476−2.「拡大日本戦略試論(2)」と「動き出した金相場」



YS/2001.03.19

「拡大日本戦略試論(2)」と「動き出した金相場」


kenさんの「日本人の移住拡散戦略(哲学)」「経済進出戦略」「拡大
日本文化戦略」からのアプローチから議論を進めることに賛成です。た
だしkenさんもご指摘のとおりこの3つの分野が有機的に繋がり合わ
ないと「拡大日本」自体も成立しなくなります。この点で多少混乱があ
るかもしれません。

■日本人の移住拡散戦略(哲学)

これはやはり得丸さんの範疇かもしれませんね。また海外にいる土橋さ
んやイギリスで開発学を学んでおられるcharaさんやJuneさんのご意見
も聞いてみたいところです。

私自身の経験では、アメリカ西海岸にしばらくいたことがありますが、
留学中の日本人がムラを構成して大挙して飲食店に乗り込むところをよ
く見かけました。これは日本人に限ったことではなく、特にアジア系の
方々に共通することかもしれません。私は元来群れることに抵抗があり、
単独で行動することが多かったのですが、日本に帰って企業社会に浸っ
てみると、やはりその窮屈さを身にしみて感じました。

これは日本の教育機関にも顕著にみられる現象で有名教授を中心に封建
的な「しがらみ」が色濃く残っており、自由な研究を続けていくために
はかなりの犠牲が強いられるようです。このため有能な人材がアメリカ、
イギリスを中心に留学へと向かわせているのではないでしょうか?

この村意識はアイデンティティの表れと考えれば決して否定されるよう
な問題ではないと思いますが、意識的に現地の方と接することを心掛け
ないと本来の文化交流ができないのではないかと思います。

国際化はもう逃れられない問題です。言葉の教育も重要ですが、国際化
時代の哲学や思想も必要なカリキュラムにすべきかと思います。ただ日
本に住んでいても工夫をすればできることなのかもしれません。我が家
ではご近所の海外から来れているご家族とお友達になることで国際交流
を楽しんでいます。

■経済進出戦略

現在以前勤めていた会社で新規開拓した自動車分野を引き継ぎ、群馬や
新潟あたりの工場さんと一緒に製造をしています。私の役割は企画開発
と工場さんの営業代行です。たまにラインにも入りますよ。

最初から大量生産型の製品開発をあきらめ、多品種小ロットの高付加価
値の製品開発に徹してきました。中小規模の工場さんばかりですが、周
辺の工場が相次いで閉鎖していくなかで、どうにか今でも生きています。

一時期賢明に大量生産のためにアジア各国を歩き回りましたが、輸送ロ
ット、生産ロットと国内在庫の問題からあっさり撤退しました。最近で
はユニクロなどが成功していますが、経験からいうと将来的なビジョン
は見出しにくいのではないかと思います。

実はフリースウェア(化繊の毛布のようなやつ)の低価格戦略も日本で
かなり早い時期に仕掛けたことがあります。当時アウトドアカジュアル
が最盛期に入りつつあり、フリースの原反を安く仕入れ中国と富山で大
量生産し某D系列で大量に売りさばきました。

後発の参入であったため小ロット生産では価格的に競争に負けてしまい
ます。苦肉の策として薄利で量販店に販路を広げながら、自社ブランド
では知らないそぶりで販売を続けていました。

カジュアル衣料のように大きな技術革新が少なく、常に流行に左右され
る分野では見極めが重要です。このときに新たなブームを創り出せるか
が鍵になります。また「ブランド戦略」も重要な要素です。いずれにし
ても日本では相当な費用が発生します。にもかかわらず日本人経営者は
マーケティングに関連する知識に乏しく理解されないケースが多いよう
です。私は仕方なく趣味を生かして国内の大手化繊メーカーさんとペッ
トボトル再生フリースやら難燃フリースやらウールフリースの開発にも
携わりながら地道に継続しましたが、結局深追いすることなく見事に撤
退しました。

現在、自動車関連の工場さんとは試作だけに特化しようかと相談中です。
売上より利益確保を前提にするのもひとつの選択ではないかと思います。

これからは製品の特性に応じて国内国外を器用に使い分けるしたたかさ
が求められてくるように思います。ただし特に海外、その中でも中国あ
たりは魔物が住んでいます。政治的な友好関係を構築する努力は必要で
しょう。

なお自動車においてはほとんどの場合マイナーチェンジで中身まで変え
ることはありません。フロントマスク等のデザイン変更程度が主流です。
家電製品も同様です。見かけを変えるだけです。

全くの新型やフルモデルチェンジの場合をのぞいてこれがイノベーショ
ンにあてはまるかどうかは難しいところでしょうね。むしろ強制的に買
い換えさせるような意図も感じられます。私の周囲では最近欧州系のメ
ーカーに乗り換える友人が多くいますが、総じてこの短期間でのデザイ
ン変更に嫌気がさしたケースが多いようです。

特に環境面で考えれば「より長く使える」ことに勝るものはありません。
このユーザーに生まれつつある認識に気付いていないことも日本経済低
迷の一因ではないでしょうか?

インターネットやデジタル放送の普及にともないこれからますます消費
者の選択眼が鋭くなるでしょう。長く使えるものには大金を出し、一時
的な流行に見えるものや消耗品に過ぎないと判断したものには極めてシ
ビアな買い方になるように思います。

とすれば現在の日本経済は成熟期にみられる極めてまともな状況なのか
もしれません。政治家が大声で叫ぶほど高度経済成長時代を夢見る方が
多いのか不思議に思います。もっと冷静に現在の歴史的な位置付けを考
えてみる必要があるのではないでしょうか。。。

それではこれからどうすればいいのか?

「循環型社会」あるいはまもなく始まる「家電リサイクル法」は通過点
にすぎないように思います。環境との調和を考えれば「所有社会」から
地域主導の「分散型レンタル・リース社会」への転換を提案したいです
ね。すでに実験的な取り組みはドイツあたりで始まっています。つい最
近まで自動車はある種ステイタス・シンボル的な側面がありましたが、
企業役員送迎車としてわずかに存在するだけで今では利便性、快適性が
重視されています。これは単なる景気動向が影響しているだけとは思え
ません。

このことは実際に自動車メーカーに随分前から提案してきました。最初
は相手にもされませんでしたが、最近はかなり反応が出てきたように思
います。もう無視できない状況に来ていることをようやく理解し始めた
ようです。というのは実際に試算したところ生産台数の大きな減少が発
生しないからです。

「レンタル・リース」が主流になるとほとんどの場合製品回収が前提に
なります。当然のことながら海外との交流も活発化します。これまでも
何度も書いてきたことですが、これを日本発のスタンダードにするとい
うのはいかがでしょうか?

■動き出した金相場について

燃料電池については私自身二面性があります。
コラムでは世界政治経済動向を中心に書いていますが、これは実際の開
発現場でこの視点が欠落しているため敢えて書いているところがありま
す。

現実的な見方として燃料電池自動車の普及開始は2020年頃でしょう。
あくまでも開始でありガソリン車のシェアはこのときでも90%以上か
と予測しています。技術的な問題が多すぎるからです。ただし住宅や工
場向けの定置型は2010年には相当普及しているのではないでしょう
か。

水素を何から取り出すか?
技術的には天然ガスでしょうね。あまり触れられていませんが、メタノ
ールについては耐食性への対策から相当コストにも影響するかもしれま
せん。コラムで取り上げたガソリン改質は、トヨタさんも表面的なポー
ズだと思いますよ。改質時の反応温度が800度を超えます。いくらコ
ジェネといっても周辺機器への影響が大きすぎます。ガソリンスタンド
で改質する以外難しいのではないかと正直思います。

『金復活』とか『金本位制復活』とか結構話題になってきましたね。
参考までに下のデータを見てください。

■1999年「金」企業別データ  年間生産量    世界シェア
Anglo American plc. 英国     215.1 t    9.3% (1位)
Newmont Mining Corp.米国       129.9 t      5.2%  (2位)
Gold Fields Ltd.南アフリカ     124.2 t      5.0%  (3位)
Barrick Gold Corp.  カナダ     113.8 t      4.5%  (4位)
Placer Dome Inc.    カナダ       97.3t      4.00% (5位)
FCV         米国       74.0 t      3.10% (6位)

Rio Tinto plc    英国     92.9 t     2.10% (10位)

FCV=Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc.

ご覧の通りアメリカは金を完全に抑えていません。またロシアも深
く関わってきます。別の要因ではないでしょうか?
例えば「ダイヤモンド」と関係しているのかもしれませんね。
ここまで書けばわかるかな。

ところでアングロアメリカンはプラチナでもシェアトップです。4
1%を越えていますからほとんど独占に近い。これを考えると燃料
電池と原発、プラチナとウランは同じような関係にありますね。た
だし石油が絡む点で非常に面白い研究テーマとなります。
この世の中こんなもんです。問題は日本の大手企業の経営者でもこ
のあたりの知識、関心がないことです。先日ある大手マスコミの経
済部トップの方とお会いしたときにもこのことが話題になりました。

caosもぜひ拡大日本のご意見お願いします。


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