296−3.調査捕鯨問題で対日制裁を発動



YS/2000.09.15

さてこの問題この先どうなるでしょう。皆様の御意見お願いしま
す。下段の記事は日経の泉さんのものです。いつも独特の視点で
解説されています。点でした表現できない日本のマスコミの中で
歴史背景を取込みながら、奥行きのある記事が書ける数少ない方
です。参考にして下さい。

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米大統領、調査捕鯨問題で対日制裁を発動

2000.09.14 Web posted at: 1:36 PM JST (0436 GMT)
 
??ワシントン(ロイター)クリントン米大統領は13日、日本に
よる調査捕鯨の拡大問題でミネタ商務長官が対日経済制裁を勧告
したのを受け、米国の200カイリ経済水域内で日本漁船が操業
することを禁止する制裁を発動した。日本は、ミンククジラに限
っていた調査捕鯨の対象に、今年7月からニタリクジラとマッコ
ウクジラの2種を加え、米国や自然保護団体などの批判を招いて
いた。大統領は日本が方針を撤回しない場合、経済制裁を科すと
も警告した。

??これに対し、ワシントンの日本大使館は声明を発表し、米国に
よる制裁は「2国間の貿易関係に悪影響を及ぼす」とし、「冷静
な環境での建設的な対話」を呼びかけた。また、一方的に制裁を
科すことは、世界貿易機関(WTO)の原則に反すると指摘、調
査捕鯨は、生息の実態を把握するために必要なデータ収集が目的
である、との主張を繰り返した。

??ミネタ長官は、大統領への勧告を発表するにあたり、「率直に
言って、日本は科学研究の名において、高級レストランやグルメ
食品店の鯨肉需要を満たすために鯨を殺している」と日本の姿勢
を批判した。

??一方、米食品業界や農業団体は、対日制裁が米国農産物の日本
向け輸出に響く可能性について、懸念を示している。

??ポデスタ大統領首席補佐官は、日本からの輸入品のうち、どの
品目が制裁の対象となるかについては明らかにしなかった。ただ
他の政府高官は、水産物が含まれる可能性が大きいと述べている。

??今回のクリントン政権による措置は、11月の大統領選挙を控
え、民主党大統領候補のゴア副大統領の自然保護への取り組みを
アピールすることを狙ったものだ、と指摘されているが、ポデス
タ補佐官はこれを否定した。

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調査捕鯨真っ向対立――日本、農水族背に強硬姿勢、米国、大統
領選控え材料に。

2000/09/13 日本経済新聞 朝刊

 二年ぶりの日米安全保障協議委員会(2プラス2)で「日米同
盟」の重要性を再確認したその日の日米外相会談で、米側が持ち
出した調査捕鯨の拡大問題。米側が経済制裁をちらつかせれば、
日本側も世界貿易機関(WTO)への提訴で真っ向から対抗する
構えをみせる。クジラ論争がここまでこじれたのはなぜか。
 
 日米外相は七月三十日に東京で会談したばかり。それでも「2
プラス2だけではだめ。河野洋平外相と二人で話をしたい」と会
談を申し入れたのは、オルブライト米国務長官の方だった。
 
 米国には大統領選を控えているという事情がある。民主党副大
統領候補に指名されたリーバーマン上院議員は反捕鯨運動の急先
ぽう。大統領選に挑むゴア副大統領としても、環境保護団体や非
政府組織(NGO)などからの支持取り付けに「反捕鯨」は格好
の材料だ。制裁措置を検討しているミネタ商務長官は日系である
が故に、逆に日本には強く出ざるを得ない。
 
 一方、これまでミンククジラを対象に調査捕鯨を続けてきた日
本。政府が対象拡大に動いたのは、自民党農水族などの突き上げ
が背景にあった。実は衆院選前、米側から外務省には非公式に
「米国の法律で保護対象になっているマッコウクジラとニタリク
ジラだけには手を出すな」というサインが送られてきた。しかし、
農水族をバックにする水産庁は「外務省は過去の亡霊(米国の圧
力)におびえている」と批判、結局はこの二種も対象に加える拡
大路線を突っ走った。
 
 政府・自民党内には「そもそも捕鯨を奨励したのはGHQ(連
合国軍総司令部)だ。戦後、食糧事情が悪かったころ、米国は老
朽化した巡洋艦などを改造し、日本に『捕鯨船』として提供した
ではないか」との反発もくすぶる。最近、英国の学校などで日本
人の児童・生徒らが調査捕鯨拡大問題でいじめられ、外務省がそ
の実態を調査しようとしても「捕鯨業者の生活がかかった問題に
口出しするな」と待ったがかけられたという。
 
 米側が特に問題にしているのは「調査捕鯨」という名目で鯨肉
を売りさばいているのではないかとの疑いだ。八月二十二日付の
ワシントン・ポスト紙は「調査捕鯨は鯨肉を市場に並べるための
隠れみのという見方が大勢だ」と強い調子で批判した。こうした
疑問に丁寧にこたえていくことで、日米間に不要な摩擦を生じさ
せないようにし、同盟関係を「管理」していくことが一段と大事
になってきた。
(ニューヨークで、編集委員 泉宣道) 

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