343−1.ロックフェラーの21世紀戦略



YS/2000.11.04
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■ロックフェラーの最新情報

 2000年9月13日、米国3位の銀行持ち株会社チェース・マンハ
ッタンと同4位のJ・P・モルガンは来年1―3月期をメドに合併する
ことで合意したと発表した。世界の金融界では最大規模の合併となる。

 新銀行名は「J・P・モルガン・チェース」となり、チェースはリテ
ールに、モルガンはホールセールと投資銀行業務に強みを持っており、
相互に補完することで21世紀に向けて生き残りを掛けた強力な体制が
実現する。

 米メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズのポートフォリオ
・マネジャー、エルマン氏はこの合併に対して次のようなコメントをし
ている。

「J・P・モルガンは非常に純粋な企業で、そのことに常に優越感を持
ってきたということだ。チェースはマニファクチャラーズ・ハノーバー
やケミカルなどが合併してできた銀行。そうはいっても『ロックフェー
ラー一族の銀行』であるし、ニューヨークで2番目の名門商業銀行だ」

 チェース・マンハッタンは、現在でも金融界では「ロックフェラー銀
行」と呼ばれている。そしてもうひとつの名前が「石油銀行」である。

 石油業界でも合従連衡の動きが加速している。翌10月16日には米
メジャー(国際石油資本)のシェブロンがテキサコを買収することで合
意に達したと正式発表した。

 この「シェブロン・テキサコ」(「カルテックス」の方が馴染みが深
くてよかったのではないか?)の誕生により、欧米石油メジャーは米エ
クソンモービル、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、英BPアモコ、シェ
ブロン・テキサコの四強に集約されることとなった。

 11月3日にはメジャーの仲間入りを狙うロシアの石油最大手ルーク
オイルが米国でガソリンスタンド網を展開するゲティ・ペトロリアム・
マーケティング社を約7100万ドルで買収したと発表した。同社では
「米国市場に本格参入する計画の第一歩」としている。

 上記エクソンもモ−ビルもシェブロンもアモコもロックフェラー系旧
スタンダード石油に属する企業である。

 20世紀は石油の時代であった。21世紀に向けて再編を急ぐ彼らの
中心にロックフェラー・グループの姿がはっきりと見えている。

■原油高のメカニズム

 今年9月に入ってフランス、ベルギー、オランダ、スペインの各地で
農民やトラック運転手が製油所入口を閉鎖し抗議行動を行う。この抗議
行動はイギリスにも飛び火する。リバプール近郊の石油精製所で燃料の
高騰に抗議する農民やトラック運転手90人が周辺の道路を封鎖した。

 日本でも原油高騰の影響がじわじわと広がりつつある。

 ガソリン1リットルの価格が、5年7カ月ぶりに47都道府県で百円
以上となったのに続いて、本格的な需要期を迎える灯油も値上がり傾向
となってきた。昨年、全国平均で40円前後だった1リットル当たりの
価格が10月には47円に上昇し、このままいけば、3年半ぶりに50
円台に乗るところも多いとの予測もでている。原油高は日本の市民生活
を直撃しそうだ。

 9月23日、プラハで開かれた主要7カ国蔵相・中央銀行総裁会議は、
石油輸出国機構(OPEC)に対して「原油価格の低下と市場の安定に
貢献する行動をとることが不可欠である」と、増産を強く求める声明を
発表して閉幕した。

 共同声明は、湾岸危機以来、10年ぶりに原油問題に言及。最近の原
油価格について「世界経済に与える悪影響を懸念している」とし、特に
石油に対する依存度が高い貧困途上国に与える影響を懸念。3000万
バレルの備蓄の放出を決定したアメリカの動きを「歓迎」するとともに、
OPECなど産油国に増産を強く求めた。

 米国は7日の大統領選を前に、OPECが追加増産を即時実施するよ
う強く求めているが、イランなどは「今の原油高は需給関係が要因では
ない」と慎重な姿勢をみせている。

 昨年来からの石油価格の上昇は、OPECの減産とアジアの需要回復
という面も無視できないが、カジノ資本主義の弊害と見るべきであろう。

「世界中を駆けめぐっている巨額なドルと円(一日 一兆数千億ドル)
の実に98%が株式市場での投機に費やされ、実際の生産とサービスの
ために用いられているのはわずか2%にすぎない」
(「いのち・開発・NGO」新評論より)

 このへッジファンドを中心とする莫大な投機資金が、株式・債権市場
の世界的な揺らぎの中で行き場を失い全油種の指標となっているNYM
EX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)に流れ込んで「おもちゃ」
にされているのである。

 10月24日、メジャー最大手の米エクソン・モービルと米3位の石
油会社テキサコが発表した第3四半期(7−9月)決算は、原油相場が
9年強ぶりの高値に上昇したことが貢献して大幅増益となり、そろって
過去最高益を記録した。

 エクソンの特別損益計上前の実質純利益は42億9000万ドル(1
株当たり利益は1.22ドル)と、米企業の四半期ベースの利益として
は史上最高を記録した。テキサコの実質純利益は前年同期比80%増の
8億1500万ドル(同1.49ドル)となった。

 英紙ガーディアンは、原油高による収益で潤っているメジャーが巨額
の自社株買いに乗り出す可能性がある、という内容の記事を掲載した。
同紙は、UBSウォーバーグの調査リポートを引用し、今後5年間のメ
ジャーの自社株買いは825億ドルにのぼる、と報じている。原油高と
業界再編による経費節減で、1110億ドルの余資が生み出されるもの
で、これが配当の引き上げ、増資、設備投資拡大、自社株買いなどに充
当される見通し、という。

 最終的には落ち着くところに落ち着きそうである。これは今に始まっ
たことではない。次項で過去の事例を見ていきたい。

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