391−2.反原発の論理



原発はどうなる?        YS 

見逃しておられる方が多いと思いますが、今年の11月30日に米
エネルギー大手エンロンが青森の六ヶ所村に液化天然ガス(LNG
)を燃料とする出力二百万キロワットの発電所を建設することを発
表しました。2007年ごろから東北、首都圏の需要家に電力会社
を下回る料金で供給する予定で、将来は四百万キロワットまで増強
する構想もあるようです。 

電力自由化の波が押し寄せてきているわけで、平均的に見るとLN
G火力のコストは6円kWhで原発のコスト9円kWhよりお買得
になります。運営するのはエンロンとオリックスが出資するイーパ
ワーで六ヶ所村以外にも大牟田市や宇部市、北九州市、高知に火力
発電所の建設を計画しています。 

エンロンという会社は日本の方はほとんど御存じないと思いますが
、1999年全米フォーチュン500では第18位にランクされて
おり、たった15年で急成長した世界48ケ所に拠点を持つ「エネ
ルギーの巨人」です。ブッシュ候補にも多額の資金提供をしており
、政権入りも噂されています。 

そしてなによりも注目は核燃料サイクルの拠点である六ヶ所村に建
設することです。巨額の債務を抱えて経営が行き詰まったむつ小川
原開発計画を引き継ぐために新会社が設立されますが、この諮問会
議座長に経団連会長でありNTTの社外取締役でもある今井敬氏が
選出されています。またNTT自体も東京ガス、大阪ガスと共同で
電力小売り事業を開始します。おそらく時期的に考えてもNTT接
続料問題と関連した何らかの取引が行われたとみてもいいかもしれ
ません。

現在3割にとどまっている電力自由化の対象が拡大することになれ
ば、おそらく原発は破れ去るしかない。アメリカの強烈なプレッシ
ャーの中、政官、電力会社に激震が走っているようです。 
とうとう動き始めたようです。それでも放射性廃棄物はなくなるこ
とがありません。おそろしいことです。 
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コスモス
 まずは訂正を。前回の温排水の排出量について、正確と思われる
情報を見つけました。相当古い本でしたので、今でもそうかは分か
りません。高校の頃の愛用本です。
 「・・・100万キロワットと呼ばれている今日一般的となった
原発の場合には、1秒間に70トン、1日では600トン、1年で
は20億トン・・・(別冊宝島81 『決定版原発大論争!』より
。懐かしい!)」1秒に70トンという数字がどれくらいなのか、
これまた資料が無いので分かりません。すみません。

 『安全な原発に未来は無い 第三回 核管理社会とその弊害につ
いて』
 原発は他の業種に比べ、高度の秘密保持を必要とします。核燃料
の運搬に際してテロリストに強奪されるのを防ぐため、軍艦による
輸送船の護衛、輸送ルートの非公開。核技術ももちろん重要な機密
事項です。

 高校以来、久しぶりに反原発問題をまとめるに当たって、相当思
い知らされた事があります。社会は別に変わったところはありませ
ん。十年以上経つのに相変わらずというのはやはり問題ですが、私
自身の主義の変化により、これほど問題に対する考え方が変わると
は思いませんでした。
 核物質の危機管理についての私の意見ですが、これだけ原発が乱
立している現状からして、武装原子力警察の設立はやむをえないと
思うのです。もちろんここで問題になるのはその権限でしょう。

 その任務の性格上、原子力警察の権限は非常に強く、核テロリス
トの摘発のために通常警察以上の権限を有する必要があります。
1976年、イギリスで原子力庁法により、武装原子力警察がすで
に合法化されています。問題なのはこの武装警察にたいして責任を
負うのは原子力庁のみで、大臣は直接的責任を負わないことになっ
ているそうです。
 これほど国家にとって都合のいい武装組織はありません。プルト
ニウム管理のためにはいかなる不当弾圧も正当化できるからです。
核戦争の威圧は外国のみならず、自国民弾圧にも利用できます。
 反原発運動に携わる者は全て調査対象となり、そのプライバシー
からスキャンダルまで、あらゆる情報が収集されるでしょう。対テ
ロリストの諜報機関が、国民の情報を調べることなどたやすい事で
す。政治に関しても、あらゆる面で武装警察は利用できるでしょう。

 「そんなことはしない」と推進派は反論されるでしょうが、私が
政治家であれば徹底的に利用するつもりです。また、諜報とは反対
勢力を調べる事はもちろんですが、味方を調べることも同等に重要
です。となると、原発推進派の人々でさえ、その有力者の情報すら
収集される。その過程で、財界有力者のプライバシーが外国企業の
手に渡れば、それだけで国内産業の外資支配も有り得るわけです。
これは推進派にも、原発を考え直させるきっかけになるのではない
でしょうか?
 日本でも通信傍受法も成立しました。枠組みを決めておく事は必
要です。左翼のような反対をするつもりはありませんが、その気に
なれば核管理への道など簡単だと言えます。

 早々と結論を申し上げます。『原子力という高度過ぎるテクノロ
ジーが、管理社会の強化に繋がる。それはどうしても避けられない
道です。そしてそれは簡単に悪用されかねない。諜報が敵味方を同
等に扱う必要がある以上、日本の有力者のスキャンダルを容易に他
国が利用できる恐れがある』。
 繰り返しますが、核技術の守秘義務は他の産業と比べるべくもな
く、その破壊力同様、その機密すら、人類は持て余しているのです。

 話は変わりますが、諜報機関を政治学ではどう捉えているのでし
ょう? 論理的に扱っておられるサイトがあれば行ってみたいので
すが。私見では、「諜報とはスキャンダル探しと『相手が必要とし
ているもの』を調べる事」だと考えます。
 例えばなんの予兆も無しに外国からの侵略を受けたとします。そ
のときに必要な防衛軍事力があればいいですが、それでも侵攻を受
けた際、相手の軍を自国領内に入れてしまうのは避けられません。
戦争をいかに早期に、少ない出血で済ませられるかは、「相手国が
何を求めて侵攻してきたのか」が分からなければならない。それは
石油かもしれませんし、食料かもしれない。通貨危機の帳尻合わせ
なら分かりやすいですが。
 軍事力で敵軍を領内から追い出しても、それで戦争が終結した事
にはなりません。こちらが報復のための侵攻をしなくても、戦争状
態のまま敵国は軍の再編をし、可能な限りの空爆を行うでしょう。
戦争終結には、不条理な事ですが、侵攻してきた敵国の「欲しいも
の」を何らかのかたちで与え、「これで戦争を終えましょう」とい
う言質、停戦協定を結ばなければならないのです。

 攻勢終末点、その国の軍事力が作戦活動できる限界点を知る事。
これは経済にも言える事ですが、では原発問題における、推進側の
攻勢終末点はどこなのでしょう?

 原発廃止は私の悲願ではありますが、現実的に見て、まずは妥協
点を模索する事、そこからうまく推進熱を巧妙に冷ましていくこと
。それが非常に重要だと思うのですが、本当に彼らが行き着こうと
する先はどこなのでしょう? 原発は大量消費社会、という枠組で
はくくれない問題です。これは私も未だに結論が得られていません。

コスモス 
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コスモス
 C・○・レモンのCMに出てくるシンプソン一家(トンプソンだ
っけ?)、あのお父さんの職業はなんだか知ってますか? 笑える
事に原発労働者だそうです。コントロールルームの快適な環境で働
く仕事なのか、炉心近くの清掃、整備労働なのか、あるいは廃棄物
処理場で働いておられるのか・・・・今回は原発労働者について御
説明します。

 「安全な原発に未来は無い 第四回 原発労働者」
 原発労働の表と裏の大きなギャップ、そしてその環境の劣悪さは
すでに反原発のサイトや本に詳しく書いてあります。ここは国際戦
略フォーラムですので、なるべく国際問題から外れないように気を
つけております。今回も別の切り口から『安全な原発』を模索して
みたいと思います。

 まあすぐに予想できるものとしては、「外国人労働者を原発で働
かせる」という問題でしょう。安易な外国人受け入れ問題への警鐘
にも使えますが、彼らを日本の原発で働かせる以前に、ウラン採掘
現場においてはラドンガスによるひどい放射能汚染に労働者がさら
されているそうです。
 余談ですが、気体状の放射性物質は、通常の原発から年間4万キ
ュリーも放出されているそうです。こればかりはドラム缶に積めて
おくことも出来ず、垂れ流しです。
これなら光合成で分解できる二酸化炭素の方がましですね。

 昔はアメリカ製の原子炉を使っていたため、日本の原発に外国人
労働者が危険区域の作業をしていたそうです。外国人の就業はすで
に前例があります。
 これは技術指導、という見方も出来ますから措くとして、将来予
想される大規模な移民流入に際して、彼らが原発で働く事は十分予
想できます。電力会社も法を犯すわけにはいきませんから、今のと
ころ不法入国者を雇ってはいません。しかし日本政府が移民受け入
れの制限を緩和するなら、「三分で一万円もくれる」危険区域の仕
事を志願する外国人も現れる可能性があります。彼らは故郷にそれ
こそ身を削って仕送りを続け、文字通り『青白く』輝ける星になる
のでしょうか? ふざけてはいけませんね。

 こうした危険作業について、国際問題になるでしょうか? そう
してくれたら原発への批判にもなるのですが、途上国の方がもっと
ひどい労働があると思いますし・・・・国際連盟設立の際に、人種
平等条項を連盟規約として入れようと提案したかつての日本人はど
こに行ったのでしょう? 
 上記の問題は、私が購読しております、『Japan On the
 Globe(160)  国際派日本人養成講座(編集長・伊勢雅臣氏
)』『我々は近代世界システムの植民地主義と人種差別主義に戦い
を挑んできた国民である』という論文で取り扱われております。こ
のフォーラムは素晴らしい論文ばかりです。

 引き続き、同フォーラム 2000/6/18号 『労働移民の
悲劇』も引き合いに出させていただきます。
 移民の受け入れについての議論の中には、「日本の少子化が進む
将来、3K作業者が少なくなる。だからそういう仕事を移民にやら
せればいい」という乱暴な意見があります。上記フォーラムの論文
をお読みいただければ、漠然と移民問題を捉えていた方は良い参考
になるでしょう。

 外国人労働者に話を広げたのは、3K労働について深く突き詰め
るためです。そもそもこうした敬遠される仕事ほど、必需性が高く
、社会的偏見を受けやすいものです。
 困難はありますが、こうした雇用をうまく増やすべきと思うので
す。労働条件を相当に改善すれば、こうした職を敬遠する傾向は減
り、良い職を求めたがる裕福な先進国民でも偏見なく受け入れられ
ると思うのです。

 「では、原発は?」と言われると、まず「その仕事をしたいか?
」という自問より、「自分が雇主だとして、部下をその危険な仕事
につかせたいか?」と己に問うべきだと思うのです。

 国際戦略フォーラムで、性善説に基づいた結論を出すのは、私と
しては避けるべきだと考えております。国際政治の歴史において、
原発はどういう意味付けがなされるのでしょうか? 労働における
歴史的意味付けは?

 そこを考えれば考えるほど、旧共産主義国がなぜ労働の本質にお
いて、原発が持つ意義を突き詰められなかったのかと疑問を抱きま
す。もちろん現実、彼らが言うところの「帝国主義との対決」にお
いては、そうした面を犠牲にせざるを得なかったという言い訳があ
るでしょう。しかし平和な日本の共産主義者なら、論文ぐらいは残
せるでしょう。彼らがどう結論しているのかぜひ知りたいのですが
・・・・
 原発のみならず、労働の価値が医者も道路清掃夫も同じ給料とい
う原則を持つなら、労働の貴賎についてどう結論付けているのでし
ょう? 「人民のための奉仕」なのでしょうか? それでは労働の
機会についての議論はもっと重要なものになります。共産主義者が
収入を問題とせず、自分が望む職種を自由に選び始めたらどうなっ
ていたのでしょう? やはり弾圧ですかね。

 今回はなかなかうまく結論に導けません。「安全な原発・・・」
を議題にしているため、「危険でない原発労働」など考えられない
からです。そもそもウラン鉱山での安全が確立されていない以上、
最初から論理は破綻してますね。
 強引に結論を出しますと、「安全な原発労働などあり得ない以上
、まともな雇主であれば、部下をそんな危険に追いやる事など非人
道的だと分かるはずで、原発産業に就職したが最後、そこでは人間
性を捨てることが求められる。そして他の部署の社員について深く
考える事もタブーになる」ことから、「原発に未来はない」と結論
させていただきます。
 人は何のために働くのか? 将来の移民が原発で働きたいと希望
するとき、私達はなんと言ってあげればいいのか。今回は問題が大
きすぎて、私にはうまく論理を扱えないようでした。反省します。


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