米国新政権の人事が、一応決まった。この陣容で、今後の外交が どうなるか、だいたいわかる。その外交・軍事について見よう。 (Fより) ラムズフェルド国防長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官の ライス博士、パウエル国務長官とチェイニー副大統領は、何をする かでしょう。この人たちは、軍事的な色彩が強い人たちで、ライス 博士はGWRのレポートにあるように、中国押さえ込みを志向する だろうし、北朝鮮には、力で有無を言わせない方向で対応すること が分かる。チェイニー&パウエルは、湾岸戦争当時の国防長官と、 参謀本部議長で、イラク軍27万人以上を殺した。ここぞという時 は、戦争して勝てる仕組みを作るのに最高のメンバーである。 そして、最後のラムズフェルド氏は、NMD構想の推進者であった から、この構想を推進するであろう。1歩進めて、軍事的な目的の 宇宙開発も推進する意向である。今までのクリントンの軍事予算削 減の大きな部分の1つは、NASAの予算であったため、米国の 宇宙開発は、進歩が停滞し、優秀な人材が流出していた。この予算 を増額することになる。「SPACE WAR」の準備。 この事態に、ロシアは反発して、大陸弾道弾の削減交渉は、1時紛 糾する事態も予想できることになる。 そして、中国は、この米国政権の顔ぶれを見て、外交政策を巧み に変更し始めた。台湾との関係改善を指向し始めたのである。 中国は今後も米国の支持がないと、国際社会に認知してもらえない ことを知っている。このため、「三通」政策を突破口にして、台湾 との関係を戻す方向になっている。 12月には、ベトナムとの国境交渉がまとまり、近隣との摩擦解消 も図っている。そして、インドとの関係改善を目指して、9日に李 鵬氏がインドを訪問する。これも、ブッシュ政権で中国敵対外交に 備えて、中国の周辺を固めようとしている証拠である。 付録に、東京12chの日高リポートの番組で、キッシィンジャー 博士の予測を放映していたので、その報告。 ============================== 「日高義樹のワシントン・リポート(2001年1月7日放送分) 〜激動の2001年 キッシンジャー博士の予測〜」の要約 第1部 アメリカ分裂 対日政策はどうなる ●ブッシュ政権は日本と安定した関係を持ちたいと考えている。 ●ブッシュ大統領は出来るだけ早く森首相と会うべきだ。 ●アメリカ人にとって日本のやり方は依然として理解しがたい。 第2部 朝鮮半島は本当に和平に向かうのか ●キムジョンイル総書記は北朝鮮の体制を変えずに生き延びたいと 思っている。 ●北朝鮮の体制が続いているのは反体制派を全く許さないからだ。 ●北朝鮮を朝鮮半島のスポークスマンにしてはならない。 第3部 中国共産党の崩壊が始まるのか ●中国は2002年、指導者が変わるので難しい時期に入る。 ●中国の共産主義を民族主義に変えさせてはならない。 ●中国に軍事政権はできないだろう。 第4部 中東が爆発する ●アメリカはアラブ諸国がイスラエルを破壊するのを許さない。 ●大切なのは平和ではなく共存である。 ●2001年、石油危機は起きないだろう。 第5部 日本はどうなる (第5部はKPMG取締役 吉原寛章氏との鼎談。) ●自民党の終末が近くても不思議ではないが、総選挙で負けたとし ても、連立などの手段によって、主導的な役割を果たすであろう。 ●日本が2000年も生き延びたのは、その団結力のため。日本人の合 意のシステムが崩壊してしまうとは考えられない。 ●日本企業には国際的な才能を引き付けるはっきりした方針がなく 、グローバリゼーションの途上であえいでいる。 ●日本の若い政治家の中には、高い教育を受け、国際的なビジネス を理解している人たちがおり、彼らには希望が持てる。 <2001年キッシンジャー博士10の予測> 1.ブッシュ大統領は減税に力を入れる。 2.日米関係は「大人の関係になる」。 3.日本の経済はゆっくりと回復する。 4.2001年前半、ドルは問題があって弱くなり円高になる。 5.石油は年末には安くなるだろう。 6.中東は結局、話し合いで落ち着く。 7.朝鮮半島の情勢は、キム・ジョウンイル総書記次第だ。年末に ははっきりするだろう。 8.ブッシュ大統領はピョンヤンを訪問することはないだろう。 9.中国では政治的は大騒ぎは起きないだろう。 10.年の初め、アメリカの景気は下降するが、全体的にはあまり悪 くない年になるだろう。 ============================== GWR No. 1(1/5/01) ブッシュの選んだライス博士のこれまでの主張をまとめると、彼 女は「バランス・オブ・パワー」という中世紀から第1次世界大戦 まで流行した政治理論の信奉者で、「米国にとり脅威となる国をい かに暴力で上回るか」との一言に集約される。これの裏付けは2つ ある。1つは1986年に日本の防衛大学で行なった集中講議、もう1 つは昨年のフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿。この間に15年を 経過し、ソ連邦が瓦解するという大事件をはさむのだが、彼女の理 論には1点の進歩もない。「国益を推進する」と題する寄稿論文の 内容は、「アジア太平洋地域にあって、中国は今やソ連邦に替わる 脅威、これを封じ込めねばならぬが、そのパートナーとして日本を 重視しよう」という、典型的なパワーポリティックスに準拠してい る。ソ連邦の崩壊以前から顕著な、「主権国家の役割後退、政治・ 軍事・経済・技術・社会のグローバル化」という世紀替わり最大の 現象への言及はゼロ。 ============================== GWR No. 1(1/5/01) ブッシュ政権閣僚候補 ■国務長官=コリン・パウエル/経歴:統合参謀本部議長(ブッシ ュ政権) ■財務長官=ポール・オニール/経歴:アルミ大手アルコア会長、 行政予算管理局高官 ■国防長官=ドナルド・ラムズフェルド/経歴:国防長官(フォー ド政権) ■司法長官=ジョン・アシュクロフト/経歴:上院議員(ミズーリ) 超保守派で有名 ■内務長官=ゲイル・ノートン/経歴:レーガン政権内務長官ワッ ト氏の弟子 ■農務長官=アン・ベネマン/経歴:農務副長官(ブッシュ政権) ■商務長官=ドナルド・エバンズ/経歴:ブッシュ選対の資金収集 担当、ブッシュ氏の長年の親友 ■労働長官=リンダ・チャベス/経歴:連邦公民権委員会のスタッ フ・ディレクター(レーガン政権) ■保健福祉長官=トミー・トンプソン/経歴:ウィスコンシン州知事 ■住宅都市開発長官=メルキアデス・マルティネス/経歴:フロリ ダ州オレンジ郡議会の議長 ■運輸長官=ノーマン・ミネタ/経歴:商務長官(クリントン政権) 、民主党下院議員(カリフォルニア) ■エネルギー長官=スペンサー・アブラハム/経歴:上院議員(ミ シガン) ■教育長官=ロッド・ペイジ/経歴:ヒューストン教育委員会委員 長、テキサス南大学教育学部長 ■退役軍人長官=アンソニー・プリンシピ/経歴:退役軍人長官 (ブッシュ政権) 資料:3日付けニューヨーク・タイムズ ============================== ■同盟重視の布陣出そろう 米外交・安保チーム 【ワシントン29日共同】ラムズフェルド元国防長官の再登板が 固まり、ブッシュ米新政権の外交・安保チームの布陣が出そろった。 既に副大統領にチェイニー元国防長官、国務長官にパウエル元統合 参謀本部議長、国家安全保障問題担当の大統領補佐官にライス・ス タンフォード大教授が内定しており、いずれも日本などとの同盟関 係重視の顔ぶれだ。政策面では米本土ミサイル防衛(NMD)計画 に加え、同盟国や海外駐留米軍を守る戦域ミサイル防衛(TMD) 構想の推進を主軸に掲げている。 (12/30kyoudou) ============================== 制限なしの「三通」を台湾側に求める 中国外務省 中国と台湾の間の「小三通」(通信、通商、通航の部分的開放) が今月から始まったことについて、中国外務省の朱邦造報道局長は 4日、「本当に意義のある三通を希望する。小三通は両岸の民衆が 望んできた形ではない」とする福建省台湾事務弁公室当局者の談話 を引用。「中国の公式評価」だとして、制限なしの全面的な開放の 実現を台湾側に対して求めた。 また、朱局長は、陳水扁総統が新年の祝辞で、中国が求める「一 つの中国」を棚上げにして、「政治統合」を求めよう、との新たな 表現で中台問題の解決を呼びかけたことについて、「台湾の指導者 が早急に『一つの中国』の原則に戻り、両岸が対等の対話を進める ことを希望する」と述べた。 (1/501:16朝日) ============================== 中国とベトナム、領海確定し国境問題解決 共同声明発表 ベトナムのチャン・ドク・ルオン大統領が25日、北京を訪れ、 江沢民国家主席と会談した。会談後、両国はトンキン湾(中国名・ 北部湾)の領海画定に関する協定に調印し、両国間の最大の懸案が 解決した。また、「新世紀の全面的な協力」をうたう共同声明にも 調印し、経済、軍事など広い分野で交流、協力を深めていく意欲を 示した。 トンキン湾をめぐる協定は排他的経済水域(EEZ)と大陸棚の 扱いについても取り決めている。漁業協定や原子力の平和利用に関 する協定も同時に調印された。 ルオン大統領の訪中は初めて。ベトナム大統領としては1993 年以来。 両国は91年、中越戦争(79年)以来の敵対関係を終結。多く の領土紛争を抱えつつ、安定した関係づくりに踏み出した。昨年に は、陸上国境を画定させており、陸海ともに国境画定が決着したこ とになる。 両国が領有権を争う南シナ海の西沙(パラセル)諸島、両国を含 む6カ国・地域が領有権を主張する南沙(スプラトリー)諸島など 南シナ海の対立は今後も残るが、今回の進展に、中国側は高い評価 を示している。米国に対抗して、日韓や東南アジア諸国連合(AS EAN)との連携を深め、東アジアの一体化を進めるうえでベトナ ムとの友好関係を必要としているためで、クリントン大統領訪越後 の米越関係に一定のけん制をかけたといえる。中国南部とベトナム の経済発展への効果も期待している。 (12/2523:30朝日) ============================== 李鵬氏、9日からインド訪問 国境問題の早期解決確認へ 中国の李鵬・全国人民代表大会常務委員長が9日からインドを公 式訪問する。両国は、最大の懸案であるカシミール地方の国境画定 問題において、早期解決を目指す姿勢を確認し合う見通しだ。一方 、両国間にはチベット仏教の活仏(生き仏)のインド出国といった 微妙な問題も山積しており、中国側は訪問の目的を「両国関係の安 定した発展の推進」と位置づけている。 中国首脳のインド訪問は1996年の江沢民国家主席以来。中国 はロシア、ベトナムとの国境問題解決に続き、インドとの国境問題 を進展させたいとの姿勢だ。画定作業は、98年のインドの核実験 による関係悪化によって停滞したが、昨年5月に訪中したナラヤナ ン大統領が「早期解決」に合意。中国側は、こうした流れをさらに 進めたいとしている。 一方、中国は、ロシアのプーチン大統領が昨年10月にインドを 訪問し、ロシアからの武器輸出拡大が打ち出されたことを強く意識。 周辺国との善隣友好関係を外交方針の第一に掲げる中国にとって、 インドとの安定的な関係構築は、迫られた課題となっている。 (1/720:18朝日)