421−2.「個人の尊厳」は国家の権威よりも優先される



白鳥宙
空虚な言葉を弄するのは止めにしよう。
空虚な言葉は何の意志も情感も伝えない。
言葉の源泉を思い起こそう。
生きるために、そして生かすために発した言葉こそが本当の言葉。
 言葉なくして意志伝わらず、
 心なくして愛は語れず、
 正義なくして愛は実らない。
 愛あればこその情けなり。
 情けあってこその義なり。
 義あればこその人の世なり。

 現在のように「建前」ばかりの論議をいくら繰り返してみたとこ
ろで、世の中は少しも良くならないどころか、益々奈落の底に沈ん
でいくのは明らかだ。今こそ国民一人一人が自分自身に正直になっ
て本音の思いを自分自身の言葉で語らないといけないと思う。お聞
かせの言葉には皆飽き飽きしている。このことに気付いた者から順
番に自分に正直になって、自分自身の言葉で自分自身の表現をしな
ければならない。そのような意味では、今社会犯罪にひた走ってい
る十代の若者達は正直者であり、結果として社会を改革するため
自己表現をしていると言えなくもない。建前ばかりを弄する今の
国家指導層の多くは不正直者であり、いくら美辞麗句を並べてみた
ところで今のように世の中は益々おかしくなっていくばかりだ。

 物事には道理というものがあり、その道理が社会の秩序を保って
いたのは遠い昔のこととなってしまった。本来の民主政体社会とい
うものもこの道理がなくしては成り立たないにも拘らず、意味も分
からない「民主」という言葉を口先だけで国家総出で自分の本音を
ひたすら隠し声高に叫び立てているところに非道理社会が出来上が
りつつある原因がある。今こそ皆一人一人が自分の本音を声高に
自己表現すればいいのだ。

 ただ、国民一人一人の「好み」が多様である以上、一つの社会を
成り立たせるには多数決による国家としての意思決定は確かに大事
である。好みを同じくする者同士ならその好みがその団体や組織の
道理であり、他に害が及ばない以上その好みに対して部外者があれ
これと自分達の好みを道理という言葉で押し付けるべきではない。
カルト教団の道理もその教団の中の世界では正義なのだ。ただそれ
が広く一般国民から見れば自分達の好みに合わず害ありと判断され
た時彼らの道理は非道理と判断されるに過ぎない。

 このように捉えてみると今国政の場で行われている建前オンリー
の茶番劇も永田町の議員達にとっては道理であり正義なのかもしれ
ない。しかし我々はそろそろ彼らの思考形態が明らかに人間として
の道理を逸しており、彼らが日本という国を破滅へと向わしめてい
るということに気付かなければいけない。多数は正義という一辺倒
の価値基準を絶対とし、多数を得るために有無を言わさず金を持つ
極少人数の好みと都合で党の方針が決められてしまい、多くの代議
士たちが弱々しくそれに付き従ってしまうというというところには
日本国としての本来の道理が生まれるはずはなく、従って彼らを見
習う国民の道義心は益々敗退し、日本社会全体が益々大きなカオス
へと向かっていくという図式になってしまっている。

 本来の民主主義思想の原点は「個人の尊厳」を最優先する考え方
に立脚している。
決して組織力や多数の力で個人の尊厳を犯してはならず、個人的意
見を充分に語らせる場を与えた上でその意見を尊重するという態度
がまず基本にあって始めて民主主義が成り立つのだ。そこにおいて
意見を異にする者同士が充分なる論議を重ねた上で最終的に決をと
るというのが本来の民主政治の在り方なはずだ。ところが日本の
政治においては議論は全てセレモニーでしかない。先ず始めに結論
があって例え政敵からどんな優れた意見を聞かされようと決して耳
を貸したりはしない。とにかく与党も野党も金と数の力のごり押し
を目指し、個人の意見を抹殺する方向にもっていこうと企むことに
のみ汗を搾っている。従って今の日本に本当の議論も無ければ民主
政治も無いのだ。

 しかしながら時代情勢がここまでハチャメチャになってくると今
まで黙してきた眠れる市民たちが本音の声を上げるようになる。
そしてその代弁者を求めるようになる。「公務員の給与と年金で国
が潰れる」という事実を公務員票と老人票を失うことを恐れて政治
家達は口にすることが出来ない。
「寄らば大樹の陰」はもはや通用しない時代になっているのだが、
悲しいかな弱者は未だに気がつかず国家や企業の庇護を求めている。
国家も企業も「臭いものに蓋」は限界に来ている現在「トカゲの尻
尾切り」という「人身供養」に自分が抜擢されてはじめて全ての事
情を悟ることになるのだろう。 
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(Fのコメント)
白鳥さん、もう少し砕けた言い方できませんか??
どこかの政党の演説を読んでいる感じで、庶民感覚に乏しいのです。
今までの政党にはない言い方がほしいですね。
言っていることは、非常にいいのですから。このコラムの趣旨を同
じです。同志現るの気分なのですが。


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