NO.368−3について 質問2.「発布」と「公布」の違いについて。 大日本帝国憲法では、「発布」を使い、決して「公布」を使わない。 翻って、日本国憲法では、その逆になる。発布と公布は、広辞苑に よれば言葉の差異はない。そればかりか、広辞苑で「発布」を引く と、公布と同じ意味であると記されている。両者に言葉の意味にお いて差異はあるのか。そして、なぜ各々の憲法によって使い分けさ れているのか。 久保です。 「発布」も「公布」も同じ意味です。ただ、私が思いますのに、 明治憲法で「発布」が使われたのはそれが従来の律令的憲法典 ではなく、「欧米風の憲法典(近代立憲主義的憲法典)として最初」 の公布(宣布)だったからだと思われます。 ついでですが、現行憲法は、学界では「民定憲法」典とみる見解もあ るが、それは全く誤りです。事実上「マッカーサー憲法」と称すべき ものです。 しかし、その制定手続きは、あくまで明治憲法の改正手続きの第七 十三条に従っているので、現行憲法の場合、「公布」としたと思われ ます。現行憲法は形式的・手続き上「欽定憲法」です。事実、現行憲 法草案要綱発表には「勅語」が付され、マッカーサーもそれに「欣快 の意」を表明している。 また現行憲法の冒頭には「上諭」が付された。 「朕は、日本国民の総意に基づいて、新日本建設の礎が、定まるに 至ったことを、深くよろこび、枢密顧問の諮詢及び帝国憲法第七十三 条による帝国議会の議決を経た帝国憲法の改正を裁可し、ここにこれ を公布せしめる」 こうして天皇によって現行憲法正統化が建前上図られたのです。 水廼舎 こと 久保憲一