420−3.文字圏としての世界



鈴木薫著「オスマン帝国の解体」に面白い文化圏の見方がでていた
ので紹介します。(Fより)
 ある文化が優位的で濃密な拡がりを持つ範囲を、文化圏とすると
、この範囲を何で分類するかが問題になる。この時、文字という要
素が重要な要素として浮かび上がる。文字は、文化の蓄積、伝達に
必要なものである。言語より文字が文化の広がりを端的に示す多く
の事例を見出す。

ほぼ同一の言語を母語としている人間集団も、文化を異にすると、
自らの言語を異なる文字で表記する例がしばしばみられる。
ボスニア紛争の主役であるセルビア人、クロアティア人、ムスリム
はほぼ同じ言語を母語とするが、セルビア人はキリル文字、クロア
ティア人はラテン文字、ムスリムはアラビア文字。インドのヒンデ
ィー語とパキスタンのウルドウ−語は同系の言語であるが、ヒン
ディー語はプラフミー文字の系列の文字で、パキスタンはアラビヤ
文字で記させる。そして、この文字と宗教が一致している。セルビ
アはロシア正教、クロアチアはキリスト教、ムスリムはイスラム教
ですし、インドはヒンズー教、パキスタンはイスラム教です。

同一文化圏に属するという地域は文化交流が同一文字という概念に
より行われ、その文化の形が似てくることになる。

世界は、今東アジアを中心とする漢字圏、東南アジアから南アジア
はナ−ガリー文字圏、新疆ウルグアイ自治区・パキスタンからモロ
ッコまで拡がるアラビア文字圏、ロシアからギリシャまで拡がる
キリル文字圏、そして、西端のラテン文字圏の5つの文字圏が存在
する。

この文字圏の境は、インドとパキスタン、セルビアとクロアチア
などと国際紛争が起きている。
EUは、ラテン文字圏まで拡大するが、キリル文字圏の国を加入さ
せない可能性が大きい。ポーランド、チェコ、ハンガリーは、ラテン
文字圏である。

5つの文字圏はそれぞれ違う宗教であり、その文字圏は相互には、
文化交流が頻繁であったのです。

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