370−1.オーストリアのジェンダー問題に対して



 柳太郎 
 チッペルレゆり様、 初めまして。 

2重国籍問題ならびにジェンダー問題と、大変関心を持って読ませ
ていただきました。特にオーストリアのジェンダー問題に関しては、
歴史的な背景も加えつつ述べられておられたので、大変参考になり
ました。 

その中で二つ疑問が生じましたので、私見で結構ですのでお教えい
ただけますでしょうか? 

1. 徴兵制に関して 
No.368より 
『また、オーストリアには9ヶ月の兵役がありますが、軍隊に行け
ば、無線技術や大型トラックの運転、軍用機の操縦などが選択で習
える特典があるので、これも数年前のことですが、女性が軍隊に行
けないのは「女性差別」だとして、女性から兵役志願がありました。
結局、女性には兵役の「義務」はないが、希望すれば男性と同じよ
うに兵役につけることになりました。』 

ここで疑問なのは、オーストリアで女性も「戦争の際は戦いに行く
べき」といった議論があったかなかったかです。この質問の背景は、
先日(といっても結構前のような気がしますが)韓国でも同じよう
なことがあったからでして、女性のあるグループが「男性が兵役に
つくからといって雇用の際に優先されるのはおかしい。」と訴え出
たところ、男性側から「女性が兵役につく義務がないのはおかしい
。」と逆に訴えられたということがありました。(その後の成り行
きがどうなったかは知らないのですが・・・) 

日本でも防衛大学が職業訓練所みたいなもので、湾岸戦争時の防衛
大学の学生へのアンケートで、自国のために戦うことに消極的な者
があまりにも多くてどうしたものかと物議をかました記憶がありま
すが、結局「就職」のための兵役なのですかね。 

2. 離婚後の女性の立場に関して 

No.368より 
『ただ、女性の社会進出となると、もともとローマカトリックのイ
タリアが近いため保守的なカトリックの勢力が強く、あまり目覚し
い女性の活躍が見られません。・・・ 能力とは無関係に「オーストリ
ア人失業者を優先する」のと同じ傾向で、「扶養家族のいる男性を
優先する」ということでしょう。』 
No.369より 
『オーストリアは離婚率が非常に高いのです。3分の1以上です。
法律的に結婚の届けを出していない夫婦も多いので、実際の離婚率
は50%近いのではないかと思います。これは、離婚した女性や未
婚の母が社会保障を受け易く、自由に働きやすいのに反して、一定
収入のある夫と子供を持つ家庭の主婦に、ほとんど活躍の場と収入
を得るチャンスがないことに起因するのだと思います。・・・ 結婚
前から働き続けている女性は、すべてを保障されますが、働いたこ
とがない家庭の主婦が子育ての後に働こうとすると、たぶんチャン
スはゼロです。田舎には学校さえありません。』 

以上から考えると、国際結婚をして離婚する場合、女性の立場が極
端に悪くなるように感じるのですが、いかがでしょう?オーストリ
アに国籍をもつだけで解決する問題なのでしょうか?そのようなこ
とで悩んでいる女性は結構いるのですか? 

イギリスの例ですが、離婚した女性はある程度生活を保障されるよ
うで、子供がいる場合は一戸建ての家まで与えられるケースが結構
あるようです。そこに目をつけたイギリス人オヤジは、わざと移民
してきたアジア系(中国などの貧困国)の女性と結婚し子供を作っ
たあとに離婚し、その相手の女性に家を政府から与えられるように
して愛人を作っているようです。金持ちの医者などにそういった人が
多いと聞いたことがあります。(ですので、イギリス政府はこの問題
に結構頭を悩ませているようです。あまり表立った話しにはなってい
ませんが。) 

以下は私の意見を書かせていただきます。 

No.368より 
『ヨルグ・ハイダーのような異色な政治家が突然現れて人気を得る
のも同じような現象と思われますが、今後このような傾向や社会は
、どのように変化していくのでしょうか?』 

結局、ヨーロッパの場合EUに取り込まれることは国家主権を失うこ
とにつながり、労働力の移動が自由に起これば(形骸化した)国籍
を持つ失業者たちは政府に対して不満を抱くでしょう。政府が何もで
きないと悟れば、自分達でナショナリスト的な運動が起こるのは避
けられません。これを歴史の教訓と人間の理性により抑えられるか、
又は経済システム自体を変えるかが解決のカギとなりそうですが、
後者はあまり期待できないでしょうから、前者にある程度期待する
しかないように感じます。 

ドイツ(の旧東独地域)やオーストリアの排他的極右連中の動きは
特に警戒しなくてはなりませんが、と同時にYSさんが指摘されるよ
うに日本でのこのような動きにも注意しなくてはなりません。 

No.369より 
『どの社会にもよい面と悪い面があります。よい面は見習い、悪い
面は改めたいものですね。単にジェンダーの問題というよりは、女
性も男性も外国人も障害者も差別なく自由に活動できる社会であっ
てほしいと思います。』 

ジェンダーの問題自体が人権や差別の問題の一部をなしていますか
ら、これらを考えることで外国人に関する人権問題も考えることに
つながるかもしれませんね。しかし、これらの問題を無くすには、国
家間の経済格差といった「南北問題」が大きな障害をなしているよ
うに思います。排他的ナショナリズムが高揚すれば、これを解決する
手段も失われかねません。残念ながら現状から見て、先はあまり明
るくないように感じます。 


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