359−1.得丸コラム



得丸です。

今朝から富山に来ています。今月はまだ3泊しかしていない、アパ
ート代がもったいない。
英文毎日(Mainichi Daily News)でずっと前から続いているコラムに
、Jack AndersonのWashington Marry-Go-Roundというのがあります。

今朝(11月20日)の記事は、"Faithless electors could swing 
US vote"というもので、共和から選ばれた選挙人のうち3人がゴア
陣営に寝返れば大統領選挙の結果は違ったものになるということで
した。

ちなみにこれまで歴史上では9人の選挙人が、各州の投票結果を裏
切って別の候補に投票したことがあるそうです。
実際にそんなことが起きるかどうかは別として、面白い指摘ではあ
りませんか。
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かねだと申します。
tokumaruさんが00.11.20 11:07に書きました:
>ちなみにこれまで歴史上では9人の選挙人が、各州の投票結果を
>裏切って別の候補に投票したことがあるそうです。

これって,結局裏切りは無効であるという判決が出た,という話を
ニュースか何かで耳にした記憶があります。
よって,今回の選挙で代理人が裏切ることはない(あっても,意味
はない)と思います。
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Re: 国際戦略コラムno.356-2読者の声と質問
得丸です。

日本に宗教対立があるか、ないか、議論してみると面白いと思いま
す。
そもそも日本人を宗教の違いによって、仲間分けできるかというこ
とも議論する価値があるでしょう。

たとえば、宗教の違いによって結婚できなかったり、けんかがおき
たり、しているかどうか。宗教の違いによって、着衣や髪型が違っ
ているかどうか。食べるものが違っているか、住む地域が違ってい
るか、、、、

日本の宗教地盤の特徴として、キリスト教人口が1%から増えない
ということもあります。どうしてそうなのか、考えてみる価値はあ
るのではないでしょうか。

「神学」という学問は、論理(言葉、概念)でしかない一神教の神
の存在をめぐる学問であり、日本の神道の場合は神学そのものが存
在していないわけです。

私はよくヨーロッパ人に、あなた方は一神教のデカルト主義者だが、
我々日本人は違う。日本人は神(一神教の神)を信じないし、けっ
してデカルト的な論理を信じない、といいます。

今たまたま富山の事務所にイスラエル人の客がきていて、食事のと
きとかに、いろいろと宗教のことやパレスチナ問題も話題にしても
いい雰囲気ですので、面白い話が聞けたら、またご報告します。
(2000.11.22)
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得丸です、

深沢2丁目の都立大学跡地に立っているシイの木の嘆きが聞こえて
きました。
石原知事や東京都のお役人さんたちやデベロッパの人たちにはこの
声は届かないでしょうか。
共生という言葉には、それなりの感性と行動が伴わなければならな
いと思います。

< シイの嘆き >
私は、シイの木です。
来月、この小さな地、あなた達が世田谷区深沢2丁目と呼ぶ所、あな
た達が東京都と呼ぶ何かが、公売と呼ぶ行為を通じて、すべてを
破壊しようとしている、空き地にいる、シイの木です。

ここにいるものは、みな殺されると、小鳥たちが知らせにきた。
彼らは今、大急ぎでヒナたちを育てている。
次の棲家を求めて旅立つために。

私は翼を持たない。
だから、ここで待っている。あなた達の与える死を。

私たちは人間の言葉を持たない。
それでも、精一杯伝えてきた。私たちも生きていることを。
あなた達に、物言わぬものの叫びは届かないのか。

私の根元に、リスが住んでいた。
かつてあなた達に愛され、捨てられたものだ。
私は彼に与えた。私の実を。
彼は、私を食べ、地に埋め、彼と私は共に生を分かちあった。
私は、彼をなぐさめたが、救うことはできなかった。
彼は、永遠に来ない妻を呼びつづけ、やがて横たわった。
私は彼の命を受け、より多くの実を結んだ。

今、私の根の先に、真っ白なセミの子がいく匹もいる。
私は彼らに与えている。私の水を。
あのおさなごたちに、何と言えばいいのか。
次の夏が来ないことを、
私が切り倒されると同時に彼らの命も消えることを。

わたしはあなた達にも与えた。
かつて、ここが若い人達の集う場だった時。
あなた達は、部屋と呼ぶ閉じた空間でいさかい、ここにやってきた。
私の木陰に寝ころび、私が贈る風に身をゆだね、
いつか手を結び、去っていった。
あなた達は、物言わぬものの贈り物に、気づかないのか。

この土は、すべての地に、
この水は、すべての海に、
この風は、すべての空に、
命に、つながっている。
境界などない。それはあなた達の作り出す幻。

あなた達が聴診器と呼ぶもの。
あれはいい。
わたしの体にあててごらん。
わたしの鼓動が聞こえるはずだ。
水を汲み上げ、土を吸い上げ、実を結び、風を生む音だ。
わたしたちも生きている。あなた達と共に。

せめて、ひとたびでも別れをつげに来てはくれないか。
あなた達の子と共に。
私の鼓動を聞いてはくれないか。
そして、この空き地に散らばるたくさんの実を拾ってほしい。
彼らは、わたしたちの命の証。

いつか、新しい地に埋めてほしい。
あなた達と共に生きる日のために、わたしは再生しよう。

鉄の壁がこわいか。
でも、あなた達には足がある。
乗り越えることはできるはず。

わたしたちは、みな、共に生きている。
そうは思わないか。
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どうして銀杏の木は一票を持てないのか?
1 ストーブリーグ一番の話題

 日本の国会の内閣不信任案騒動は、日本シリーズも終わり、九州
場所も楽日を過ぎて、この冬一番のストーブリーグの話題を提供し
てくれた。

「政治とはプロレス(と同様にヤラセ)である」と大学の授業でなら
ったものの、最近はプロレス並みに落ち目かもしれないと思う。役
者不足、演出不足で、最大の問題は、かつては裏舞台(料亭)で考え
ていたはずのこの国の将来のことを誰ひとりとして考えているよう
に見えないことである。

 あれが(といってもテレビもラジオも新聞もないので何が起ったか
は毎日インタラクティブからでしか把握していないのだが)ヤラセで
はなく、裏も表もない演技だったとしたら、まったくの茶番、猿芝
居であり、視聴者の政治離れはますます加速し、世間はますます虚
無的になるだろう。

 欠けているのは、ロマンである。この国の現状と未来がかかえる
さまざまな問題を理解しようとする意欲であり、感受性であり、想
像力であり、知性であり、行動力である。

 それらの問題と政治家自らが一体化して、問題を解決へ導くのが
本来の政治のあるべき姿ではなかったか。
 富山にあるわが庵野山房が面する公園のポプラは、折からの強風
と雨ですっかり裸木になってしまった。木はいいなあ、毎年こうや
って新しく生まれ変わって、やすらぎを与えてくれる。

 それにくらべて人間たちは、救いようもなく自分勝手で、目先の
自分の利益に釣られて、茶番劇を続けている。
 そんなことを考えていると、電話が鳴った。

2 都会の潤いである木一本守れなくては、
                  一票は糞の役にも立たない
女「あなた、大変よ。裏の都立大学理工学部跡地が、来月公売にか
けられるんだって」

 かつて世田谷区深沢2丁目1番地には、東京都立大学理学部・工
学部があったのだが、10年前に大学が八王子に移転してからは、高
い鉄の塀で囲まれて、一般の立ち入りができない状態が続いていた。
 敷地は4ヘクタール近くあり、人が立ち入らないこともあって、
大きな木は鳥たちの楽園になっていた。
 かつてここは世田谷区の第三清掃工場にされかけたのだが、付近
の住民の反対運動によってつぶされた経緯がある。

男「財政難といわれている東京都が、てっとり早い現金収入源とし
て目をつけたというわけだ。で、今度は反対運動は起きているの」

女「それが問題なのよ。まだ公売の事実すらあまり知られていない
の。たまたま角の不動産屋さんと話をしてそのことを教えてもらっ
た加賀さんが、うちのマンションの管理組合の理事に相談したそう
なんだけど、みんな反応がないんだって」

男「清掃工場だったら、清掃車の出入りやばい煙など目にみえる公
害があるけど、遊休地が民間のデベロッパに売却されることに対し
て反対運動はできないだろうね」

女「でも、あれだけ沢山の木があって、あれだけたくさんの鳥たち
が巣を作っているのに、それはどうなるの」
男「おそらく木はみんな切り倒されるんだろうね。代わりに色のつ
いたレンガかなにかが敷き詰められて、ところどころにか細い木が
新たに植え込まれ、座るところのない広場では噴水が水しぶきをあ
げている、といった光景が想像できるよ。それが日本の建築家たち
の限界だ」

女「切り倒される木がかわいそうじゃないこと」
男「殺される木の痛みがわかる政治家なんて日本にはいないよ。都
のお役人だって、そんなことはちっともおかまいなしさ。なにもこ
れは今に始まったことじゃない。
 みなさんは近くのほかの公園があるから、まだ幸せなほうですよ
と言われるのがおちさ」

女「あなたって冷酷無比ね。」
男「単身赴任で富山にいて、できることなんて限られているよ。山
下政経塾の松井さんはどうだい。彼なんて行動を起こすタイプじゃ
ないのか」
女「加賀さんは手紙を出したそうなんだけど、返事はないんだって。
 マンションの中で誰も興味を示してくれないから、加賀さん自体
もどうすればいいのかわからないって悩んでいると奥さんが言って
らした」

男「木の運命に共感することはできても、それを意義ある行動に結
びつけることが難しいんだ。でも行動に結びつかない限り、共感は
まったく無意味といえる。単なるセンチメンタリズムにすぎない。
 結局、戦後民主主義なんていうけど、なにひとつ具体的な行動し
ないで、安逸に繁栄をむさぼるだけのものでしかなかったんだ。い
ったい行動しない民主主義なんてあるんだろうか。

 まがりなりにも国民が主権を握っているというのであれば、必要
なときに決断し、行動し、責任ある態度を取るのが民主主義なので
はないか。

 たしかに僕たちは、連合赤軍事件や日本赤軍事件、あるいは三島
由紀夫事件を通して、思慮の浅い行動主義がいかなる悲劇あるいは
茶番に結びつくかということを幼心に焼きつけられた。あれは強烈
な刷り込みだったね。一連の事件のために僕たちは、行動する牙を
抜かれてしまったといえるかもしれない。

 で、この始末だ。目の前にある木一本の運命すら、心無い役人や
利益至上主義のデベロッパから守ってやることができない」

女「今から塀の中に忍び込んで、香草や野草の種をまいてみようか
。そしたら来年の夏には、きれいなお花畑になって誰もつぶせなく
なるかもしれないわ」

男「公売は来月なんだろ、ちょっと遅すぎるね。
 もっと早くそうするべきだったのかもしれない。緑の少ない東京
にあっても、緑は増やすことができるということをみんなに知らし
めてあげればよかったんだ。

 文明とは、つまりそういうものだ。人間の手でよりよい環境を作
り出すこと。
人間がその気になれば緑は増やすことができるということを、肝に
銘じなければならなかったんだ。
 明治や大正、あるいは昭和でも戦前にはそういうことは常識だっ
たんじゃないか。明治神宮の森だって、何もない練兵場跡地に造っ
た完全に人工のものだからね。

 ところが戦後はひとつとしてそのような試みは行われていない。
戦争に負けたということは、文明を作り育てる心を失ったというこ
となのだろうか。
 石原知事に手紙を書いてみる?」

女「読んでくれるかしら。」
男「まあ無理だね。そもそも知事の目の届くところまで行き着くか
という問題があるね。きっと知事に届く前に、握りつぶされるだろ
うね。
 それにこの間のゴミ処分場の強制執行のときの態度を見るかぎり
、彼は問題に全身でぶつかって、自分の力でそれを解決しようとい
う気概に欠けるような気がする」

女「じゃあ、私たちは目の前の緑地が切り倒されていくのをなすす
べもなく見ているほかはないというの。鳥たちが巣を終われていく
のを、黙ってみているしかないの。

 ああ、銀杏の木が一票を持っていたら、みかんの木が一票を持っ
ていたら、殺されなくてすむものを。」

男「それをいうなら、僕たちのもっている一票なんて、糞の役にも
立たないというべきだよ。
 加賀さんの奥さんといっしょになって君の気持ちを手当りしだい
にぶつけてみるんだね。もしかしたら誰か共感してくれて、いっし
ょに行動を起こしてくれるかもしれない。

 ひとりが二人になれば、二人はすぐに四人、十人と増えていく。
地道に仲間を増やしていく以外に方法はないと思うよ」

(2000.11.21 得丸久文)

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