462−2.食料戦略について



Food issue                   Chara 
   
 英国で開発学を勉強しているcharaです。個人的で恐縮ですが私の
卒論のテーマについてご意見いただければ助かります。以前から
世界の食糧問題を調べてみたいと漠然と考えているのですが、先生
や友達と話し手もなかなか「これだ!」と思えるおもしろい切り口
がなかなか浮かびません。何でも結構ですのでアイデアやご意見を
いただければ幸いです。 

*興味の発端 
とある記事を読みました。 
(内容)日本は戦後、米国から食糧援助を受けたがそれは米国の
食糧戦略の一端であった。給食で出された糧はパン、牛乳、スープ
といったいわゆる日本の伝統的ではない食べ物。それを子どもの頃
に毎日食べるとどうなるか、食生活が変わる、食好が変わる。ここ
数十年の日本人の食糧消費を見ればわかるように米が減りパンが増
えている。豊かになり食の選択ができるようになった現在であるが
、人々は伝統的な米よりも小麦粉を消費している、そしてこの小麦
は主に米国から輸入している。つまり米国は市場拡大に成功したわ
けである。 

(感想)日本マクドナルドの社長もコメントしていましたが、子供
の頃に食べていた物でほぼ一生の食好が決まってくるらしいのです。
だからマクドナルドは子供をターゲットにしているらしいのですが
、この事実、つまり食べ物でもって人の生活に影響を与えるという
次元から拡大して、食糧供給によって将来的に他国に対して影響力
を持つ、ということをテーマにしたらおもしろいと思いました。 

*思い付く側面 
Agribusiness 
途上国への影響(社会面、生活面、食生活、経済生活) 
途上国の食糧政策 
先進国(特に米国)の食糧戦略 
食糧輸出・輸入 
食糧援助 
Food Security(食糧の安全性、Accesibility) 

*思い付く切り口 
>外資としてのアグリビジネスが与える社会的影響 
(例)都市化、労働者階級の創出 
>同上、政治的影響 
(例)当該国の食糧政策に与える影響 
>伝統的な食糧を栽培することをやめて、現金作物を作る影響 
(例)飢饉に対するキ弱性の増大 
>国、地域を絞ったケーススタディ 
>作物の種類を絞ったケーススタディ(コーヒー、紅茶など) 

日本の食糧問題もおもしろいとは思うのですが、できればSabーSaharan
Africa地域について調べてみたいと考えています。 
勝手なお願いだとは思うのですが、よろしくお願いいたします。 
chara 
==============================
Re:Food issue        YS
   
 昨年夏に「マックとマクドのグローカリズム」のコラムを書きま
した。私自身も大学では農業経済を専攻していたので、昔読んだ
文献を引っぱり出して書いてみました。 
あちこちのサイトで「コメを食べると馬鹿になる」の一文が話題に
なったようですが、当時のことは下の本で詳しく紹介されています。
ただもう絶版になっているかもしれません。 
またこの本は昭和53年に放送されたNHK特集「食卓の影の星条
旗−米と麦の戦後史」をまとめたものです。 

「アメリカ小麦戦略」NHK農林水産番組班 高嶋光雪著 家の光
協会 

この「米ばか」説は、その後いろいろ調べましたが、アメリカ側か
ら発信されたものではなく、慶応大学医学部のある教授がまじめに
信じて語ったようです。 

この本には「キッチン・カー」のことも詳細に書かれています。
「キッチン・カー」は昭和39年から36年にかけて日本全国を廻
った料理実習講習車のことで、全国2万会場で約200万人を集め
ました。 
年配の方で覚えている方も多いのではないでしょうか? 
スローガンは「粉食奨励」で、実はこれはアメリカの小麦を宣伝す
るための一大事業だったのです。 

小麦のキッシンジャーことアメリカ西部小麦連合会の当時の会長
リチャード・バウム氏の次の発言を紹介します。 

「キッチン・カーは私達が具体的プログラムとして日本で最初に取
り組んだ事業でした。つづいて学校給食の拡充、パン産業の育成な
ど、私達は初期の市場開拓事業の全精力を日本に傾けました。ター
ゲットを日本にしぼり、アメリカ農務省からの援助資金を集中させ
たのです。その結果、日本の小麦輸入量は飛躍的に伸びました。・
・・・日本は私達にとって市場開拓の成功のお手本なのです。」 

日本はPL480号でも「呆れるほど見事な成功例」と言われてい
ます。世界的にもアメリカの食糧戦略を分析する際にまず日本での
事象から入ることが基本となっているようですよ。 
特に途上国に対してもアメリカは日本と同じ戦略を適用してきまし
た。もう一度日本から紐解いてみても面白いかもしれません。 

あと「コカ・コーラ」と「ペプシ・コーラ」の世界戦略を分析する
ことをお勧めします。 
初期は完全に地域別に棲み分けしていたはずです。この棲み分け戦
略がどのように発動されたかで当時のアメリカ政府の政策決定メカ
ニズムを知ることができます。 
皆さん御存じのように日本では「コカ・コーラ」が選ばれたみたい
です。 
卒論頑張って下さいね。 
==============================
Re:Food issue 柳太郎   2001/03/03 04:07 
New   
 charaさん、はじめまして。 

以前私もイギリスで開発学少々勉強しておりましたので、少し意見
を述べたいと思います。 

>日本の食糧問題もおもしろいとは思うのですが、できればSabーSaharan
Africa地域について調べてみたいと考えています。 

これは妥当な線だと思います。実際、戦後の日本経済の発展を参考
に現在の第三世界の状況を述べるのは得策ではありません。という
のは、日本は戦前にすでに先進国だったからで、戦争中に荒廃した
とはいえ出発点が全く違うからです。

もう一つ、食糧戦略に関してですが、このようなBBS上の議論とし
ては面白いのですが、学術論文のトピックとしてはどうかと思いま
す。基本的に論文を書く時には、他の論文や本またはインターネッ
トを中心に情報を集め、参項文献として引用などをしっかりと示し
て組み立てていかなければなりませんが、この話題がそれらの情報
源によって本当に証明され得るか、つまり、アカデミズムで認めら
れる程度に信頼性のある情報がそろうか、といったことが気になり
ます。また、それが「世界から貧困をなくす為の学問」という開発
学のテーゼの一つにどれだけ合致するかも疑問です。アメリカの食
糧戦略により、貧困がなくなる、または増大するということが証明
できれば面白いかもしれませんが、信頼のおける文献がどれだけそ
ろうかは疑問です。

> *思い付く切り口 
1 > >外資としてのアグリビジネスが与える社会的影響 
> (例)都市化、労働者階級の創出 
2 > >同上、政治的影響 
> (例)当該国の食糧政策に与える影響 
3 > >伝統的な食糧を栽培することをやめて、現金作物を作る影響
> (例)飢饉に対するキ弱性の増大 
> >国、地域を絞ったケーススタディ 
> >作物の種類を絞ったケーススタディ(コーヒー、紅茶など) 

まず1と2に関してですが、経済開発のためには「農村開発が先か都
市開発が先か」といった「鶏と卵」のような基本的な議論にまだ決
着がついていないのはご存知のことと思いますが、charaさんがど
ちらの立場を取るのかによって切り口が大きく違ってくるのではな
いでしょうか?

3に関してですが、一例として、アフリカのある国でカナダの技術
を導入し、小麦の大規模農場で生産性が増大したのはいいのですが
、貧困も増大したというものがあります。(理屈はお分かりですよ
ね。)私はこの観点が重要だと思います。開発に携わっている人た
ちは、結構馬鹿なことを平気でやっています。特に欧米の人たちは
、自分達のやり方が正しいという前提のもとに技術指導に行き、
現地の声を聞かない、または現地の状況を知らないという批判をよ
く耳にします。全くいい加減なものです。

個人的には、この点をついた論文をうまく書けると面白いと思うの
ですが。そのためにはどれだけ良いケーススタディーを見つけるか
にかかってくると思います。(これは結構見つけることができるか
もしれません。)実際開発学はケーススタディーで証明されなけれ
ば話しにならないといった感じがあると思いますから。

視点としては、外国の技術を導入した農業政策に着目するか、自国
の既存の農業をどう発展させていくかといったところに着目するか
で、大きく分かれると思います。charaさんは前者を選んでいるよ
うですね。

ところで、charaさんは修士課程に在籍しておられるのですか?その
場合は、大体10,000〜15,000語程度の論文でしょうから、内容的に
広げて書くことはできないのはご存知だと思います。 また、文献に
乏しいトピックを選ぶのは危険です。博士課程の学生ならば、全く
新しいアイデアを出して証明することが期待されますが、それ以下
の場合は、既存の文献・資料を多く集めて論理的に自分の論として
組み立てられているかが試されているわけですから、文献の少ない
トピックを選ぶということは得策ではありません。

論文を書く時のまず初めの問題に、どれだけテーマを絞り込めるか
といったものがあります。そしてこれが一番重要だと思いますし、
イギリスではここで評価が大きく決まります。私の書いたことが何
かヒントになるか分かりませんが、頑張って下さい。


コラム目次に戻る
トップページに戻る