629−2.国際人はどうあるべきか??



めぐみさんから得丸さんへのメール

いつも,考えながら,メールを拝見させて頂いております。
私は,浜松に住む高校二年です。先日は,終戦記念日でした。
私は,家族と戦争のことについて,話しました。
私は,日本が,自衛戦争であったこと等,学校の授業とは違った
このコラムで教わったことや「おじいちゃん,戦争・日本のことを
教えて」の本の内容を中心とした話題を取り上げました。
しかし,父と母は,私が,極度な国粋主義者になったと悲しむだけ
でした。

私には,親とは違ったものの見方,価値観が形成されたようです。
そして,そのような国粋主義者はこれからの国際社会では生きてい
くことはできないだろうと諭されました。
しかし,私は,自分のことを知らない人間が、他人を理解すること
ができないのと同様に,日本の国のことをしらない人間が,国際社
会で渡り歩けるとは思いません。
どうお考えになりますか?
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めぐみさん、

お便りありがとうございました。お父さんやお母さんと違った歴史
観や価値観をもってしまうことは、それ自体つらいし不幸ですね。
それに、お父さんやお母さんのような価値観(ちなみに僕は昭和34年
生まれの41才です、お父さんと対して違わないのではないでしょう
か)のほうが、戦後教育のおかげで多数派ですし、テレビのニュース
もそのような報道ばかりですから、めぐみさんは肩身が狭いかもし
れませんね。

僕は昭和34年生まれですから、生まれた時から戦後民主主義教育を受
けて育ちました。とても純情で素直な子供(自称)でしたので、たと
えば「朝鮮民主主義人民共和国」では「人民のために民主主義が行
われているに違いない」と言葉をそのまま真に受けていました。
もちろん、日の丸や君が代は戦争につながるのでよくない、自衛隊
なんてないほうがいい(浜松はブルーインパルスの基地ですね)、
戦前の日本は軍人がいばってひどい社会だった、、、、と、おそら
くお父さんやお母さんと同じ歴史観や価値観をもっていました。

当たり前です、そういう教育しかなされてなかったんですから。
また、今はなき「朝日ジャーナル」という週刊誌や、月刊「世界」
もときどき読んでいましたので、はっきりと左翼系の思想をもって
いました。

でも、僕の場合は、南アフリカのアパルトヘイトに反対する市民運
動に参加していましたので、黒人国家をつくるための民族主義には
賛成でした。(もしゆとりがあれば、「わやわや、南アフリカ」、
「アパルトヘイトの終焉」、「民主化の声に消された南アフリカの
植民地解放」も読んでください。)

今から20年以上も前のことですが、当時の僕は、どうして海外の
民族主義はいいのに、日本国内では民族主義はよくないのだろうか
、という疑問を持っていました。海外の民族主義を支援するのは
左翼で、国内で民族主義を叫ぶと右翼と言われるのが不思議でした。

でも、ずっと左翼系の発想でした。26才の時に一年間フランスに
語学留学しましたが、そのときも左翼的で、SOS Racism (人種差別
反対の市民運動)のフランス式デモに参加したり、左翼系の雑誌を
読んでいました。日本国憲法も随分何回も何回も丁寧に読みました
よ。どうすれば日本で民主主義が根付くのだろうと真剣に悩みまし
た。右翼も左翼も、誰もそんなことで悩んでいませんよね。でも僕
が洗脳から逃れることができたのは、誰も悩まないことを真剣に悩
んだからだと思っています。

だんだんと左翼系の人の言っていることのおかしさに気づくように
なったのは、30才になるころです。結局、現実世界を知らないから
、学校で教えられたり、雑誌に書いてある上っ面のきれいごとを
信じていたのですね。社会を知れば知るほど、右翼もおかしいけど
、左翼もおかしい、大事なことはもっとほかのところにあるのでは
ないかと思うようになりました。

おそらくお父さんやお母さんが、日本について考えていたり信じて
いること、たとえば戦前はひどかったとか、戦前には自由がなかっ
たとか、靖国神社に参拝するのは軍国主義だとか、そういったこと
は、すべて頭の中だけのことではないでしょうか。実際に戦前の
社会を生きたわけではないし、靖国神社にお参りしたり、遺物を見
たりしていないのではないでしょうか。

何も現実のことを知らないから、テレビや学校で一方的に習うこと
を、鵜のみにしているのだと思います。

だから、親子の関係をよくするには、ひとつひとつ確かめることを
お勧めします。たとえば、いっしょに靖国神社にいってお参りした
り、展示を見たりする。あなたが読んだ本や記事を見せて、どこが
おかしいと思うかを聞いて、お互いにそれが正しいのか間違ってい
るのかを確認してみる。

戦前の検閲は伏せ字だったけど、戦後の検閲は事前検閲だから検閲
があったことすらわからなくなったということを御両親はどう考え
るのでしょう。

本当のものには、感動があります。それを味わうためには、たくさ
ん本を読んだり、人に会って話を聞いてみる必要があります。いろ
いろな場所を訪れて、自分の心でなっとくするまで、その場の雰囲
気を感じてみてください。

御両親は洗脳されているようなものです。そこから自由になるには
、既成概念にとらわれることなく、大きく目を見開いて、あるがま
まの世界を見ることが大切です。いっぱい本を読むことが大切です
。そうしないと、一旦洗脳された脳は、もとには戻りません。

お勧めの本は国際戦略コラムにも書いていますが、高校2年生の
あなたには、「悪童日記」をまずお勧めします。この本にある、
「真実のルール」というものを常に気にするようにしてみてくださ
い。テレビや新聞のニュースを読む時に、それらが真実のルールに
基づいて書かれているのかどうかを吟味してみてください。

それと、僕は30代の6年間を海外(イギリス4年、フランス2年)で過ご
しましたが、国際社会を生きていくためには、自分と自分の国の歴
史に誇りを持たなければならないと思います。日本にいろいろと悪
いところもあったでしょうが、ではいい処はどこだったのか、日本
文化のいい部分を自分は身につけているか、そういった問いかけを
常にしながら自分を成長させてください。

戦後民主主義の一番だめなところは、あれも駄目、これも駄目と
否定ばかりしていて、けっきょく空っぽの人間ばかり育てたところ
です。批判や評論ばかりして何の役にもたたない日本人の多いこと
多いこと。日本に悪いところがあったかもしれないが、いいところ
もあった。それを自分で学んで、いい日本人として国際社会と関係
を結んでください。

またいつでもお便りください。この回答でわからないところがあれ
ば質問ください。追加の質問も受け付けます。

ひとつだけ、お願いがあります。あなたからいただいたお便り、
もしお差し支えなければ国際戦略コラムで使わせてください。匿名
にしても構いません。御許可いただければ、僕の回答といっしょに
、Tさんに送ります。

得丸久文
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ありがとうございます
すぐに,お返事をいただけて,本当にうれしいです。
ありがとうございます。

 父(47歳)と弟(中3)が,私の言ったことに 興味を持ち,
「おじいちゃん,戦争のことを教えて」 を読んでみたそうです。
弟が,「僕たちは,細いけれど決してなくしてはいけない道を歩き
なおさないといけないんだね。」と言っていましたが,本当にその
とおりだと思いました 。
私はこれから,様々なことを学び,広い視野と中心軸となる考えを
作っていかなくてはいけません。

そして,私は,父の言葉よりも,その言葉が一番輝いているように
思いました。そして,弟が,親よりも私の言った言葉に,興味をし
めしてくれたことに,うれしく感じました。(っていうのは,私が
まだ反抗期の名残があるからからも知れません)

 国際戦略コラムに,のせるコトですが,いつもは,見る側なので
,何だか恥かしいです。粗相な点があれば,直してから転送してい
ただけたら,うれしく思います。

 悪童日記,明日早速本屋に行きたいと思います。
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めぐみさん、

お返事ありがとう。弟さんの言葉、僕もとてもうれしく思いました
。「おー、よく理解できたね。その通りだよ。けっして簡単なこと
ではないけれど、ひとりひとりがよく勉強して手習いごととかもし
て、心を培って、自分を人の役に立つ、いい人間に育てていかなく
てはならないのだよ」と言ってあげたい。

心を作る、心を養う、そういったことを最初のステップからやり直
さなければならないのです、本当に。

でも、ご心配なく。いいお手本はたくさんあります。(戦前に、
江戸時代に、)それを見習えばいいだけのこと。

僕もまだ発展途上です。いっしょにやりましょう。
あなたの文章は少しも稚拙ではありません。大丈夫、そのまま使え
ますよ。

得丸久文


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