339−2.パレスチナ情勢を読み解く



得丸です。昨日ウィーンから帰ってきました。まだ東京をうろうろ
しています。
いろいろと議論のやり方について意見が交換されているようですが
、私なりに考えて文体を変えてみました。新説や珍説ができるだけ
あるがままに受け入れられるようにするためには、むしろ創作風の
ほうがいいかなと思って。ウィーンのロマンチックな雰囲気が少し
でも伝われば幸いです。
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パレスチナ情勢を読み解く、ウィーンのカフェで語らう恋人たち

  ブリュッセルから、ポツダム、ミュンヘン、ウィーンと回って、
人工衛星による地球観測計画に関わる人々と意見交換する出張から
帰って来た。

  ポツダムでは、ポツダム会談の開かれたツェツィーリエンホフ城
(SchlossCecilienhof)や、アメリカのトルーマン大統領が宿泊した
(おそらくここで原爆投下を決断した)バベルスベルク(Babelsberg)
にあるトルーマンヴィラも訪れることができたので、その感想につ
いても後日報告したい。

最終目的地のウィーンで土日を過ごしたが、カフェで会話を楽しむ
人々の姿を楽しんだ。若い恋人たちがテーブルの上で手を握りあっ
て語り合っている姿を見ていて、この感じを国際戦略コラムやML
に導入できないものかと考えた。

インターネットは便利なツールだけど、顔が見えないこともあって
、時々相手に対してきついことを書いてしまったり、相手の言葉の
本意をくみとらずに言葉尻にとらわれた不毛な議論に陥ることがあ
る。礼儀を欠いた言葉のやりとりや、一方的で不毛な攻撃の応酬は
、見ているだけでも嫌になる。

メールを書いたり読んだりするときには、大抵の場合、私たちの両
手はキーボードの上に置かれている。だから文章を書くとき、自分
の掌の下に誰かの手があるという気持ちをもつのだ。誰でもいい、
具体的な自分の恋人や友達をイメージしながら、相手の手のぬくも
りや、相手の脈動を、なんとかして両手で感じとろうとする気持ち
をもって、文章を書く。こんなことで効果が生まれるかどうかわか
らないけれど、私自身しばらく試してみることにする。

*  パレスチナ情勢をどう読み解くか
愛しあう恋人たちは、話題には事欠かない。たとえば、パレスチナ
情勢だったら、こんな感じの会話になるのではないだろうか。感受
性が鋭く、対象に過剰に自己投入してしまう女は、テレビ報道に心
を傷めながらも、疑問をいだく。

女「パレスチナ情勢はどう捉えればいいのかしら。パレスチナの子
供たちが装甲車に石を投げて、機関銃を持ったイスラエルの兵士た
ちを自分からおびき出して撃たれていく姿は、私にはどうしても理
解できない」

これに対して、自己投入が過剰な点では女と同様だが、テレビカメ
ラの写さない部分についてたくましい想像力を発揮するのが得意な
男は、いつも心の奥底に抱いているものの人にはなかなか明かさな
かった自分流の証拠もなにもない解釈を、ややぶっきらぼうに語る。

男「あれはヤラセだよ。
パレスチナでは、国家は成立したものの、産業がないために貧しい
状態が続いている。ところが、これまで何十年間もパレスチナ難民
を支援してきたアラブ諸国は、独立を機に援助を打ち切りたいと思
っている。彼らだって国民にそんなにいい暮らしをさせているわけ
ではないんだから、できればパレスチナ難民に送っている金を国内
に回したい。

パレスチナ国家としては、このままでは援助金が集まらず国家財政
が干上がってしまうから、わざわざああいったイスラエルとの対決
シナリオを書いて、あらかじめテレビクルーを招いておいて、ひと
芝居うつというわけさ。子供たちが狙撃され、虐殺される映像が出
まわれば、金を無心された相手も断りにくいからね。

ちょっと救いのない言い方だが、乞食が子供の手や足をわざと切り
落として不具にして、人々の憐憫を誘う行為に似ていると思う。い
たましいことだが、目的は金さ。でもそうでもしないとパレスチナ
国家自体が生きていけない状態にあるのではないか。この時期に行
われているのも、来年度予算の作成時期を睨んでいるのかもしれな
い。

だからああいった映像が日常化していると思う必要はない。それは
杞憂にすぎない。だけど年中行事化しているのではないだろうか。
年中行事から外すためには、パレスチナが自活する経済基盤が必要
になるというわけだ」

  女の目には納得と絶望の色が浮かぶ。男は黙ったまま、女の手を
握りしめる力を強める。女の手からは、いくぶん早くなった彼女
の鼓動が感じとれる。
(2000.11.02、得丸久文 作)

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