村松著「新戦争学」文春新書を中心に、戦略基礎理論を考えたい と思います。なるべく、簡単にしようと思うのですが、数式は使い ます。 村松さんの本は、戦略論の基礎的な事項が整理されているため、 参考になるのです。 1.戦争の基礎知識 ・戦いの9原則として@目的の確立A主導権の獲得B機動の発揮 C戦力の結集D奇襲E不断の警戒F指揮の統一G簡明な計画 H戦力の節約 ・戦力の6要素として@火力A機動力B指揮・通信力C情報警戒 力D防護力E人事兵站力 ・勝つための4要素として@優れた戦闘教義A戦力の質と量 B指揮組織の戦術能力C指揮官の判断力と統率力 2.兵器革命 ・第1次兵器革命「火薬」が最大限に威力を発揮。 ・第2次兵器革命「内燃機関」が生んだ戦車、航空機、潜水艦な どによる機動力。 ・第3次兵器革命「原子力」によって軍事力行使の目的戦域が制限 ・第4次兵器革命「情報・通信」によって新しい戦闘ドクトリンが 模索される時代。−>「エア・ランド・バトル」 ということが記述されているが、第2次世界大戦等の分析もあり、 この分野に興味ある方は、参考になると思います。 3.ランチェスタ−法則 戦略を考えるならランチェスター法則の知る必要があります。この 法則は2つあり、1つが、一騎討ちの法則、もう1つが集中効果の法 則です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (第1法則:一騎討ちの法則):条件は1対1の戦い。接近戦の 場合です。 m0−m=E(n0−n):第1法則の式 m0:味方の初期兵力数 m :味方の残存兵力数 m0−m:味方の損害量 n0:敵の初期兵力数 n :敵の残存兵力数 n0−n:敵の損害量 E:交換比:武器の性能比、武器効率を表す。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 (第2法則:集中効果の法則):総合戦、近代兵器戦で確率を 適用する場合です。 m0**2−m**2=E(n0**2−n**2) :第2法則の式 パラメータは第1法則と同じ。 **2は、二乗の意味です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 第1法則は弱者の法則で、弱者が取る戦法です。 なるべく、局地戦に持ち込むことが必要。 第2法則は強者の法則で、強者が取るべき戦法です。 確立戦に持ち込むことが大事。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 クープマンの改良:交換比Eを分解し、戦略力と戦術力に分解 兵器を輸送する能力と兵器を生産する能力を戦略力、兵力数や兵器 の数を戦術力とした。 Mt=1/3(2α・N−M) Ms=2/3(2Mーα・N)=2αNt Mtは味方の戦術力、Msは味方の戦略力、 M=Mt+Msは味方の総合戦力 Ntは敵の戦術力、Nsは敵の戦略力、 N=Nt+Nsは敵の総合戦力 αは「ランチェスター戦略係数」 ここでは、式の詳しい説明はしない。むしろ式の「1/3」と 「2/3」に注目してください。 全体の戦力中、3分の1が戦術力、3分の2が戦略力だ。 よって、力の配分は戦略力は戦術力に対して力の配分は2対1でな ければならないという意味です。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ここから、どんな方法を採っても弱者と強者の戦術力が3対1にな ると弱者の勝ち目はなくなる。このため、3倍引き離せば勝ちにな る。局地戦においても3倍以上ひらいたら、逆転は不能ですので退却 が必要。 この理論の応用範囲は広いので戦略等を検討する時は、応用してほし いのです。 たとえば、日本と米国でのGNP比は、2対1ですから米国との 経済的競争は、まだ充分戦えるのです。しかし、総力戦はせずに、個 別分野毎に勝利する方法で、逆転していく法がいいのです。 このため、米国とは友好関係を構築し、個々の分野で日本の力を 発揮すればいいのです。