481−1.人種差別撤廃委員会「最終所見」



日本に対する人種差別撤廃条約審査の結果が出ましたので、考察し
ましょう。  Fより
この審査では、コリアンの権限、アイヌの権限強化を言っているが
在韓日本人の権限強化も合わせて、日本政府は交渉するべきである。
日本にいるコリアンの国籍は韓国系の方が多い。その韓国での日本
人の権限は、在日コリアンより、相当低い水準になっている。
外交は相互主義が原則であるから、その原則は確認する必要がある。

しかし、外国人差別を公然としている温泉、パチンコ屋等を取り締
まる法律は、早く制定する必要があるでしょうね。そこは国連の
委員会と同じですね。
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◇◇人種差別撤廃委員会「最終所見」

★このメールは、人種差別撤廃条約日本政府報告書審査について&
2001年反人種主義・差別撤廃世界会議について、IMADR-JC会員・関
係者、情報希望者、その他関係団体にお送りしています。
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  国連・人種差別撤廃委員会「最終所見」 
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人種差別撤廃委員会 第58会期
2001年3月6〜23日
CERD/C/58/Misc.17/Rev.3(将来的にはCERD/C/58/CRP..)
2001年3月20日 オリジナル:英語

人種差別撤廃委員会最終所見:日本
1.委員会は、1997年1月14日および1999年1月14日にそれぞれ提出
が予定されていた日本の第1回および第2回定期報告書を、2001年3月
8日および9日に開催された第1443および1444会合(CERD/C/SR.1443
 and 1444)において検討した。2001年3月20日に開催された第1459
会合において、以下の最終所見を採択した。

A.はじめに

2.締約国との建設的対話を開始する機会を得たことをとくに歓迎
する。委員会は、幅広い政府省庁を代表する大代表団が出席したこ
と、および締約国が認めたように、NGOが第1回報告書の作成の過程
に関与したことによっても力を得た。

3.委員会は、報告書の作成のためのガイドラインに従って作成さ
れ、締約国により提出された、詳細で包括的な報告書、および委員
会の報告書の検討の後に委員が行った広範囲の質問に対する回答と
して、代表団が提供した口頭による追加情報を歓迎する。委員会は
また、報告書の検討後に提供された文書による追加回答をも歓迎す
る。

B. 肯定的な側面

4.委員会は、いくらかの種族的および民族的マイノリティの人権
の促進ならびにその経済的、社会的および文化的発展の促進のため
に締約国が行った立法上および行政上の努力、とくに以下のものを
歓迎する。
1)1997年の「人権擁護施策推進法」
2)1997年の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識
の普及及び啓発に関する法律」
3)部落民に対する差別の撤廃を目的とした、「同和対策事業特別措
置法」に基づく一連の事業

5.委員会は、アイヌ民族(Ainu people)を独特の文化を享受する
権利を持つ少数民族(a minority people)であると認定した、最近
の判決を関心を持って注目する。

6.委員会は、とくに外務省のウェブサイトにおいて「あらゆる形
態の人種差別の撤廃に関する国際条約」を含む基本的な人権条約の
全文を公表していることを含め、既存の人権基準についての意識喚
起の努力を歓迎する。委員会はまた、諸条約の履行に関する締約国
の報告書および国連の各履行監視機構の最終所見についても同様に
公表していることをも歓迎する。

C. 懸念事項および勧告

7. 人口の種族的構成の確定に関する諸問題についての締約国の見
解を留意する一方で、委員会は、締約国の報告書にこのための情報
が欠如していると考える。締約国が次回の報告書において、委員会
の報告ガイドラインにおいて要求するような、人口構成の完全で
詳細な情報(とくに、コリアン・マイノリティ、部落民、沖縄社会
を含む、条約の適用対象となるすべての状況を反映した経済的およ
び社会的指標に関する情報)を提供するよう勧告する。沖縄の住民
は、独自の種族集団であると認められるよう求め、この島の状況が
沖縄住民に対する差別行為をもたらしていると主張している。

8.条約第1条に規定されている人種差別の定義の解釈に関して、
委員会は、締約国とは逆に、「世系(descent)」という文言が独自
の意味をもち、人種や種族的出身、民族的出身と混同されてはなら
ないと考える。従って、委員会は締約国に対して、部落社会を含む
すべての集団が、差別に対する保護および条約第5条に規定されてい
る市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利の完全な享受
を締約国が確保するよう勧告する。

9.憲法第98条が締約国によって批准された諸条約が国内法の一部
である旨を規定しているにもかかわらず、「あらゆる形態の人種差
別の撤廃に関する国際条約」の規定が、国内裁判所によってほとん
ど援用されていないことについて、委員会は懸念をもって注目する
。諸条約の規定の直接適用が、特定の事案において、問題となる
規定の目的、意味および文言を考慮して判断されるとする締約国か
らの情報に鑑みて、国内法における「あらゆる形態の人種差別の
撤廃に関する条約」およびその規定の地位に関する締約国からの情報
を明確にするよう求める。

10.委員会は、この条約に関連する締約国の立法の唯一の条項が
憲法第14条のみであることに懸念を表明する。この条約が自動執行
性を有さないという事実を考慮し、委員会は、とくに条約第4条およ
び第5条の規定に従い、人種差別を禁止するための特別な立法を制定
することが必要であると信ずる。

11.委員会は、「日本国は・・・、日本国憲法の下における集会
、結社及び表現の自由その他の権利の保障と抵触しない限度におい
て、これらの規定に基づく義務を履行する」とする、条約第4条(a)
および(b)に関して締約国が維持している留保に注目する。委員
会は当該解釈が締約国の条約第4条に基づく義務と抵触することに懸
念を表明する。委員会は、委員会の「一般的な性格を有する勧告VII
(32)」および同「XV(42)」に締約国の注意を喚起する。それによれ
ば、第4条のすべての規定が非自動執行的であることに鑑み、同条
はその実施において裁量の余地を認めない規定であり、人種的優越
または憎悪に基づくすべての思想のあらゆる流布の禁止は、意見お
よび表現の自由への権利と両立する。

12.人種差別の禁止一般に関し、委員会は、さらに、人種差別が
それ自体刑法において明示的かつ十分に犯罪とされていないことを
懸念する。委員会は締約国に対して、その国内法秩序において、
条約の諸規定を完全に実現することを検討すること、ならびに人種
差別を犯罪とすること、および、いかなる人種差別行為に対しても
権限のある国内裁判所および他の国家機関を通じて、効果的な保護
と救済措置を利用する機会を確保するよう勧告する。

13.委員会は、高い地位にある公務員による差別的な性格を有す
る発言、および、とくに、条約第4条(c)の違反の結果として、
当局がとる行政上または法律上措置がとられていないこと、ならび
に、当該行為が人種差別を扇動し助長する意図がある場合にのみ
処罰され得るという解釈に懸念を持って注目する。締約国は、かか
る事件の再発を防止するための適切な措置をとること、とくに、
公務員、法執行官および行政官に対し、条約第7条に従い、人種差
別につながる偏見と闘う目的で適切な訓練を行うよう要請される。

14.委員会は、コリアン(主に子どもや児童・生徒)に対する
暴力行為およびこの点における当局の対応が不適切であるとする
報告に懸念し、政府が当該行為を防止し、それに対抗するためのよ
り断固とした措置をとるよう勧告する。

15.日本に居住する外国籍の子どもに関して、委員会は、初等教
育および前期中等教育が義務教育となっていないことに注目する。
さらに、委員会は締約国の次の立場に注目する。すなわち、「日本
における初等教育の目的は日本人をその社会のメンバーとなるよう
に教育することであるから、外国人の児童にかかる教育を受けるよ
う強制することは適切ではない」という立場である。委員会は、
統合という目的を確保するために強制手段を用いることが全く不適
切なものであるという考え方に同意する。
しかしながら、第3条および第5条(e)(v)に関し、委員会は、
この点に関して異なった取扱基準を設けることが、人種隔離ならび
に教育、訓練および雇用についての権利の不平等な享受をもたらす
おそれがあることに懸念を表明する。締約国が、人種、皮膚の色
または民族的若しくは種族的出身に関する差別なく、第5条(e)が
規定する関連する権利が保障されるように確保するよう勧告する。

16.委員会は、コリアン・マイノリティに影響を及ぼす差別に懸
念を表明する。
(朝鮮人学校を含む)インターナショナルスクールを卒業したマイ
ノリティに属する生徒が日本の大学に入学するための制度的な障害
のいくつかのものを取り除く努力が払われているものの、委員会は
、とくに、朝鮮語による学習が認められていないこと、および在日
コリアンの生徒が高等教育の利用の機会に関して不平等な取扱いを
受けていることに懸念を表明する。締約国に対して、この点におけ
るマイノリティ(朝鮮人を含む)の差別的取扱いを撤廃し、国公立
の学校におけるマイノリティの言語による教育を利用する機会を
確保するため、適切な措置とるよう勧告する。

17.委員会は、締約国が先住民であるアイヌの権利をより一層
促進するための措置をとるよう勧告する。この点に関し、委員会は
、とくに、土地権の承認および保護、ならびにその喪失に対する
現状回復および賠償を求める、先住民の権利に関する「一般的な性
格を有する勧告ェェ」」(第51会期)に締約国の注意を喚起する。
また、締約国に対して、先住民および種族民に関するILO第169号条
約を批准し、またはそれを指針として用いるよう要請する。

18.委員会は、日本の国籍を申請するコリアンに対して、自己の
名前を日本語の名前に変更することを求める行政上または法律上の
義務はすでに存在していないことに注目しつつ、当局が申請者に対
しかかる変更を強く求めていると報告されていること、および、
コリアンが差別をおそれて、そのような変更を行わざるを得ないと
感じていることに対して懸念を表明する。委員会は、個人の名前が
文化的および種族的アイデンティティの基本的な側面であることを
考慮し、締約国に対して、かかる慣行を防止するために必要な措置
を取るよう勧告する。

19.委員会は、締約国が受け入れる難民の数が最近増加している
ことに注目しつつ、インドシナ難民と、その他の民族的出身を有す
る限定された数の難民に対して異なった取扱基準が適用されている
ことに懸念を表明する。インドシナ難民は、滞在施設、財政支援お
よび国が資金を負担する日本語講座を利用しうる一方で、かかる
支援は他の難民に対しては原則として適用されていない。委員会は
、締約国に対して、このようなサービスをすべての難民に対して
平等に保障するために必要な措置をとるよう勧告する。これに関し
、さらに、締約国が、すべての庇護申請者がとくに十分な生活水準
および医療についての権利を有するよう確保することについて、
すべての難民に平等の資格を確保するために必要な措置をとること
を勧告する。

20.委員会は、国家賠償法が相互主義に基づいてのみ救済を与え
ていることを懸念する。これは条約第6条に合致しない。

21.委員会は、締約国に対して、今後の報告書において、とくに
、条約違反にとくに関係する判例(当該違反に対して裁判所が与え
た適切な賠償に関する判例を含む)を提供することを求める。

22.委員会は、締約国が次回の報告書に、ジェンダーならびに民
族的および種族的集団ごとの社会・経済的データ、およびジェンダ
ー関連の人種差別(性的搾取および性的暴力を含む)を防止するた
めにとった措置に関する情報を含めるよう勧告する。

23.また、締約国が次回の報告書において次のものがもたらした
影響に関する一層の情報を提供するよう求める。
1)1997年の「人権擁護施策推進法」および「人権擁護推進審議会
」の活動および権限
2)1997年の「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知
識の普及及び啓発に関する法律」
3)「同和対策事業特別措置法」および同法の適用の終了後、すな
わち2002年以降に、部落民に対する差別撤廃のために検討されてい
る戦略

24.委員会は、締約国が条約第14条に基づく宣言を行っていない
ことに注目し、当該宣言を行う可能性を検討するよう勧告する。

25.委員会は、締約国が、第14回条約締約国会合が1992年1月15日
に採択した、条約第8条第6項の改正を批准するよう勧告する。

26.委員会は、締約国の報告書の提出以降に今後も当該報告書を
一般の人々が容易に入手できるようにすること、報告書に関する
委員会の所見についても同様に公表するよう勧告する。

27.委員会は、締約国が2003年1月15日に提出する予定の第3回定
期報告書を第4回報告書とともに提出すること、および本所見に
おいて提起されたすべての諸点に対処することを勧告する。


*最終的な形態の文書になる前に事務局などによる、内容の実質的
変更を伴わない形式的な変更を受ける可能性のあることをお断りし
ておきます。

(翻訳:反差別国際運動日本委員会、監訳:村上正直<大阪大学大
学院国際公共政策研究科助教授>)
(情報提供・英文タイピング:IMADRジュネーブ事務所 田中敦子)


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