511.日本人が国際人になるために



 得丸久文

 「日本人が国際人になる時、東洋思想を身につけなくてはいけないのか」 
という御質問についてですが、一言でいうと「YES」です。 

ー1ー まず、国際人とは何かを議論しましょう 

国際人という言葉の定義を、「日本人とは言語や生活習慣や文化を異にす 
る人間たちと、円満に付き合い、かつお互いを高めあう関係性を築こうと 
する人間」と定義してよろしいでしょうか。 

つまり、国際人というのは、かつての日本社会では、「オトナ」と呼ばれ 
た人間が、その付き合う範囲を異文化の領域に発展させた人間だと考える。 
海外に旅行した回数や、生活した期間や、堪能な語学の数や、TOEFLの点 
数が問題にされるのではありません。あるいは、外資系の企業でたくさん 
お給料を貰えば国際人というわけではないのです。 

かつての日本社会では、「あの人は世間が広い」あるいは「世間が狭い」 
という表現がありましたが、国際人とは、「世間の範囲が異文化の人々に 
まで及んだ人間」ということになります。 

こんな定義をすると、日本社会では、もはや「太っ腹」とか、「度胸」と 
いった言葉が死語になっているのに、国内にいない人物像を復活させて、 
それが国際人ですか、という質問をされる方もおられるかもしれません。 
そうです、その通りです。頼りがいのある、太っ腹な、度胸の座った人間 
にならなければ、ボーダーレス時代をうまく乗り切ることはできないので 
す。 

日本社会の中で、きちんとした近所付き合いや社会生活を営めない人間は、 
国際人にはなれません。修身、斉家、治国家、平和な国際社会、の順番に 
世間が広がらなければなりまえせん。そうしないと、腰の入った国際人に 
はなれないのです。 

ー2ー 衆生を正しい道へと導く能力を身につけることが大切 

すでに、国際人の定義に、東洋的な意味合いが入ってしまっていますが、 
それ以外に、日本人(日本で生まれて日本で育った人間)が、国際人になる 
方法はないのではないでしょうか。つまり、相手に信用され、相手のため 
を思い遣り、相手を正しい道へと導くことができるためには、日本社会で 
「オトナ」になっている必要があります。 

なぜオトナでなければならないのか。 

これからのボーダーレス社会では、次のような能力が求められます。 

真実を見抜く力、無用な誤解を発生させず未然に防ぐ力、言葉や文化を異に 
する人間同士が相互理解できるように導く力、文化を異にする人間をなるべ 
く相手の気持ちを尊重して説得する力、利害の異なる集団の間で妥協を勝ち 
取る力、国民国家間の利害対立を超えて地球人類のために必要な政策を実施 
する力、、、 

これらの力を必要とし、交渉や会議の場でそれを使う人は限られています。 
でも、そのような人材を育てていかなければなりません。 

心は、意識は実存です。一朝一夕に即席栽培できるものではありません。 
日本人の過去の経験や、日本の過去の思想を振り返って、さらに西洋の思想 
を概観して、そのような力を最短距離で獲得することができるのは日本人が 
東洋思想を身につける場合ではないかと思うのです。 

つまり、日本人が東洋思想を身につけると、次のような意識構造の人間にな 
ることが容易にできます。 

1 個人主義でない。国家や世界の利益を、個人の利害や利益に優先させる 
 ことができること 
2 禅的に対象と一体化して世界を眺めることができる。自我を滅却して世 
 界を理解することができること 
  頭で考え過ぎない。形式合理主義の罠に陥りにくい。直感を大切にする。 
3 自然そのものを崇拝する心があること。 
4 人間が神の代わりにこの宇宙あるいは世界を全て構築できるという思想 
 が弱いこと 
5 植民地経営や家畜飼育の経験が少ない。すべての命は尊いとする思想が 
 ある。(「一寸の虫にも五分の魂」ということわざの通り) 
6 対立をきらい、ものごとを円満に解決することを大切にしてきたし、そ 
 の伝統がある。 

あとは、ちょっとした語学力と、相手の文化に対する理解力と配慮だけです。 
それが備われば、日本人はもっとも優れた国際人になると思います。 

まだまだ議論はつきませんが、どんどん追加で質問してください。 

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