342−2.二重国籍について



辻本 武
拝啓 私の拙い論考を取り上げてくださり、ありがとうございます。
 ところで二重国籍についてですが、私の思うところを述べさせて
いただきます。
 日本の国籍法は、1985年の改正により、日本国籍の取得は父系主
義から父母両系主義に変わりました。韓国の国籍法は、私の手元に
数年前の改正案があります。改正が施行されているのかどうか,不
勉強で知るところではありませんが、おそらく施行されているもの
と思います。それを前提に話を進めます。
 拙論にあるとおり、在日韓国人と日本人との婚姻は8割を超えてい
ます。するとその場合の子供は、すべて日本と韓国の両方の国籍を
取得することが可能です。
 出生届を日本の役所に届け出ると、子供は日本人である父または
母の戸籍に登載されて日本国籍となり、外国人登録されることはあ
りません。次に両親が韓国の大使館あるいは領事館におもむき、所
定の手続きをすれば、子供は韓国の戸籍に登載されることになり、
そこで初めて二重国籍となります。
 将来韓国に帰国して生活する意思を持つ場合、あるいは子供に国
籍の選択をさせたいと考える場合に、このような二重国籍となりま
す。いずれの場合でも、日本の法律でも韓国の法律でも、子供は
22歳になるまでにどちらかの国籍を選択しなければなりません。
 しかし実際にはほとんどの在日韓国人は、二重国籍にしません。
本国に帰国しようとは思っていないし、韓国の国籍を取得すること
が非常に煩わしいからです。なぜなら、韓国の公用語は当然韓国語
であり,手続きも含めてすべて漢字のないハングルで行なわねばな
らないからです。 韓国語を知らない在日韓国人がこれをしようと
すると、通訳を雇うことになります。日本人と結婚した在日韓国人
がそんなことをしてまで、子供に韓国籍を持たせたいと思うことは
非常に少ないものです。
 つまり在日韓国人が日本人と婚姻をしたとき、子供は二重国籍が
可能ですが、ほとんどの場合はそうぜずに、日本の国籍を選択して
いるということです。

 二重国籍を積極的に認める国はないと思います。二重国籍者は,
二つの国からそれぞれ真正のパスポートを取得・行使できることに
なり、従って個人の同一性判断が困難となります。また例えば、二
つの国で別人と結婚(いわゆる重婚)することを防止できなくなり
ます。あるいはまた第三国の人と結婚すると、その子供は三重国籍
、四重国籍となる可能性が出てきます。
 戦前の国際連盟でも、戦後の国際連合でも、国際法委員会で無国
籍と二重国籍とを解消させる旨が決議されていたと記憶しています。
 国家が自国民の範囲を決める国籍は、それぞれの国で事情が異な
るので、二重国籍の発生は避けられません。しかし、国家が国家た
る以上は、二重国籍を解消し、単一国籍にしようとすることは当然
のことと思います。

   辻本 武
fv2t-tjmt@asahi-net.or.jp
http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt

コラム目次に戻る
トップページに戻る