514.日本経済回復のために



日本経済回復のための適切な処方箋がない。希望がない。
この現実から脱却するための、私なりの考えを披露したい。

0情勢分析
今日の不況の原因は、1985年のプラザ合意である。これによっ
て、円の価値が一挙に2倍以上に膨れ上がってしまった。バブル経
済の始まりである。国民全員が、宝くじに当たったように浮かれ、
自分の足元が見えなくなってしまった。株価も地価も物価も、すべ
て高騰した。
その結果
 1.バブルを、急速に沈静化させる政策が施行された。
 2.国、地方自冶体の借金を一気に返済してしまおうとした。
 3.産業の空洞化現象がおきた。
その結果発生した現在の不況対策として 
 1.2.ついては、その誤りが指摘され、矯正の方向にあると思われ
   る。
 3.の海外に流出した産業が、安い商品を国内に持ちこんで、国内
  の産業を打撃を与えている。
 この安い商品に対抗するために、国と日銀は、「産業構造の自律
的変革論、創造的破壊論」という抽象的な表現で、10分に1の人
件費でできた輸入商品と国産商品を戦わせようとしている。このこ
とは、デフレ経済で、息も絶え絶えに疲弊している産業に、過酷な
要求であるように思える。

 過酷すぎる要求であることを認めた経済産業省は、日本の産業を
脅かしている輸入商品に「セーフティ・ガード」と称して高い関税
かけるようである。これについて、田中直毅氏は国際的に非難を浴
びるもとであると言っている。アメリカのモンロー主義の再来であ
る。

 日本経済 アリ地獄からはいあがれない、最悪の構図がここにあ
る。日銀が用意した政策を、ビジョンなきまま政府がすべて実行し
たとしても、最悪の事態を回避し得ないのではないかと思う。国内
の生産活動の活性化を図って、国民の収入が増えなければ、国民の
消費行動を喚起できないでしょう。

0環境問題
 現在、日本政府は環境問題に真剣に取組んでいるようなポーズを
とっている。何故でしょうか?
 EUからプレッシャーがかかったからです。EUでは環境問題に対す
る取組みが進んでおり、ことにドイツでは、日本に輸出した車BMWな
どの廃車をドイツに持ちかえり、リサイクルしているほど徹底して
いるのです。EUから、環境対策に真剣に取組んでいない日本の輸出
品は、その分だけ安く生産されており、その日本製品とEUで生産さ
れた商品がEU市場で価格競争した場合、EUの商品が負けてしまうと
いわれた。EUから日本はアンフェアであると、日本製品のボイコッ
トの動きがでたからなのです。

 しかし、日本政府の取組みは消極的であり、何故環境問題に取組
まなければならないかを国民しっかりと説明をしていないまま、
環境関係法案を成立させた。そのため善良な国民の中には、環境問
題を真剣に考えている人もいるが、多くの国民は、何故急激に環境
問題がクローズアップされたかを知らない。

 ゴミの処理費は「タダ」という観念が染込んでいる国民に、地球
環境保全のためという大儀名分でゴミ処分は有料といっても、理解
してもらえない。国民は「本音と建前」でゴミ問題をとらえている。

 そこに、環境問題のブラックマーケットが存在し、デフレ経済の
なか、価格競争という名のもとでそれが表に顔をだしている。
 フィリッピンに医療廃棄物を輸出したり、千葉県に産業廃棄物の
不法投棄がされたことなどは氷山の一角で、全国で巧妙に不法投棄
継続されている。これらは、ある意味で公然の秘密となっている。
「見て見ぬふり、知らんふり」「赤信号、皆で渡れば恐くない」の
論理が横行している。

 このような状況に中で、政治家、評論家、マスコミ関係者には環
境問題と経済問題とは別個の問題と捉えられており、同一の範疇で
捉えられていない。経済活動を保証する政治公害垂れ流しで、社会
的インフラが未整備の国が、日本に低価格商品を輸出してくる。
 圧倒的価格優位性を発揮して、日本市場を荒らしている。その手
引きをしているのが日本のメーカー、日本の商社である。
 これが日本の一部の人が、日本のデフレ経済からの脱却を妨害し
ている自縄自縛の構図である。この問題を解決するために、EUが日
本に求めたように、中国をはじめとして低価格輸出商品を日本に持
ち込んでくる国に対して、「環境対策をしっかりとやらない国の輸
出品をボイコットする」と宣言することである。

 ただ単に保護主義的に高い関税をかける「セーフティガード」な
どは、愚策と考えられる。仮に高い関税をかけるにしても、ODAなど
によって、相手国の環境対策に乗り出すなど前向きの姿勢が必要に
なるのではないか?
 それによって、日本とそれらの国の間新たな関係が構築できるの
ではないかと考える。金と物の流れには国境がなくなった反面、国家
が存在し、文化、インフラ、貧富の差などの格差がある。この差を
埋めるキーワードが「環境」である。

 21世紀の日本を救うのは、本音と建前の二本立ての環境対策で
はなく、名実ともに環境対策に真剣に取組むことが必要であると思
われる。これが内需主導型の産業構造改革の目玉政策である。
 私は、環境問題を政治のメインテーマと位置づける「環境革命」
の宣言が必要であると思う。国内の環境問題を前面に据えば、景気
の牽引役として、日本国内津々浦々に環境産業をはじめとしてさま
ざまな産業を発展させるであろう。すでにその萌芽が始まっている。

 環境産業が定着して日本経済のリーディング・ランナーとなるま
で、財政出動による景気対策が必要であると思う。
 それが、日本に安い輸出品を持ち込んできている国に対する規制
を納得させる道でもある。将来性のある財政出動には、日本経済に
対する信任も揺らぐことはないであろう。国の借金を返済する財源
は、国内の企業が経済活動を活発にし、多くの税収がもたらされる
ことによって確保される。
tanaka
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(Fのコメント)
田中さん、ありがとうございます。この意見に賛成です。新しい産業
を起こし、その枠で世界を考える。それが重要なのですね。ODA
の基準も環境の問題に絞ることがいいと思います。

しかし、環境が絡まない野菜の輸入や繊維製品の輸入などには、大
きな反発があるでしょうね。ソフトウエア開発なども環境には絡ま
ないので、全ての解決にはならないでしょうね。米国が低賃金国か
らの輸入が多くても10年もの間好景気だったのは、インターネッ
トの産業分野を独占したからです。やはり、新産業を興すことが重
要でしょうね。この分野の1つとして、環境分野もいいと思います。


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