293−1.新・戦争学について



 村松著「新戦争学」文春新書を中心に、戦略基礎理論を考えたい
と思います。なるべく、簡単にしようと思うのですが、数式は使い
ます。

 村松さんの本は、戦略論の基礎的な事項が整理されているため、
参考になるのです。
1.戦争の基礎知識
 ・戦いの9原則として@目的の確立A主導権の獲得B機動の発揮
  C戦力の結集D奇襲E不断の警戒F指揮の統一G簡明な計画
  H戦力の節約
 ・戦力の6要素として@火力A機動力B指揮・通信力C情報警戒
  力D防護力E人事兵站力
 ・勝つための4要素として@優れた戦闘教義A戦力の質と量
  B指揮組織の戦術能力C指揮官の判断力と統率力

2.兵器革命
 ・第1次兵器革命「火薬」が最大限に威力を発揮。
 ・第2次兵器革命「内燃機関」が生んだ戦車、航空機、潜水艦な
  どによる機動力。
 ・第3次兵器革命「原子力」によって軍事力行使の目的戦域が制限
 ・第4次兵器革命「情報・通信」によって新しい戦闘ドクトリンが
  模索される時代。−>「エア・ランド・バトル」

 ということが記述されているが、第2次世界大戦等の分析もあり、
この分野に興味ある方は、参考になると思います。

3.ランチェスタ−法則
 戦略を考えるならランチェスター法則の知る必要があります。この
法則は2つあり、1つが、一騎討ちの法則、もう1つが集中効果の法
則です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(第1法則:一騎討ちの法則):条件は1対1の戦い。接近戦の
場合です。

 m0−m=E(n0−n):第1法則の式

m0:味方の初期兵力数
m :味方の残存兵力数
m0−m:味方の損害量
n0:敵の初期兵力数
n :敵の残存兵力数
n0−n:敵の損害量

E:交換比:武器の性能比、武器効率を表す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(第2法則:集中効果の法則):総合戦、近代兵器戦で確率を
適用する場合です。

m0**2−m**2=E(n0**2−n**2)
             :第2法則の式
パラメータは第1法則と同じ。
**2は、二乗の意味です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第1法則は弱者の法則で、弱者が取る戦法です。
なるべく、局地戦に持ち込むことが必要。
第2法則は強者の法則で、強者が取るべき戦法です。
確立戦に持ち込むことが大事。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
クープマンの改良:交換比Eを分解し、戦略力と戦術力に分解
兵器を輸送する能力と兵器を生産する能力を戦略力、兵力数や兵器
の数を戦術力とした。

Mt=1/3(2α・N−M)
Ms=2/3(2Mーα・N)=2αNt

 Mtは味方の戦術力、Msは味方の戦略力、
 M=Mt+Msは味方の総合戦力

 Ntは敵の戦術力、Nsは敵の戦略力、
 N=Nt+Nsは敵の総合戦力

 αは「ランチェスター戦略係数」

ここでは、式の詳しい説明はしない。むしろ式の「1/3」と
「2/3」に注目してください。
全体の戦力中、3分の1が戦術力、3分の2が戦略力だ。
よって、力の配分は戦略力は戦術力に対して力の配分は2対1でな
ければならないという意味です。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ここから、どんな方法を採っても弱者と強者の戦術力が3対1にな
ると弱者の勝ち目はなくなる。このため、3倍引き離せば勝ちにな
る。局地戦においても3倍以上ひらいたら、逆転は不能ですので退却
が必要。

この理論の応用範囲は広いので戦略等を検討する時は、応用してほし
いのです。

たとえば、日本と米国でのGNP比は、2対1ですから米国との
経済的競争は、まだ充分戦えるのです。しかし、総力戦はせずに、個
別分野毎に勝利する方法で、逆転していく法がいいのです。

このため、米国とは友好関係を構築し、個々の分野で日本の力を
発揮すればいいのです。

コラム目次に戻る
トップページに戻る