522−2.文明の構造



「文化・文明ー意味と構造」中田光雄著 創文社を読んで、面白か
ったので、その解説と、発展系を考えたいと思います。 Fより

文明は、4つの関係で構成されている。1つが自然との関係:耕作
など、2つ目は自己との関係:教養など、3つ目は神との関係:祭
禮など、4つ目は他人との関係:共同体などである。4つの関係=
人間の関係を様式化しているのが文明である。

様式化というのは、この4つの関係にどのような価値を見るけるか
を問う宗教、芸術などや、関係をどのように認識するかの哲学や科
学や、4つの関係を円滑に機能させる政治、経済などがある。文明
はこのような目的を持った活動の他に、目的を持たない遊戯・スポ
ーツの活動がある。このように価値、認識、機能の目的活動と遊戯
・スポーツの脱目的活動で、文明の活動は構成されている。

それでは、人間はどういう視点で内容を把握するのかというと、
個人的なレベル、共同体としてのレベル、人類全体としてのレベル
で把握するが、この把握の仕方は時代が違うと違い、地域が違うと
違うという内容把握の差がある。ここは重要。このため、物事の評
価はその認識したレベルと時代・地域を明確化する必要がある。

そして、人間活動の目的は、「理想」を達成することですよね。
その「理想」とは何かというと、価値の体系によって、理想は確定
するはずです。「美」「善」「聖」「正義」など。

この価値は、どのように創造し、維持し、革新するのでしょうか?
価値発見は、個人の営みに近いのです。近代美術史では「美」です
し、哲学者・科学者は「真実」ですし、社会悪と戦う実践家は「正
義」ですし、人間悪に対処する実践家は「善」、世俗的野心家は「
金」「権力」でしょうし、宗教家は「聖」ですね。

これらの個人としては自明の理に近い、直感的な感じが価値発見だ
と思いますね。このため、価値観の創造は個人の人間活動によるこ
とが多いのです。
しかし、現実社会は、現実の今までの価値があり、個人が発見した
「価値」を認めないため、苦が待ち受けているのです。その苦から
現実にするための「手段」を見つけて実践することになるのです。
この手段の連鎖により、現実の状況が変化して、理想が現実になる
のです。価値の創造から価値の達成になり、価値の擁立となるため
には手段の連鎖が必要なのです。

次に関係の認識を検討すると、4つのレベルがあることが分かる。
1つに事象一般の認識:言語など、2つに人間事象の認識:文学・
歴史など、3つに諸事象の法則の認識:自然科学・学問など、最後
に全事象の原理の認識:哲学となるのでしょうか。この順番に人類
や文明は発展してきている。

このため、言語構成の違いは認識の違いになるし、聴覚の違いは、
諸事象の認識に違いを起こすはずです。日本だけがなぜ、欧米や中
国と違うように感じるのかは、日本語の成り立ちと日本人だけが違
う聴覚構造に影響されているようなのです。この件は角田さんの本
に詳しい。
全事象の原理の「原理」とは何か??人生の意味、人間の営みの意
味や、世界の本質、人間の認識能力などを考えることでしょう。

最後に機能活動であるが、全体的運営としての政治・法律、個体間
の関係を運営する社会・コミュニケーション、個体の運営としての
経済・技術などで、特に個体の運営では自己の欲求、充足の営みの
認識が必要であろう。心理学ですね。

個別因子として文明の要素を見たが、これらは多元的、協律的に相
互が関係しているのです。
この観点から、歴史教科書の問題と見ると、個別の事象の認定は、
歴史の事実認識として可能であるが、その集合体の原理を認識する
歴史の史観は哲学であり、文明の他要素との関連性から合意は難し
いのです。問題の次元が違うからでしょうね。

このように文明構造を知っていると、問題の切り分けがしやすいこ
とになると思うがどうでしょうか。


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