479−2.日米経済の展望



日米の株価の動きが変化したので、検討しよう。 Fより
日本は不良債権処理と金融緩和の両面の対策を打ったので、株価は
1万3千円にもどっている。実に900円以上の高騰になった。

しかし、FRBが0.5%利下げした途端に9400ドルまで米国
NY株価は下落した。日本と米国のファンダメンタルが違うためで、
このコラムには何遍も書いたが、好景気の時に株を売らずに家を
ローンで買ったツケが出てきた。私の友達でシリコンバレーに家を
土地価格が高い時に取得した人がいるが、バブル期の東京の土地価
格高騰と同じような状態のときに買ったため、土地と株の二重の下
落に苦しんでいる。これも、1993年の日本と同じ状態になって
いる。日本と同じという視点をグリーンスパンも持っているようだ。

 ここ当分、米国の景気回復は無理でしょうね。このため、グリー
ンスパンは、利下げ余地を残す必要がある。それと、日本の円安を
演出して、米国の国債や投資の引き上げを阻止する手に出てきた。
勿論、日本にとっても円安の方がいいため、文句はない。
日本の金利をほとんど0%にしたので、米国の金利は4%程度まで
下げることができます。しかし、2回か3回しか利下げができない
ことになります。4%の金利差がないと、米国に投資されている
資金が日本に流出するためです。米国の経済運営は、4000億ドルの
経常赤字ですから、日本以上にたいへんです。

一方、日本のガンは分かっている。バルブ期に踊った建築業や流通
業の不良債権が銀行の金融融資のパイプを詰まらせている。
不良債権の整理は絶対やる必要がある。この機会を逃すと、日本は
立ち上がれない。もう1つ、不良債権の大きな部分は財政投融資の
資金の部分でもあるため、日銀総裁の発言にもなるのです。
もうしかし、あのバブル期のような景気はいらないし、その可能性
はない。成長と言っても1%程度でいい。それは日本の製造業が
空洞化しているためであり、ここでも米国的に成ってきている。

そうして、もう1つの面、米国の景気は当分下降すると考えて、
日本企業は対策を打つ必要があるでしょうね。
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経済政策における優先順位とタイミング    サルサ
Fさん。
1)中国への生産移転の問題
まず、日本企業の中国への生産シフトに関しては以下の産経新聞
記事をまず参照してください。
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中国政府が許氏を「漢奸(売国奴)」と呼ぶなど激しい批判に出てい
たことで、陳水扁総統の当選一周年を今月十八日に控えた在中国台
湾企業関係者らの不安を増幅するかたちとなった。
 閉鎖情報が伝えられたのは、許氏の経営でABS樹脂の世界最大
手、奇美実業(本社=台湾・台南)の石化プラント。十日午前(日本
時間同)から、許氏の政治姿勢を理由に工場閉鎖が命じられたとい
う情報が一斉に流れた。
中国当局筋では「許文龍氏の言動は統一に不利な内容できわめて遺
憾。しかし、われわれの台湾企業保護政策は一貫したものである」
として、情報を間接的に否定した。(中略)
 許氏は陳総統の選挙活動を支援しており、昨年三月の選挙直後に
も中国が奇美実業の工場に対し原料の輸入を禁じたと伝えられたが
、この時も真相ははっきりしなかった。
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この記事は端的に対中国投資のカントリーリスクを如実に示してい
ます。即ち進出企業の権利が法律ではなく中国政府の恣意的判断で
一夜にして反故にされる重大な危険性を記事は明示しています。
一体中国政府はどう言った法的根拠に基づいて、台湾実業家の中国
工場の閉鎖を命令できるのだろうか。通常の西側国家では、企業の
権利を制約するには、正当な法的根拠と法律に基づく執行手続きが
必要である。また企業も不当な法的処置には、訴訟を持って対抗で
きる。裁判権と行政管轄外事項に政府が立ち入り出来ないのは法治
国家の根本である。中国は法治国家でないことを上記は証明してい
る。日本では既に明治時代に「大津事件」で政府の裁判不介入..
.即ち法治国家であることを諸外国に鮮明にしているが中国の実態
は近代国家ですらないということです。結果的にこうした中国へ資
本投資や工場進出する日本企業や台湾、韓国企業の危険さを改めて
裏付けることになっています。
特に対日感情の悪い日本企業は狙い撃ちされる危険性が高い。
 また、米国共和党政権の対中政策変更に伴って中国と米国、台湾
の外交安全保障の枠組みが大きく変化しています。将来、中国、台
湾、米国、日本にける外交安全保障上重大な問題が発生したならば
、ある日突然、資産や投資を接収するという高いリスクが存在する
ということを忘れてはいけません。
過去に中国はこうしたことでは前科があります。こうした対中カン
トリーリスクを勘案しながら既に進出している企業は、中国への
比率を今後急速に下げ、いつでも撤退を図れるように準備しておく
べきです。
 また付加価値の高い製品や高度な技術移転を伴う生産は中国では
絶対に行うべきではない。(知的所有権やライセンス契約、民事訴
訟法的整備が薄弱な中国への高度技術の移転は危険)
中国への日本企業進出は、■加工人件費が安い、■日本に近く
船賃が安いというのが主因ですが、前者であればインドが後者であ
ればフィリピンが適切です。
 また、国内の空洞化に関しては、国内生産と海外生産を切り分け
て国内は国内で高度製品に集約する方向を模索すべきです。また
海外生産もカントリーリスクに備えた分散が必要。
 何でも安易に中国生産というのは極めて危険な選択です。
2)景気対策
景気対策と構造改革は両建てで進めなければなりませんが現時点で
優先されるべきは景気回復です。故小渕総理が、「景気回復と財政
再建は2兎を追うもの1兎をも得ず。」と言われたとおりです。
事実、小渕さんが亡くなってから急激に日本株は下落し、かつて
財政再建、構造改革と称して日本経済を奈落の淵に叩き落した橋本
龍太郎が登場してから更に景気自体も急降下しました。バブル崩壊
後日本は何度もこの失政を繰り返してます。財政金融政策という
戦力を小出しにして予備兵力を消耗し、参謀本部(大蔵省、日銀)
の面子のために作戦方針を変更しない。この体質は戦前とも同じで
すなにも、昔とかわっていません。構造改革の実施は激痛を伴います。
重病の患者にこれを直ちに実行することはショック死を惹起する
危険性があります。まずは栄養を補給して体力を回復させて切開手
術を行うべきです。要は経済政策においてはプライオリティーと
タイミングを計るとこそ重要です。みそもなにもかもごちゃまぜに
して実施せよと言うのは暴論です。
サルサ
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(Fのコメント)
今回の株安は、米国景気に引きずられた株安です。勿論、米国の
景気、特にITバブル崩壊は日本の電子部品に大きな影響を与えま
すが、一過性です。それより、不良債権の整理をする方向になると
株は上昇するように、投資家は日本の不良債権を問題にしているの
です。サルサさんのような意見は、過去何回もありましたが、今回
はそのような処置は賛成できません。1度は不良債権処理を本格的
にやり、過当競争になっている建築業界、流通業界、金融業界の整
理をする必要があります。もう不良債権の先送りは無理です。
建築業界の現状は、業界全体が安値受注に傾斜して、ほとんど儲け
がない状態ですから、日本経済に大きな悪影響を与えています。
すべてが過当競争のつけです。この過当競争を止める必要があると
思います。

中国の賃金が他国より安いのと、中国人の勤勉さ・教育水準の高さ
はフィリピンやアジア各国以上の水準です。勿論、お金が裏打ちさ
れている必要はあるが。この勤勉さ・教育水準の高さで匹敵するの
はベトナムだけのようです。不良率も断然少ない。しかし、その
中国でも品質改善の工夫を共有する文化ではないようです。
このため、日本で工場を作り、ある程度の品質を確保できた時点で
中国に工場を移転しているようです。

このため、残念ながら、これも、サルサさんとは違う方向に日本の
大手各社は進んでいます。中国での生産。しかし、リスクがあり、
2年とか3年で投資資金の回収を目指しているようですね。製品は
すべて日本企業が中国工場から買い、日本や世界に輸入するようで
す。
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(3/23)不良債権「2年で半減を」・公明代表
 公明党の神崎武法代表は23日夜、埼玉県上尾市での会合であいさ
つし、金融機関の不良債権処理の促進策について(1)不良債権残高
を2年間で半減させるなどの処理目標を設定する(2)不良債権処理に
伴う雇用の悪化に備え、財政出動を含めた対策を講じる(3)直接償
却など不良債権の最終処理を推進するため、国家行政組織法8条に
基づく機関として「産業再生委員会」(仮称)を金融庁の下に新設
する――ことを提唱した。今後、自民、公明、保守の与党三党間で
調整し、政府に正式に提案する方針だ。 

金融庁の下に「産業再生委」
 神崎氏は不良債権処理に関して「先の日米首脳会談で(事実上の
)国際公約となった。政府・与党を挙げて全力で取り組んでいく決
意だ」と強調。同時に「不良債権を処理する目標をきちんと明示し
、政府も宣言して取り掛かるべきだ」と述べ、不良債権処理の目標
年次や計画を策定する必要があるとの見解を明らかにした。 

 具体的な目標設定に関しては「昨年9月末時点で金融機関の不良債
権額は約31兆8000億円で、貸出残高に占める割合は約6%。約3%の
米国の倍になっている」と指摘。そのうえで「2年かけて米国並みの
水準に減らすのも一つの方法だ」と提唱した。産業再生委員会の創設
については、企業の経営再建計画を評価、認定することで「(主力
銀行の)債権放棄を促進するのに有効な対策となる」と訴えた。 

 不良債権処理の促進策を巡って、政府内では数値目標の設定に
積極的な経済産業省と慎重な立場を取る金融庁が対立し、取りまと
め作業が進んでいない。公明党は保守党とともに、金融機関の資産
から不良債権を切り離す最終処理問題を次期政権の主要政策課題に
取り上げる構えで、数値目標の設定も「政治主導で実現したい」(
幹部)としている。この日の神崎氏の発言はこうした公明党内の論
議を踏まえたものだ。 
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米大統領、不良債権処理は不十分・日米首脳会談
 【ワシントン19日=中沢克二】森喜朗首相は19日午前(日本時間
20日未明)ホワイトハウスでブッシュ米大統領と約1時間会談し、
これに続く昼食会と併せて計2時間、意見交換した。日米同時株安を
受けた経済問題では、ブッシュ大統領が日本の景気低迷の一因であ
る不良債権問題について「全力で取り組んでいないではとの見方が
米国内にある」との懸念を表明。早期の処理を求めた。一方、米国
の景気減速に関連して「米経済が成長するために財政、金融、貿易
などあらゆる政策を取っていきたい」とも強調し、減税など景気対
策を実施する考えを示した。 
 双方は会談後、両国の景気回復に向けた緊密な協力など経済、
安全保障両面の協調を盛り込んだ共同声明を発表した。会談の冒頭
、米原潜グリーンビルと実習船えひめ丸の衝突事故を巡って、首相
が徹底的な原因究明、早期の引き揚げ実施、補償問題での誠意ある
対応を求めた。大統領は「今回の不幸な事件を深く遺憾に思う」と
述べたうえで「できることはすべて行う」と約束した。 
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日銀、量的緩和を決定
 日銀は19日の政策委員会・金融政策決定会合で、景気の下支えや
デフレ圧力の緩和を狙い、金融市場に供給する資金を増やす量的金
融緩和に初めて踏み切ることを賛成多数で決めた。政策目標を金利
から資金量に変更する決定で、21日から実施する。公定歩合は現行
年0.25%のまま据え置く。当面、手形や債券の買い入れを増やし、
金融機関が日銀に持つ当座預金残高が1兆円程度多い5兆円になるよ
う目指す。この誘導手段として長期国債の買い入れも増額する。
日銀は短期金利がゼロ%近辺に下がると見ており、結果的にゼロ金
利政策も復活する。今回の措置は「消費者物価上昇率が安定的に
ゼロ%以上となるまで続ける」方針で、政府や企業などには構造改
革を急ぐよう改めて注文した。 
 日銀による金融緩和決定は2月9日以降、3回目。景気低迷による
デフレ圧力や株価下落に対処するとともに、政府や企業が不良債権
処理など構造改革策を進める際の衝撃を和らげる狙いがある。 
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郵貯、民間の手に移っていくべき・日銀総裁
 日銀総裁は22日午後、定例記者会見で、郵便貯金の民営化につい
て「政府や地方自治体から民間の手に移っていくべきだと思う」と
の考えを示した。郵便貯金は2003年に公社に移行することが決まっ
ている。速水総裁はこのことを「方向性は結構」とし、郵便貯金も
銀行の預金も国民からお金を集めて運営しているとの点から「民間
と同じレベルで争うべきではないか」と指摘した。 
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デフレ欠けるインフレ和陰暦に補正予算、関連法案を。
                    無学歴池学


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