492−2.米中機事故について



                     ふる@鶴川 
 米ABCテレビによると、米軍偵察機と接触し墜落した中国戦闘
機を操縦していた「王偉」パイロットは、米軍側が「挑発的」とし
て警戒していた特定のパイロットの一人である可能性が高いと報じ
ているそうです。 
 同テレビでは米軍側が、このパイロットを「マーベリック」と名
付けており、映画「トップガン」で俳優のトム・クルーズが演じた
過激な操縦士の名前ですね。 
 また米NBCテレビでも、以前米軍機と至近距離に接近した際、
このパイロットが自分の電子メールのアドレスを紙に書いて見せる
など挑発的な行為をしていたとのこと。 

 米軍偵察機と中国軍機と、どっちが悪いんだと言う話になると、
仮に、大型機が急に進路を変更したために戦闘機がぶつかったとな
ると、中国軍パイロットの技能の恥をさらしているようなものです。 
 偵察機の巡航速度が600〜650km/hrぐらい、中国戦闘機の殲8(F
8)が約900km/hrですから、300kmスピードダウンして、接近してち
ょっかい出されるのは、威嚇射撃よりも怖いでしょうね。 

>しかし、私が本当に知りたいのは、「北京政府は本当に解放軍全体
>を掌握しているのか否か?」ということ。南沙諸島にしても今回の
>事件にしても、現地解放> 軍区の行動に、中央政府が「なんとか利
>用できるように」追随している様に思われる。 
 どうも偵察機は、中国海軍の新型大型攻撃型原潜か、新鋭のソブ
レメンヌイ級駆逐艦への情報収集活動中に、これを追いはろうとし
た中国軍機がスクランブルかけたようです。空軍なら、北京当局の
指令で米機に接近したことになるが、海軍南海艦隊の所属であれば
、艦隊司令官の指揮下にあり、独自に動いた可能性があります。 

 まず、中国の軍隊と言うところは戦前の歴史でもご存じでしょう
が、100年前も今も「軍閥」という事を抜きにして語れない国で
、これは共産党中国になっても、何にも変わっていないそうです。
従って、国難に際してはさすがにまとまるかもしれませんが、政治
的に政府が解放軍全体を掌握しているとは言い難いです。 
 従って、今回の事件も単に中国vs米国の図式だけでなく、中国
内の政権を巡る権力闘争も含まれていると考えることも必要です。
 江沢民自身が、米軍に責任を追わせるようなステートメントを出
していますから、後には引けません。しかし、米軍に落ち度があっ
たかなかったかは、台湾側のレーダーではっきりと記録が残ってい
ますし、偵察機を返還してフライトレコーダー等を解析すれば中国
側の責任が明らかになる虞がありますので、政治決着が着かないか
ぎり返還できないでしょう。 
 江沢民政権としては、北京オリンピック誘致、WTO加盟と重要
な政治課題で米国の協力がほしいですから、早期解決が望ましいで
しょうが、パイロットが行方不明、中国内の報道は米国の責任論一
辺倒で、それに煽られて世論は強硬論となっていますから、譲歩す
る決着が付けられない状態です。 
 パウエル国務長官の「遺憾の意」は、米側が一歩譲歩して、中国
政府にメッセージを送ったように思えますが、それを中国側がどう
返すか、政治決着の落とし所が見物ですね。 
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米中機空中接触事故について、米中関係を壊す可能性がある。F

この事故には、もう1つ、中国の意図を感じる。米国機にスクラン
ブルをしているのは正常任務であるが、遅浩田国防相は緊急発進で
米軍機を退けたパイロットと会談しその功績を褒めたというので、
次には米国偵察機の電子装置を無傷で手に入れたいと思っていた可
能性がある。

もう1つ、中国は敵との印象を米国国民に持たした影響を今後、
中国は享受することになり、WTO等の加入などで米国の支持が
心配ですね。
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87%が「中国は敵」と米世論調査 米中軍用機接触事故
 米軍偵察機と中国軍機の接触事故は、早急な打開策が見いだせな
いまま、双方の国民感情に火をつけ始めている。米国内では乗組員
の返還が遅れれば、世論が一気に硬化するとの見方が強い。

 事故を巡る米マスコミの報道は過熱している。特集番組を相次い
で放送しているCNNテレビが2日に実施した電話による世論調査
では、87%が中国を「米国の敵」と答えた。

 米ギャラップ社の今年2月の世論調査では、48%の米国民が中
国を「好ましい」と答え、45%が「好ましくない」ときっ抗して
いた。しかし、一方で中国を「米国の敵」とみている米国人はイラ
ク(38%)に次いで多く14%という数字を示していた。

 外交評議会(ニューヨーク)のロバート・マニング・アジア研究
部長は「米国の世論はまだこの事件をそう深刻にとらえていない。
しかし、長引けば、今日でも中国に懐疑的な世論が『反中国』に転
嫁し、人々は中国当局に拘置されている24人の乗員を『人質』と
呼ぶだろう。そうなるときわめて危険だ」と語る。「最悪の事態は
、中国が乗員をスパイ容疑と領空侵犯の罪で裁判にかけることだ」
と懸念する声もある。

 ニューヨーク・タイムズは「ワシントン、北京のどちらかでも処
理を誤ると米中関係は深刻な亀裂に陥る」(3日社説)と早期収拾
を呼びかけた。ブッシュ大統領の地元のダラス・モーニング・ニュ
ースも「ブッシュ氏は中国のタカ派を挑発するな」(同)と書いた
。

 東西冷戦が終わっても、米国はロシアと中国の軍事行動の偵察を
続けるが、一方で、米中の経済関係は昨年の中国の対米輸出が1億
ドルに上るなど、より緊密になっており、双方とも関係悪化をさけ
たいのは当然。しかし、99年5月に起きた米軍機によるベオグラ
ードの中国大使館爆撃事件の際も、中国の反米感情の盛り上がりと
並行して米国の反中感情も盛り上がり、6割近い米国民が中国を「
好ましくない」と見るようになった。

 ベオグラードの事件では、米国の過失が明らかで謝罪した。しか
し、今回の事件でブッシュ政権が謝罪するとの見方は、世論の中に
もほとんどない。行き詰まりの状況を打開すべく、米中による合同
調査委員会の設置やシンガポールといった第三国による仲介なども
取りざたされているが、解決が長引けばブッシュ政権が「戦略的競
争相手」と表現する中国と抜き差しならぬ状況に陥る。(02:15) 
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「中国の主権と民族の尊厳の侵犯は許さない」 唐外交部長
  外交部の唐家セン部長は4日、米国のプリアー駐中国大使を呼び
、米偵察機が中国軍機に衝突し墜落させた事件について、改めて強
く抗議した。 

  唐部長は次のように述べた。 
  米偵察機が1日午前に中国・海南島沿海空域で中国軍機に衝突し
墜落させた事件の責任はすべて米国側にある。米偵察機は「国連海
洋法条約」の関連規定に違反し、さらには中米両国が昨年5月に合意
した海上での危険な軍事行動回避に関する共通認識をも破った。
今回の事件は米国側の過失がもたらしたものであり、米国側がすべ
ての責任を負い謝罪するのは当然だ。 

  中国人操縦士は衝突事件発生後から現在にいたるまで行方不明で
あり、生死もわからない。中国の指導者、中国政府、人民はみな
安否を心配しており、操縦士の家族も焦慮している。我々はあらゆ
る努力を惜しまず捜索・救助活動を続けている。中国側が一貫して
、冷静、自制的、責任ある態度で事件の対応にあたっていることを
指摘しなければならない。中国側はまた、人道主義の立場から、
米国人乗員に適切な処置を与え、米国の駐中国大使や大使館員との
面会を認めている。しかし米国側は正反対の態度や対応を取ってい
る。米偵察機が飛行規則に違反して中国軍機に衝突し墜落させ、
さらには中国領空に進入し、中国の空港に着陸し、中国の主権と
領土を侵犯し、国家の安全を脅かしたことは明らかであるのに、
米国側は事実を認めず、責任を認めず、かえって横暴な態度をとり
、理屈を並べ、事実を偽り、中国側を再三不当に非難していること
は、誤りの上に誤りを重ねるものだ。米国側の発言は中米関係とい
う大局を一切考慮せず、問題の適切な解決にはつながらないものだ
。中国人民はこれについて強い不満を抱いている。 

  中国側は中米関係を重視し、「衝突事件」が迅速に解決すること
を望んでいる。中国政府と人民にとって、国家の主権と尊厳の保護
よりも重要なものはなく、中国の主権と民族の尊厳に対する侵犯は
決して許さない。中国側は米国側に対し、「衝突事件」の重大さを
認識し、中国側の厳しい立場と要求に真摯に答え、事件の適切な解
決に向け中国側に協力するよう求める。米国側は誤った判断をすべ
きではない。事態を複雑化させる可能性のあるいかなる行為も取る
べきではない。米国側は中国側の度重なる要請や中国人民の厳正な
要求に真剣に答え、責任ある態度で事件を適切に解決し、同種の
事件の再発を防ぐ効果的な措置を講じなければならない。 
  「人民日報日本語版」2001年4月5日 
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(1)緊張感漂う「米中軍用機衝突事故」報道  GWRより
■事故発生で対中政策作り前倒し:1日に中国の海南島沖で発生したアメ
リカと中国の軍用機接触事故について、米紙はもちろんながら連日、1面
から大きく紙面を割いて伝え、日毎に緊張感が増している。1日目は事故
に関する情報、特に中国政府側からの情報が限られていたため、記事はほ
とんどがアメリカ政府高官の発言などを中心にして書かれており、同様に
それらを元にした日本の新聞報道とあまり大差はなかった。
 2日目の3日付けからは分析記事も出始めた。ワシントン・ポストは「
米中関係におけるいら立ちの蓄積」と題し、中国政府によるアメリカ人学
者らの身柄拘束やブッシュ政権による国家ミサイル防衛(NMD)計画推進
など、両国関係で緊張要素が募っていたところへの事故発生で「両国は米
ソ間の冷戦と同様の対立に入るかもしれない」と緊張感をあおる記事を1
面から掲載。軍事分析記事を掲げたニューヨーク・タイムズは、「米中両
国の軍用機の衝突はランダムな事故ではなく、いつでも起こり得るもので
あり、危険なものになりつつある両国の軍事競争を反映している」と伝え
ている。一方、ロサンジェルス・タイムズは、ブッシュ政権が対中政策を
まだ固めていないことを強調するような記事を出した。それによると、ブ
ッシュ政権は近々、台湾への兵器売却について決断しなければならないが
、ある高官は、「中国をどの程度敵と見なすか」など対中政策を含めた具
体的・長期的なアジア政策は10月予定のアジア歴訪までに仕上げるつもり
でいたことを漏らしていたという。それが今回の事故で、政権は包括的な
対中政策を早急に検討せざるを得ない状況になったと分析する。
■中国の態度は本当に硬化?:3日目の4日付けになると、駐中米国大使
による乗員面会やブッシュ大統領による乗員・軍機の返還要請、そして江
沢民主席による謝罪要求発言などの大きな動きがあった。このため、1面
半分と中面前面2ページを使ったニューヨーク・タイムズなど、割かれる
紙面が格段に大きくなった他、日本の新聞には出てこない、各新聞による
論調や視点の違いも出始めた。1面作りでもそれは反映されている。中国
側から公表された米軍偵察機や記者会見するブッシュ大統領、乗員面会後
のプリアー大使の写真を使う新聞が多かったが、クリスチャン・サイエン
ス・モニターだけは、乗員の家族が無事帰還を祈る黄色いリボンを木に飾
るという、戦争や人質危機の時によく見られる光景の写真を大きく載せ、
両国の対立を予感させている。
 同紙をはじめ多くの新聞は、責任はアメリカ側にあるとして謝罪を要求
する中国側を「強硬姿勢に出た」ととらえている。ワシントン・ポストは
「中国首脳陣が米政府に対して強硬路線を選んだのは、国家主義的な世論
、そして政府上層部における対米政策の分裂に対応するもの」と中国政府
の硬化を強調する。しかし、ロサンジェルス・タイムズだけは「中国は強
硬姿勢と外交努力でバランスを模索」と題した記事で、中国は態度を硬化
させているだけではないと伝えている。同紙は、中国国民によるインター
ネット上のひどい嫌米発言を自主的に削除する中国政府の動きや中国外務
省の朱報道局長の記者会見の詳細(国際空域での事故発生容認や米軍によ
る故意行動との見解否定など)、中国メディアにおけるアメリカの一国覇
権や傲慢さへの批判欠除などを指摘して、2年前の在ユーゴスラビア中国
大使館誤爆事件時の対応とはかなり異なるという。これは、対米政策に関
する中国首脳陣の分裂を反映している。そして同紙は最後に「だが、今後
中国のタカ派が大勢になると、いよいよ米中関係は危険な道に入る」と結
論付けている。この記事を読む限り、大半の新聞が伝えているほど、中国
の姿勢は硬化していないのではと思えてくる。
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米国務長官、謝罪求める中国に配慮も
 【ワシントン4日=春原剛】パウエル米国務長官は4日、米中両
国軍機が接触事故を起こした問題に関連して、遺憾の意を表明した
。同時に「この問題を解決する必要がある」と述べ、事故原因の究
明に向け、中国側に二国間協議の開催を呼び掛けた。中国側に一定
の配慮もにじませた対応と言えるが、中国がこれにどう応じるかは
なお不明だ。 
 パウエル長官は「中国軍機が無事に帰還せず、中国人パイロット
が命を落としたことを遺憾に思う」と表明。その上で「中国側と協
議し、双方が説明を行えるよう、すべての方法を取っている」と述
べ、事態の早期収拾に向け、米中対話を本格化させたい意向を強調
した。中国の江沢民・国家主席は米側に公式謝罪を求めているが、
米国務省のバウチャー報道官はパウエル長官の発言の趣旨について
「(謝罪と遺憾は)違う言葉だ」と述べ、「責任は米側にある」と
の中国側の立場を容認したものではないとの見方を強調した。 
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急増する中国軍機の米軍機スクランブル
 【香港2日=佐藤隆二】2日付の香港紙、太陽報は北京の消息筋
の情報として、3月にも米軍機が中国近海に2回飛来し中国軍機が
緊急発進していたと伝えた。米軍機が中国の領空侵犯した回数は昨
年で30回に急増したと中国軍はみており、緊急発進を奨励する指令
を各部隊に通達していた。 
 同紙によると、3月の全国人民代表大会(国会)開会中に黄海と
東シナ海で米軍のF15などによる偵察活動があり、中国軍側はスホ
イ27などを発進させた。党中央軍事委員会の張万年副主席や遅浩田
国防相は緊急発進で米軍機を退けたパイロットと会談しその功績を
褒めたという。 

 今回の接触事故時に、中国軍が海南島近海で「星光計画」と呼ば
れる陸海空三軍合同の軍事演習を実施していたとの情報もある。 
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米偵察機、不時着直前に機密情報を破壊
 【ワシントン4日=共同】4日付の米紙ワシントン・タイムズに
よると、中国軍機と接触し中国・海南島に不時着した米海軍の偵察
機は着陸直前、搭載していた機密情報の破壊を始めたと米太平洋軍
司令部に無線で連絡していた。国防総省筋の話として報じた。 
 国防総省のキグリー副報道官は3日の会見で、接触から着陸までの
時間が15-20分だったとして、機密情報が「どの程度破壊できたか分
からない」と述べていた。


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