369−2.オーストリアのジェンダー問題その2



 チッペルレゆり
   
 オーストリアは離婚率が非常に高いのです。3分の1以上です。
法律的に結婚の届けを出していない夫婦も多いので、実際の離婚率
は50%近いのではないかと思います。これは、離婚した女性や未
婚の母が社会保障を受け易く、自由に働きやすいのに反して、一定
収入のある夫と子供を持つ家庭の主婦に、ほとんど活躍の場と収入
を得るチャンスがないことに起因するのだと思います。 

結婚前から働き続けている女性は、すべてを保障されますが、働い
たことがない家庭の主婦が子育ての後に働こうとすると、たぶんチ
ャンスはゼロです。田舎には学校さえありません。 

オーストリア国籍を持ち、看護婦資格を持っていても、看護婦とし
ての需要がなければ、掃除婦の仕事しかありません。事務員や店員
になるには、普通商業学校などを出ていなければなりません。「つ
ぶし」の効かない保守的な社会は、歴史的なギルド制(徒弟制度)
の名残でしょうか?若い時に選び、ずっと学んできた分野でなけれ
ば仕事が得られないような「資格」「専門」の仕組みです。ある意
味では、「熟練者」を保護する制度でしょうが、後から来た人は能
力があっても場所がなければ排除されます。 

こういう面に関しては、学校教育とは無関係の分野でも仕事があり
、働き始めてから仕事を習うという日本のシステムのほうが柔軟性
があってよいように思います。主婦のアルバイトもいろいろな可能
性があって自由に働けますし、社会自体が面白みがあると思います
。ただ、日本の主婦は、老人の世話や、家事、子供の学校のPTA
、町内会の義務など、あまりにも雑用が多くて時間的制約を受けす
ぎていますよね。 

こちらの生活では、そのような義務は少なく、多くの家庭では男性
も5時前には家に帰ってきますし、週休2日だけでなく金曜日も半
ドンだったりしますし、夏季休暇は1ケ月くらいが普通。病気欠勤
は正式の有給休暇とは別個に認められるなど、男性の自由時間も多
いです。いきおい、子育てを手伝う男性が普通で、赤ちゃんのおし
めを変えたりするのは女性よりも上手な男性がいっぱいいますし、
乳母車を押してスーパーで買い物してたり、散歩してたりする男性
はごく普通です。一緒に子育てを楽しんでいる感じもします。時々
台所に立ったり、ゴミ捨てを手伝ったり、選択ものを干したり、ア
イロンかけをしたり、、、奥さんが赤ちゃんの世話で忙しかったり
、奥さんも働いている家庭では、まったく普通の光景です。 

しかしその半面、難民家族や不法滞在家族などでは、失業、アルコ
ール中毒、家庭内暴力、住居問題、などなどの問題が山積みで悲惨
な状況。オーストリア人家庭でも、幼児虐待、性犯罪、薬物中毒、
自殺、離婚、子供の喫煙などなど、ベールの下には多くの問題が隠
れているようです。ごく普通で身近な家庭でそのような問題があっ
たりするので、びっくりします。家庭を顧みず、毎晩飲みに出かけ
る男性も結構多いようです。 

どの社会にもよい面と悪い面があります。よい面は見習い、悪い面
は改めたいものですね。単にジェンダーの問題というよりは、女性
も男性も外国人も障害者も差別なく自由に活動できる社会であって
ほしいと思います。 


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