285−3.公共事業のあり方について



NO.281−1のコラムを読んで・・・ (BBSから)

<< または、米国のようにハブ空港を造成する主体を民間会社に
して、航空会社の了解が必要なことにする。>> 

これについては大いに賛成です。というより、現在供用中の空港も
「個別・民営化」又は独立採算化すべきではないかと思います。 

<<今後できる新幹線も、各地のJRが運行するのであるが、ほと
んどは、赤字になる予定だ。>> 

これについては、違います。JRがやっていける、と納得したから
造るのです。ただ、平行在来線問題、建設費の負担割合によって結
果が変わる、などの問題は残っていますが。 
鉄道=ローカル線=赤字という固定概念はもう止めましょう。 
所要時間が3時間以内であれば飛行機よりも鉄道の方が有利なので
す。実際、「3時間説」という経験則があってこの場合鉄道側の
シェアは7割以上になります。 

実際、東京〜山形、岡山線などは航空便が大幅に縮小しました。
新幹線だけではありません。在来線の高速化により千歳〜帯広に至
っては休止に追い込まれました。また千歳〜函館も現在こそ有珠山
噴火の影響で鉄道に対し善戦していますが、近年は大幅減便を余儀
なくされていました。 

また、逆に当初は4時間前後(シェアは40〜50%しか確保できない
とされている)の所要時間から苦戦を予想されていた秋田新幹線は
意外な健闘を見せ、車両を1両増結するに至っています。 

また、「鉄道の採算性」についての考え方も問題です。現在、基本
的には建設から営業まで一貫して一事業者が責任を持つ、(但し、
勿論諸々の補助・援助はありますが)という形を取っています。 
そして、その資金は全て最終的に「利用者」が「運賃」として負担
する、という受益者負担の考え方です。 

しかし、新幹線による恩恵を受けているのは利用者だけでしょうか? 
所有する土地の近くに不動産を所有している人は例え新幹線を利用
しなくても「地価が上がる」ということで絶大なる恩恵に浴します。 
また、交通の便が改善されることにより、産業が誘致される等して
地域全体が経済的に恩恵を受けます。 
昔の交通不便な時代は地域企業でも少し大きくなると本社を東京に移
していたが、最近は東京が近くなったため全国展開の企業でも敢えて
本社を東京に移さない企業も増えてきた。(トヨタ、コジマなど) 
その結果、首都圏の「ガス抜き」も果たしていることになります。 
これが、「新幹線効果」の正体ではないでしょうか? 

まあ、乱暴に言ってしまえば、新幹線により沿線全体が、そして日本
全体が恩恵を受けるわけです。 
だったら、「受益者」の意味も自ずと変わってきます。 

個人的には、新幹線の「建設費の回収」は必要ないと思います。 
運行の結果赤字にならなければ十分だと思います。(ランニングコ
スト+メンテナンスコスト)<(収益)であれば建設すべきだと思
います。 
また、「鉄道の省エネ効果」も重要です。新幹線は航空機や自家用
車の1/3〜1/4のエネルギー消費で済みます。在来線にいたっては1/10
です。 

少し話はずれますが、500km以上のトラックによる貨物輸送を鉄道に
振り換える「モーダルシフト」を推進することは「環境上」「エネ
ルギー安全保障上」大きな効果があると考えられます。そのための
貨物鉄道の整備費はさし当たっては大したものではありません。 

(500km以上の距離では、一般に鉄道を介した方がトラック一環輸送
よりコストが安くなる、とされています。ただ、現在、東海道線の
名古屋付近、青函トンネルの取り付け部等で線路の空きがないため
これ以上の列車増発が困難になっている。鉄道による貨物輸送は
長距離の場合が多いので、局地的な問題が全体に与える影響は大き
くなります) 

<<このような現状では、都市に設備を作った方が効果的で、たとえ 
ば、新幹線の東京と大宮間を複々線にすれば、東北、信越、長野 
の新幹線の増発が可能になる。この線の構想は聞いたことがない。>> 

大宮〜新宿間に複々線という構想自体は昔からあります。そもそも
「上越新幹線」とは起点が「新宿」とされています。(現在の大宮
〜東京間は「東北新幹線」) 
ただ、用地取得が困難で大金が掛かること、複々線化する程の需要
は認めないこと、投資リスクが大きすぎること等、つまり、採算が
見込めないから行われないだけです。 
JR東日本は複々線化の代わりに、編成の長大化、2階建て車両の
導入でしのごう、という考えのようです。 

 <<国際空港も羽田沖にメガ・フロートで建設すれば、国内/国際の 
ハブ空港ができて、ソウルの仁川国際空港や上海国際空港以上に便 
利になる。メガフロートは今、実用化実験中で、シュアブ沖の米軍 
海兵隊基地に利用する可能性もあるのです。羽田はすでに国内線の 
ハブですから、乗り換えは非常に便利になるのです。これで、ソウ 
ル経由で世界に行っていた地方の人たちも、より便利になるはずで 
ある。>> 

例えば、青森から北米に行く場合、東京経由なら、青森〜東京間を
意味もなく往復しなくてはなりません。成田(羽田にしても)を飛
び立った飛行機は再び三陸沖、釧路沖を飛行して太平洋を横断する
からです。 
このため、青森の人にとっては東京経由は約3時間の時間のロスに
なります。東京〜ロサンゼルスが約12時間であることを考えれば
これは大きな損失です。 
このような時間的損失を最小に出来る地点・・・・これが北米・欧
州方面なら千歳、東南アジア方面なら那覇なのです。 
だから、例えば岡山や、小松では駄目なのです。 

 <<国土開発の数次の計画で、もう地方を開発するのは限界だと思う 
のです。人口が減り、かつ無人に近い形になるのですから、だれの 
ための開発化がわからない。>> 

例えば、ある都市のメインストリートが渋滞で何らかの対策を求めら
れているときに大まかに言って2つの選択肢があります。 
1,渋滞している道路をそのまま拡幅する 
2,郊外の誰も住んでいないところにバイパスを造る 

どちらの方が安価でしょうか? 
また、田圃を買い取るのと、商業地で用地取得をし、メインストリ
ートの拡幅を図るのと、どちらが迅速でしょう? 

都市・都市生活者のための公共事業、という考えには賛成ですが、
必ずしもそれは「都市になくてはならない」ということを意味しま
せん。 

バイパスを造ったら、郊外型の大型店が出来て、そちらに新しい町
が出来ることもあります。その結果市内中心部の混雑が緩和される
どころか、行きすぎて空洞化する事さえあります。 

日本の国土は米国の1/25しかない、が英国の1.5倍ある 
日本は広いのか、狭いのか・・・・ 
これは見方の問題です。 

ただ、「広く使う」ほうが賢明だとは思います。

DS
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(Fのコメント)
 私が言いたいことは、経済性を無視した議論が横行している今の
公共事業のあり方に問題を感じているのです。市場経済主義(ユー
ザ優先)であるべきです。しかし、今は政府の介入があり、計画経
済的になっているのです。これは、良い結果に繋がらないと思うの
です。

 新幹線も、JRが採算を確保できる見通しがある所は、どんどん
建設すればいいのです。採算の取れない所は、作らないことです。
今後は、東京や関西から遠い所(飛行機が有利な所)が対象になり
ます。このため、JR各社は、いろいろな条件を設定していますが
、この条件合意前に調査費を計上しているのが気になるだけです。

都市公共事業の内でも、同様です。採算が取れない所は止めるべき
です。これは、採算責任がある会社が補助金をもらわずに採算が
確保出来ると思う施設を建設するべきなのです。民間主導であるべ
きです。この時、政府は資金援助や税制援助を行う必要はあります
が。

 逆に、採算が合うのに作らせないのは、大きな間違いだと思うの
ですが??その良い例が羽田の拡張工事です。日本は、国土が小さ
いために、航空機での需要地はあまり多くない。このため、米国の
ハブ空港のような、中部のミネアポリスやダラスのような中規模の
都市にハブを作る必要がないのです。需要地間と結べばいいのです
から。

 このため、関西と東京の2ケ所が、国内線の集積地になっている
のです。ここから国際線を飛ばせば、新たに国際線専用のハブを
作る必要がないのです。米国でも、西海岸の太平洋線のハブは、
ロサンジェルス(1000万人の都市)とサンフランシスコ(シリ
コン・バレーを含めると400万人以上)の2ケ所ですよ。そこに
ある程度の需要があるから、ハブになっているのです。

 韓国は国内線、国際線すべてを、仁川空港に集めてハブにするの
ですし、中国の上海も国内線、国際線のハブです。日本のことだけ
を考えずに国際的なハブの構想を見る必要があります。そうしない
と、ハブの国際競争に負けるためです。ソウル、上海どちらも
1000万人以上の都市の空港がハブになっています。これと同じ
規模の都市は、東京と関西しかありません。あっても中部空港まで
でしょうか。

 バイパス議論は、何がいいたいのか不明です。採算性があれば、
行えばいいのですが、現在、行政の審査が甘く、計画時は需要を膨
らませて建設する。その後、設備の運営で赤字にしているのです。
このような事態にしないためには、民間会社化して、需要調査をし
っかり行うべきではないでしょうか??

道路公団であるから、過疎地に高速道路を作れるのですが、これを
各地の道路会社に分割民営化したら、今のような野放図な建設はで
きないはずです。それは、超過債務にしたら、経営責任を明確に取
る仕組みが歯止めになるためです。

 地方振興策は、地方の独自文化の発掘や企業の税制優遇、地元の
大学との産学共同研究、ベンチャー企業立ち上げ等の施策が必要な
のです。国に寄生した地方という安易な道を選ばない方がいいでし
ょう。

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