「文化・文明ー意味と構造」中田光雄著 創文社を読んで、面白か ったので、その解説と、発展系を考えたいと思います。 Fより 文明は、4つの関係で構成されている。1つが自然との関係:耕作 など、2つ目は自己との関係:教養など、3つ目は神との関係:祭 禮など、4つ目は他人との関係:共同体などである。4つの関係= 人間の関係を様式化しているのが文明である。 様式化というのは、この4つの関係にどのような価値を見るけるか を問う宗教、芸術などや、関係をどのように認識するかの哲学や科 学や、4つの関係を円滑に機能させる政治、経済などがある。文明 はこのような目的を持った活動の他に、目的を持たない遊戯・スポ ーツの活動がある。このように価値、認識、機能の目的活動と遊戯 ・スポーツの脱目的活動で、文明の活動は構成されている。 それでは、人間はどういう視点で内容を把握するのかというと、 個人的なレベル、共同体としてのレベル、人類全体としてのレベル で把握するが、この把握の仕方は時代が違うと違い、地域が違うと 違うという内容把握の差がある。ここは重要。このため、物事の評 価はその認識したレベルと時代・地域を明確化する必要がある。 そして、人間活動の目的は、「理想」を達成することですよね。 その「理想」とは何かというと、価値の体系によって、理想は確定 するはずです。「美」「善」「聖」「正義」など。 この価値は、どのように創造し、維持し、革新するのでしょうか? 価値発見は、個人の営みに近いのです。近代美術史では「美」です し、哲学者・科学者は「真実」ですし、社会悪と戦う実践家は「正 義」ですし、人間悪に対処する実践家は「善」、世俗的野心家は「 金」「権力」でしょうし、宗教家は「聖」ですね。 これらの個人としては自明の理に近い、直感的な感じが価値発見だ と思いますね。このため、価値観の創造は個人の人間活動によるこ とが多いのです。 しかし、現実社会は、現実の今までの価値があり、個人が発見した 「価値」を認めないため、苦が待ち受けているのです。その苦から 現実にするための「手段」を見つけて実践することになるのです。 この手段の連鎖により、現実の状況が変化して、理想が現実になる のです。価値の創造から価値の達成になり、価値の擁立となるため には手段の連鎖が必要なのです。 次に関係の認識を検討すると、4つのレベルがあることが分かる。 1つに事象一般の認識:言語など、2つに人間事象の認識:文学・ 歴史など、3つに諸事象の法則の認識:自然科学・学問など、最後 に全事象の原理の認識:哲学となるのでしょうか。この順番に人類 や文明は発展してきている。 このため、言語構成の違いは認識の違いになるし、聴覚の違いは、 諸事象の認識に違いを起こすはずです。日本だけがなぜ、欧米や中 国と違うように感じるのかは、日本語の成り立ちと日本人だけが違 う聴覚構造に影響されているようなのです。この件は角田さんの本 に詳しい。 全事象の原理の「原理」とは何か??人生の意味、人間の営みの意 味や、世界の本質、人間の認識能力などを考えることでしょう。 最後に機能活動であるが、全体的運営としての政治・法律、個体間 の関係を運営する社会・コミュニケーション、個体の運営としての 経済・技術などで、特に個体の運営では自己の欲求、充足の営みの 認識が必要であろう。心理学ですね。 個別因子として文明の要素を見たが、これらは多元的、協律的に相 互が関係しているのです。 この観点から、歴史教科書の問題と見ると、個別の事象の認定は、 歴史の事実認識として可能であるが、その集合体の原理を認識する 歴史の史観は哲学であり、文明の他要素との関連性から合意は難し いのです。問題の次元が違うからでしょうね。 このように文明構造を知っていると、問題の切り分けがしやすいこ とになると思うがどうでしょうか。