458−2.拡大日本の戦略について



日本企業の海外進出の歴史を検討しておきましょう。  Fより

海外進出には3つのパターンがあったと考えます。
1つ目のパターンは、YKKや味の素などの日本企業が自分の強み
を基に、海外進出した例で、これは1980年代から1990年代
にあり、企業自身に強みが持続的にあればいいが、富士通や日立、
NECなどのメインフレームように進出当初は強みがあったが、
クライアント・サーバー方式にコンピュータの世界が変革した時点
で強みがなくなり、苦戦している。

2つ目のパターンは、生産ラインを主にアジアや中国へ持っていく
型の企業進出。このパターンでは海外で生産した物は日本の市場で
売ることになるが、世界へその製品を売るスタイルもある。
この代表例が、船井電機、アイワ、ユニクロなどが有名である。

3つ目のパターンは、同時並列的に世界(欧米)対応する企業がで
てきた。社内の会話も日本語、英語、中国語、スペイン語など多様
になる。このパターンはまた、海外企業のM&Aをも行う。
この代表例は、ソニー、ホンダ、フジミックなどで、ソフトバンク
のように日本より米国で有名な企業も出てきた。YAHOO米国本
社の大株主がソフトバンクであるから当たり前であるが。

このような3段階で、失敗したり、成功したりといろいろなノウハ
ウが蓄積されている。
マグチモータがいい例で、低価格のマイクロ・モータでは大手であ
るが、いつも先頭を切って、生産拠点を低賃金国に移動させている。
中国の大連に進出するのも早かった。低価格を武器にするため、
生産拠点を戦略的に移動しているのです。この同じ業界の日本電産
は、日本で生産している。磁気ディスク用のマイクロ・モータが
主力で、精密さを要求されて、そのため高価格であるためです。
これと同じスタイルで、低価格製品は中国などのアジアで生産し、
高価格帯の製品は国内というような分業をおこなっているのは
部品産業、衣料品産業などである。

アイワも1990年前後に日本の工場を閉鎖してシンガポールとマ
レーシアに生産拠点を移した。しかし、その後、船井電機が中国で
生産するようになって、価格では船井に負けることになる。
このため、低価格商品をどこで生産するかが問題になっている。
有名デパートで、1万円の紳士服が売り出されるとのことであるが
、この生産地は北朝鮮ですよ。このコラムで言っていたことを実行
した人がいるようですね。一番人件費が安い。しかし、カントリー
リスクもあるため、軽工業製品しか今は持っていけないが。

最近、高機能でありながら海外生産になっているものが出てきてい
る。それは、携帯電話の生産で、海外のノキアやエリクソン、モト
ローラなどが低価格な携帯電話を売るためで、これに対抗する必要
があるのでしょう。NEC、松下などが中国に工場を建てている。

そして、現在、T君のように新製品を最初から中国で生産を計画す
る企業が出てきている。これは、日本の消費者が低価格商品しか、
買わなくなっているためで、日本で製造すると、高価格になる。
となると、日本では無人・少人数で大量生産ができるものしか作ら
ない。この工場としては、村田製作所のようなコンデンサー、高周
波フィルターなどの電子部品、半導体、電池類、それと、ファナッ
クなどのロボット工場で、ほとんど無人で完全自動化工場は日本で
生産できるでしょう。しかし、機種変更が容易でないため、完全自
動化はほとんどの産業には不適である。

このように、企業から見た日本は、拡大せざるを得ないのですが、
日本の政治家や評論家は日本しか見ないのです。この拡大している
日本は、実業です。一時、金融業界が大挙して、欧米諸国に進出し
ましたが、この連中は虚業でした。なにも商売が出来なかった。
今、日本から世界に進出しているのは工場ですから、実業でかつ、
日本の消費者の低価格化に対応するためです。この日本のユーザに
対応すると、世界のユーザにも売れるのですよ。日本にとっても、
進出した国にとってもいいことですよね。

今は人件費が安いのは中国ですが、どんどん賃金が上昇しています
から、その内、それより安い地域、国に移動しないと世界の競争に
負けることになるのです。今は、中国奥地かベトナムと次の候補地
を、言っていますが、その次の候補地を育成しておく必要があるの
です。長期計画は日本政府が行うべきです。今までは共産主義国家
であり、教育水準が高い地域でした。そこに競争原理を導入すると、
人は目を輝かせて働きます。

しかし、将来の候補地として見るアフリカや中南米は、教育水準が
低くく、かつ民主主義のレベルも低いのですから、その向上からす
る必要があるのです。
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YS (BBSから)
 柳太郎さん、久しぶりの登場ですね。この件では来るかなあと思
っていました。お仕事 少しは余裕がでてきましたか? 

ところで話は変わるのですが、「拡大日本」についてはどうお考え
ですか? 
対象とする地域やその分野についてご意見お願いします。 
この問題を考えるときにも20世紀にアメリカが取り組んだ「アメ
リカン・ウェイ・オブ・ライフ」 
輸出戦略を再度見直してみる必要を感じています。 
食卓以外にもエネルギー、自動車、家電、メディア、音楽、映画な
どの分野で大きな成果を上げました。 
この成果も数値以上に今日でも覇権拡大、維持につながっています。 
こうした点を踏まえて21世紀の日本のあるべき姿を考えることが
できればと思います。 

おくやまさんのところにも情報を入れましたが、 
駐日大使になるハワード・ベーカー氏の奥さんであるナンシー・カ
セバウムさんもこれまた超大物です。このおふたりの役割は日本に
とって非常に重要なものになるでしょう。
現実的に考えれば「拡大日本」もアメリカ側の意向を利用するした
たかさが必要でしょうね。 

このナンシー・カセバウムさんもアフリカに目を向けているようで
す。私のほうも昨年から鉱物資源の関連からネット上でアフリカに
行きっぱなし状態です。柳太郎さんもご存知のとおりNGOが相当
力をつけてきましたからこれからは何をするにも大変ですね。 
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Re:拡大日本                    柳太郎
 久しぶりに土日が休みになり、登場してみました。 
さて「拡大日本」ということですが、あまりこういう見方をしてい
なかったので、どう書くべきかという感じです。 

例えば日本の文化などが日本以外の地域に広まっていく過程におい
てアメリカと違うのは、その戦略性にあるとおもいます。ただ、ア
メリカがどこまで最初から計算していたかに関してはよく分かりま
せん。どうもこの点に関しては、アメリカは最初から計算づくだっ
たといった感じの意見もあるようですが、結果論から語っているよ
うにも見えます。

つまりは、私が今までグローバリゼーションの話題で何度か話した
ように、政治的(軍事的)、経済的に強い方が弱い方を凌駕すると
いった事と同じ、単純な理屈に基づいているようにも見えます。

韓国では日本文化の解禁よりも前から日本の音楽や漫画などが、違
法ではあっても、見られましたし、日本食料理屋は韓国風にアレン
ジされているとはいえ多く存在しました。韓国のテレビドラマや音
楽は、韓国からプロデューサーが頻繁に来日してアイディアを持っ
て帰り、韓国で再製してきました(もちろん韓国風にアレンジして
ですが)。なぜこんなことが起こるかといえば、日本の経済力が強
かったからです。台湾でも同様にいえると思います。中国の大都市
でも、日本のドラマからアダルトビデオまで(中国語の字幕つきで
)見られるようです。逆に日本では韓国・台湾・中国の有名な俳優
・女優・音楽などに詳しい人はそんなに多くないのではないでしょ
うか。ちなみに私がイギリスにいるときに、韓国・台湾・中国人の
友人たちによく、ア ラン・タンという一昔前の香港(だったと思
います)の有名な歌手に似ているとよく言われました。その歌手は
韓国、中国、台湾では有名だったそうですが、日本では無名だと思
います。日本ではアジア諸国の文化の輸入を禁止していたわけでは
ないのになぜ外に出るだけで内にはあまり入ってこなかったかとい
うと、政治的・経済的優位性のためだと考えることはできると思い
ます。

日経ビジネス誌で少し前に、厚底靴とガングロといった日本の若者
文化がどの辺りまで広まっているかを特集していましたが、それで
興味を引くのは、日本のファッションや音楽に興味は合っても、必
ずしも日本が好きであるということではない、といった点でしょう。

つまり、東南アジア、東アジアにおいてですが、日本がとる「拡大
日本」のための戦略は、「日本」を強く表に出さないものにすると
いうことかもしれません。植民地や太平洋戦争といった歴史がまだ
色濃く残っているので、日本を主張しすぎると反発を買う危険が高
いでしょう。逆にうまくやれば、今後2・30年の間に、ポジティブ
な方向で日本の文化の影響力を利用できるようになるかもしれませ
ん。が、その戦略性は今の日本にはないでしょう。 

ただ、世界的に日本の影響力を拡大するとすれば、軍事的な影響力
がない(=政治的な影響力の少なさ)ため難しいのではないかと思
います。(この辺に関しては、日本語にも翻訳されている、故スー
ザン・ストレンジの本を参考にしてみてください)ただ、これに代
わるものとして日本企業の国際展開が取り上げられると思いますが
、実際、海外展開してはいても、国際的な影響力をもつ日本企業の
数は限られていますから、いうほど大きくないかもしれません。
ただ、最近の例では、トヨタのフランスでのケースは拡大日本の話
題としては参考になるかもしれません。 

考えながら書いたので、話しがまとまりのないものになってしまい
ました。何かご意見をいただければ幸いです。 


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