596−1.世界の形勢と日本



                 Mond
 米ソ二大覇権国の冷戦が終了し、超大国がアメリカだけになった
と感じていた十年だったが、二十一世紀になって世界の形勢が動い
てきている。
 地政学の教科書に書いてあるとおりに、ソ連が大陸国の雄とし、
アメリカが海洋勢力の雄として対峙していた二十世紀後半の形勢が
、アメリカの傲慢で利己主義の責任感欠如した行動によって、一人
勝ちの甘い汁を吸っている間に、大陸勢力はどうやら露中連携し、
それにドイツがEUの雄として独露連携に動く気配が濃厚となって
きた。
 アメリカの同盟国は、大陸の東に位置する日本、西に位置する英
国および海洋諸国の南北アメリカとオーストラリアなどのアングロ
サクソン諸国となっている。インドが中国の脅威から海洋勢力連携
に動くかも知れないが、ロシアとの関係も深い。リムランドの争奪
戦に再びなるのだろうか。それともアメリカは京都議定書反対、
ABM制限条約破棄、CTBT条約破棄など、明らかに超大国とし
ての責任を放棄した挙に出たまま、世界の信望を台無しにし、単な
る暴力とお手軽恋愛映画の軽蔑されたグロテスクな自閉国家に落ち
ぶれるのだろうか。非アングロサクソン国家である日本は堕落した
アメリカの道連れをする気だろうか。あるいは、日本が海洋勢力の
雄として世界の平和のためにアメリカの尻を叩いて勢力をまとめ、
パワーバランスを安定化できるのだろうか。
 誰かが世界の平和に責任を持ち、自己犠牲の精神で世界を相手に
困難な交渉事をまとめ上げなければならないが、現在の日本人は
決定的にパワーバランス的センスが欠如している。外交力の裏付け
るパワーが軍事力にしかないことも故意に看過している。また、
世界の形勢が、日本の戦国時代とそっくりなことに気付いていない
。例示が卑近なら、古代中国の春秋戦国時代といってピンと来るだ
ろうか。
 現代は近代西欧に起こった戦国時代の世界拡散化の中にある。
一文明内の覇権争いが世界に舞台を移して、しかも人種間抗争や
文明間抗争(また宗教間抗争)の色彩を深め、アメリカが一国覇権
国の甘い汁を吸って、ぼやぼやしている間に世界のリージョナル・
パワーが力を蓄えてしまった。その間、日本は相変わらずの脳天気
の太平楽であった。センスが悪すぎる。明らかに現代という世界状
況は世界政府が樹立される一歩手前の非常に危険な戦国末期といえ
る状況にある。一国覇権国のアメリカこそ自己犠牲的責任感で世界
政府を樹立し、世界を統一して平和を盤石なものにする義務を負う
べきであるが、もう世界は再び自分勝手な方向に走り始めた。
 歴史を学んで、もし戦国の世であればどうすればよいか、それは
多少学問があれば解る。しかし、現在が戦国の世であるかどうかは
学問では解らない。センスの問題である。石原完爾までは正確にわ
かっていた。それ以後は解っていても口に出せない時代が長すぎた
。いや、当時でも解っていないことがあった。それがバランス・オ
ブ・パワーの概念であろう。日本は日露戦争に勝って植民地化の恐
怖は去った。しかし、否応もなくパワーバランスの世界に投げ込ま
れたことに気付かなかった。貧乏すぎて日々の生活に精一杯だった
。当然なすべき日英同盟の信義のために、要請された第1次世界大戦
に陸軍を派遣しなかった。これにより、莫大な消耗戦争の実態を看
過した。そして英国から見捨てられ、アメリカから挑まれて没落し
た。日々に平和をあがなう努力をせず、アジアの覇権国としての甘
い汁を吸い続けている間に世界の形勢が変わったことに気付かなか
った。大東亜戦争を信長の兵隊と変わらぬ「槍と刀と単発銃」でア
メリカの機械化部隊と戦った。戦後の湾岸戦争でもナンセンスを繰
り返した。日本は軍を派遣せず、金で済まして軽蔑された。
 信義に反しているのがピンとこない。これほどの大国となったな
ら、世界平和に犠牲的精神で責任を持たねばならないのに気付かな
い。パワーバランスに敏感であらねばならないことに気付かない。
最もナンセンスなことは外交は軍事力の裏付けがないことには無力
であるという基礎知識が欠如していることだ。外交力がなければ
地球環境も守れないし、拉致された日本国民を救出も出来ない。
韓中連合の内政干渉も防げない。軍事力の裏付けのない外交を展開
することが日本を危殆に晒すことに気付かない。軍事力こそが世界
平和の基礎であるというセンスがまるで欠如したままなのだ。
 A・トインビー著「歴史の研究」によれば世界政府樹立前の統一
戦争では殲滅(ノックアウト)戦になるという。確かに古代中国で
は秦は降伏した敵軍五十万人を生き埋めにして処理した。第2次世界
大戦では、アメリカは原爆を広島と長崎に投下して、一般市民を殲
滅処理した。ナチスドイツはユダヤ人を五百万人以上処理した。
そうして数千万人の犠牲者が出た。直近の日本では、「人権、人権
」と偽善者どもが騒ぐ裏ではおそろしく簡単に人殺しが横行してい
る。そんな脳天気な太平楽の中で一般常識がない有識者どもが日本
をミスリードし続けている。虐殺され、民族滅亡の憂き目を見てか
ら気付くのだろう。
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