344−1.フランス憲法との比較



NO.333−2、憲法について:川崎
憲法改正について、フランス憲法と比べながら、私なりに思ったこ
とを、書かせていただきます。

フランスは、フランス革命以来、5つの憲法を制定してきた。現在
の憲法が5番目、それにより、フランス第五共和国と呼ばれる。
現在の憲法は、ド・ゴール政権下、52年に制定された。憲法は、
国会によって可決される、Loi constitutionnelle(憲法に準ずる法
律) によって改正される。解釈に関しては、Conseil constitutionnel
(憲法審議会)によって違憲審査がなされます。第五共和制の憲法は
何度かLoiConstitutionnelle によって改正されている。具体的には
62,74,76、92、93(7月、11月)、95,96,98
年の改正があげられる。
その背景には、
改正を予定されていたものと(1)、
変化する国際情勢に対応するものが考えられる(2)。

1.もともと改正が予定されていたものに関しては、たとえば、海
外県(旧植民地)の地位。第二次世界大戦後、植民地独立化が進み
、フランスも今まで抱えていた植民地を手放す体制をとらざるをえ
なくなった。そこで、46年憲法では連邦主義をとっていたところ
を、52年では、よりゆるやかなフランス共同体とし、旧植民地に
、独立かとどまるか選択させることにした。95年の改正文では、
その条文を削除し、その期間を終えた。

2.変化する国際情勢に対応するためとして、とくにEU統合に対
するリアクションが考えられる。地方主義化を奨励するEUに対し
て、フランスは地方分立を嫌う体制をとっているため、国家の統一
性の確認のための改正が、1992年のLoiconstitutionnelle。改正第
二条は「フランスの言語はフランス語のみとする」と定め、他の地
方言語の公用語を、あらためて否定している。(フランスは、他の
少数言語について一切触れていない、EU内の唯一の国家。それく
らい、中央主義が強い。)この憲法改正は、国民の統一性というフ
ランスの方針を改めて確認し、コルシカ等、独立運動派をけん制す
るため。

このように、フランスの憲法は、かなり頻繁に変更される。しかし
、フランスの法に対する体質は日本とかなり違う。まずはその多様
性。社会の前提を違うものの集まりとして、それを法的にまとめる
こと。そして、それが、憲法の原則の一つになっている(第一条)。
事実、フランス社会は、植民地問題や移民などでかなり流動的で、
「フランス国民」たる資格の決定は、実はなかなか難しい問題なの
だ。

次に日本の社会と明らかに違うのが、「権利」に対する意識である。
2年前、高校生の授業課程の変更を要請するデモが全国的に盛んに
おこなわれたが、この事実からも分かるように、子供からして権利
は要求して勝ち取るものという意識が強い。(テレビ討論で、高校
生の代表が大臣と対等に討論していたのは、印象的だった。)つまり
、法は絶対ではなく要求次第で変わるものと捉えている。憲法に関
しても、時代に合わないものは積極的に変えていく姿勢が強い。実
定法(ポジティブ・ロー)と、自然法(ナチュラル・ロー)という分
け方があるが、フランスのポジティビストな姿勢に対して、日本は
自然法的な考えが主流なのではないか?

法に対する考え方に違いがあるため、外国では憲法改正を頻繁にす
るから日本も、というのは理由にならないと思う。しかし、個人的
には、憲法は、国家という組織のルールを決めるものだから、時代
の変化の要素を積極的に取り入れる議論がなされてもよいと思う。
現実的にも、国家の方針は国際社会の変化にあわせて調整されるも
のではないだろうか? 見直しもない無理な解釈で、一般の人が分
からないような理論を立てるより、きちんと国の姿勢を明確にして
おく方がよいのではないかと思う。

(憲法「改正」か「修正」かということに関しては、言葉の定義の
議論になりそうで、あえて触れなかった。英語でいうと「revison 
(re 再び,vision 見ること)」という意味で、「改正」という言葉
を使った。)

川崎

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