が可能となる。自分の命を顧みなければ
、どんなことだってできるのだ。彼らの行ったことの、インパクト
は確かに絶大なものがあった。航空機インティファーダの有効性が
証明され、弱者はついに強者と対等にわたりあえる武器を手にした
というべきかもしれない。
 
もちろん、大量殺戮がいいか悪いかの判断は、また別に必要だ。
しかし、それは、テロリスト側にも、アメリカ側にも、普遍的に適
用される法に基づいて判断されるべきである。
 
アメリカ人は、世界貿易センタービルへのテロが、罪もない大量の
人を殺したからよくないというのであれば、自分たちの報復が罪も
ない人を殺す可能性についても、考えなければならないのではない
か。
 
一時的な怒りや悲しみに身を任せて、誤った行動に出ることは慎む
べきである。
実行犯は皆死んでしまっている、刑法において教唆犯や共謀犯は罪
に問われる。だが、それ以外の犯罪にまったく加担していない人間
には、断じて罪はない。
 
もし、自分たちの報復においては、罪もない人が殺されることが許
されると考えているのであれば、再びアメリカを狙った航空機イン
ティファーダが起きたとしても、それを悪いことであるとは、もは
やいえなくなる。「アメリカは無実の人を大量に殺した、その報復
だ」とする論理を否定できなくなる。
 
人類は過去もそうやって血で血を洗う争いを行ってきた。ニューヨ
ークで起きたことに対して、あまり感傷的になってはいけないのか
もしれない。
 
かつてベイルートは、中東のパリと言われるくらい美しい都会だっ
た。それがあっという間に瓦礫の町になってしまった。
今回のテロは、ベイルート化は世界のどこででも起こりえるという
ことを示してくれた。自分の命を惜しまない人間が、飛行機で高層
ビルに突っ込めばそれで世界はベイルート化しうる。
航空機インティファーダが、日常的な光景にならないことを祈るば
かりである。
得丸久文(2001.09.16)
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アメリカ国籍のテロリスト?           得丸
アメリカはテロリストをかくまった国家に対しても報復を行うのだ
という。だけど、アメリカにいったい何人のアラブ人、あるいはパ
レスチナ人がいると思う?
けっこういるはずだよ。難民としてアメリカ国籍をもらった人や、
アメリカ国内で生まれた子供はみんなアメリカ人なんだから。
もしアメリカ国籍のテロリストがいたら、アメリカは自国にもミサ
イルや報復攻撃を行うつもりなのだろうか。
国家や国籍という概念が、どんどん希薄化しているときに、アメリ
カのやろうとしている報復は単なる気休めと身勝手といったこども
じみたものにならざるをえないのではないか。
もう国家と国家の戦争の時代は終ったのだと思う。自爆したテロリ
ストへの報復は、個人責任の原則を無視したお門違いなものになら
ざるをえない。
得丸久文 (2001.09.15)
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今回のテロ行為はそれが組織的になされているとの疑いがもたれて
いる為アメリカはその組織を特定し根絶してこの様なテロの再発を
防ごうとしているのです。もしその組織を庇護する国家があれば其
の国家は同罪と認め、その国家の主権を侵してでもそのテロ組織の
根絶を実行すると表明しているのです。もしその組織が米国内にあ
る場合は国連やNATO諸国を煩わすまでもないでしょう。それから
米国にアラブ人、パレスチナ人が何人在住していようが、又彼らが
米国国籍であるかどうかはこの際無関係です。問題はそのテロ組織
の構成員及びその活動を庇護、幇助する人(国家)であり、米国籍、
フランス籍、日本籍、....等の人もいるやも知れません。

本所
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本所さん、
>今回のテロ行為はそれが組織的になされているとの疑いがもたれて
>いる為アメリカはその組織を特定し根絶してこの様なテロの再発を
>防ごうとしているのです。

トラックで突っ込むインティファーダの場合には、国家が背後にい
るとは思わないのに、乗っ取り航空機で突っ込むインティファーダ
の場合には、国家が裏で糸を引いていると思うということでしょう
か。

もちろん今回のテロには、ずいぶんコストがかかっていると思いま
すが、一回お手本を示してくれれば、あとはまったくボランタリー
な人間が10人くらいの人間がツアーを組めば、できないことでは
ないと思います。

素手でもできますよ、これくらい。ナイフは機内食用のものを使っ
ても、一応凶器にはなります。

こんなに簡単に、こんなに威力があることができるということがわ
かれば、ちょっとした流行になるかもしれません。飛行機にのるの
がいやになるけど。

報復しても再発を防ぐことは難しいのではないでしょうか。むしろ
、相手の言い分をよく聞いて、彼らをなだめることのほうが安上が
りで有効だと思います。
得丸久文


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