526.日本経済活性化のために



日本経済活性化のために、再度私論を展開します。  
               2001.5.4   tanaka 
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●景気快復をめぐる意見分析
現在の不況を克服するための方策として、三つの主張があると思わ
れます。

1.政府、日銀がいう「産業構造改革、創造的破壊」論
 これには具対策がなく、空理空論で終ってきた。
これは、どこからかの請売り的発言で、国民と産業界は「自助努力
」でこの難局を乗りきるほかはない。「もっと奮励努力して、自ら
生きる道を模索せよ!」と言っているようです。
ある意味での責任回避論である。

2.国民、産業界は、政治が悪いから不況が解決しない。
 「政府は早く適切な政策を提示せよ。」と受動的に迫っている。

3.勝ち組である産業空洞化を積極的に進めたメーカー、商社の主
張は「イギリス、アメリカも同じ道を通ってきた。グローバル・ス
タンダードの痛みを乗り越えるしかない。」と、うそぶいている。

三つの主張は、ある意味で正しく、ある意味で間違っている。主張
している人達は、自己の正当性を主張するのみで、まったくかみ合
わない論理がすれ違っている。かみ合わないまま進めば、三つの論
理は破滅を迎える。

確実に経済は落ち込んできており、余裕のある政治家、公務員、勝
ち組企業家以外は一触即発で倒産、失業に追い込まれる状況である。
したがって、一気に構造改革を進めようとすれば、多くの犠牲が発
生する。

前回の私論で明らかにしたように、現在の不況は産業空洞化による
不況であり、国内に富を生み出す製造業がほとんどなくなってしま
ったことによるものである。日本経済の基本構造であった「加工貿
易」のインフラが壊れてしまって、お金が循環しないで出ていくだ
けの構造になってしまったのです。だから、円の供給量がいくら増
えても、日本国内でインフレにならないのです。

●新しい日本を創造するために!
経済の活性化とは、国内において富の生産とお金の循環がうまくい
くことである。
海外に流出してしまった産業を、日本国内に戻すことはもう出来ま
せん。従来の産業構造と同じ土俵で外国企業と勝負しても勝てない
のです。

新たなステージで産業構造を創造するよりほかないのです。
そのために絶対的に必要となるのが哲学です。
それは、新しい価値基準の創造です。いままでは「目先の損得が行
動の基準」であったものが、「将来の損得、世界的視野での損得が
行動の基準」となる世界観の普及です。

それらは、繰り返し繰り返し宣伝して、誰もが暗記できるほどにし
なければなりません。その柱となるものが環境産業あり、その中心
は廃棄物の循環型社会を目指す産業であると思います。従来の製造
業との混合型の産業など、派生的に出てくる産業が数限りなくある
思われます。
 
ほかには健康ビジネス、老人介護ビジネスなどではないでしょうか。
また、日本国内のお金の循環を円滑にするするために産業界、消費
者(商工会議所、経団連、農協、生協、消費者団体、労組など)が
政府だけに依存するのでなく、自らの生活を守る運動を起すべきで
ある。プラザ合意後、アメリカの労働者が日本車を叩き壊した反日
行動などのようなことも、ある意味で必要なのかもしれません。
 
その核となるべき組織、例えば水滸伝の梁山泊とか、シャドウ・キ
ャビネットのような組織が必要になるなのではないでしょうか。
その組織は、士気を高め、組織の目的を達成するために、地域流通
券(円の裏付がある通貨)の発行なども必要でしょう。また、日本地
域のお金の循環に貢献した、企業名の公表と褒賞制度なども必要で
しょう。

長く続く無為無策のために、富を生み出してきた企業が疲弊し、
財政が硬直化してしまったことだけに目が向き、それを焦って回復
させようとすれば、不良債権の整理と財政再建のみの対策しか出て
きません。
草木の萌芽には、水と肥料と太陽の光が必要なのと同じように、新
しい産業の萌芽にも環境を整えてやる必要があります。産業の萌芽
には、お金と希望のもてる政策が必要なのです。
 
草木が生み出す種子は一粒万倍なのです。一粒の発芽に厳しい条件
を課せば、発芽しないかもしれないのです。発芽しなければ万倍は
ありえないのです。
政府と民間が日常的に協議し、景気が回復軌道に入るまで相呼応し
て有効な対策を取ることが、何よりも重要である。
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(Fのコメント)
田中さんの言う通りだと思う。大賛成です。新しい日本ならではの
産業を興すしかない。

燃料電池の新水素含有液体燃料の開発や、自然エネルギーによる発
電、リサイクルするべき物のリサイクル、プラスチックなどのリサ
イクル水素燃料化などや、家庭の生ゴミの微生物による有機肥料化
、微生物によるマイオマスエネルギー化??など。特に微生物とい
うのは、要するに酵母菌の類ですから、日本はこの手の研究に慣れ
ている。環境省がサポートするべきでしょうね。

老人大国に2025年になることが決定しているので、今からその
準備をする必要があるのでしょうが、この分野の開発は期待できる
と思いますね。ただ、介護保険はどうなるか???

今後期待できる日本からの技術としては、NTTドコモの新方式の
WCDMAは、世界最初ですし、IPV6技術も本格的に研究して
いるのは、日本ですね。ブロードバンドの通信も「ゆうせん」が初
めて、NTT東西も追従するようですから、これも世界的には早い。
このため、CATV会社が危ないくらいですね。
ナノ技術も日本が優位ですね。精密機械産業が日本に多いためです
が、この分野もいけると思う。
これに比べて、生命科学分野はゲノム解析で負けているし、H2改
のロケットは失敗続きで中国より遅れている。大型重機械分野はダ
メですね。

そして、日本の工芸の技術が、新技術に応用できると思う。例えば
、象嵌、漆、和紙、竹細工、友禅などの技術は、今後の新技術分野
に応用可能ですね。

地域通貨は現在、浸透してきていますね。地方に行くと、地方のス
ーパーの方が、ダイエー・イトーヨーカ堂などの中央ブランドのス
ーパーより賑わっている。その秘密が地域商店連合のポイントカー
ド(1種の地域通貨)で、航空会社のマイレージカードの地方版と
思えばいいのですが、その地域のガソリンスタンドから葬儀屋まで
グループ化している。

この方法で、イトーヨーカ堂もとうとう減益になっているのです。
イトーヨーカ堂の鈴木社長の地域指向の品揃えができないためとい
う指摘は、現場を見ていないと思う。そのようなことではなく、
地域通貨(ポイント・カード)にやられているのです。イトーヨー
カ堂カードを止めて、地域カードに入るかですね。この対策で、
IY銀行というイトーヨーカ堂通貨を作ることにしたのではないで
すか? 下克上のような様相を地方では繰り広げられているのです。

そして、このような対策を1つ1つ打つことによって、地方の時代
が来る可能性もあるのです。全ては創造的な仕組みをどう作るかで
しょう。政府や地方自治体の補助金を狙った再開発は失敗している
が、このようなコンサルタントや民間の工夫により、地方は生き返
る可能性があるのです。

もう少し、皆で政府に頼るのではなく、工夫しましょう。大きな政
府は、非効率なだけです。レーガノミックス+セーフガードの日本
体制を実現するべきだと考えます。米国の制度をそのまま持ってく
るのは反対ですが、今の日本の体制では、このままどん底まで行っ
てしまうと思います。
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先般発表された公示地価は、多くの地点で下落を示し、91年以降
10年連続の下落となった。下落が続いているのは、つぎの原因に
よる。  日経BP

第1は、地価上昇期待の崩壊だ。地価が将来上昇すると期待されれ
ば、土地保有需要が増加し、現在の地価が引き上げられる。日本で
地価が高かった基本的な原因は、ここにある。しかし、90年代の
地価下落の経験から、地価上昇期待は崩壊した。これにより、その
たの条件が一定でも、地価は下落する。

第2の原因は、日本の輸入構造の変化である。かつては原材料の輸
入が中心であったが、最近では農産物や工業製品の輸入が増えてい
る。これは、土地を輸入するのと同じ経済効果をもたらすから、生
産用の土地に対する需要が減少する。

第3の原因は、少子化によって、住宅地に対する需要が将来減少す
ることだ。

バブル崩壊が原因なら、地価はどこかで底を打ち、上昇に転じる。
したがって、問題を先送りし、地価が反転するまで待てばよい。多
くの人はそのように考えている。大量の土地を保有する企業の経営
も、政府の経済政策も、基本的にはこのような期待に基づいている。
しかし、ここで述べたような構造的原因によって地価が下落してい
るのであれば、今後も下落が続く。先送りは、問題を悪化させるだ
けだ。

日本の経済構造は、地価上昇が永遠に続くことを前提に組み立てら
れている。現在の日本経済が抱える基本的病理は、その前提が崩れ
たにもかかわらず、構造が変わらないことだ。これは、経済の最も
基幹的な部分に関する問題であるから、対症療法的対策では解決で
きない。

その代表が、不良債権処理だ。不良債権発生の基本的原因は、日本
の金融機関が土地を担保として融資を行ってきたことにある。した
がって、地価が下がり続ければ、不良債権は今後も増大する。先ご
ろ決定された緊急経済対策では、不良債権の「最終処理」がうたわ
れている。しかし、すでに生じた不良債権を処理したところで、
最終的処理とはなりえないのである。土地本位制の変更が必要。


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