279−1.「グッバイ・アメリカ」



                            鈴鹿国際大学教授  久保憲一

「シクラメンのかほり」「夢芝居」「愛燦々」などのおなじみの曲
を作詞・作曲している小椋佳さんは、今、アメリカ・ミュージカル
の真似ではなく「アルゴ」という音楽団を率い、日本独自の音楽劇
を追求している。これまで、彼は大手銀行との二足草鞋を履くとい
う異色音楽家であったが、五十才になった横浜支店長を最後に退職
し、また東大法学部政治学科に学士入学している。まさに今流行の
「生涯学習」実践者でもある。彼はその職場や立場の性質上、これ
まで外資系企業など、欧米諸国との関わりも深かったであろう。
しかしその彼が、決して欧米かぶれせず、琵琶師の父親をもった影
響であろうか、いま、日本の伝統的な楽器・琵琶を弾き、謡曲のよ
うな、伝統的な「語り歌」を作っている。

ところで、その小椋佳さんの比較的最近の曲に「グッバイ・アメリ
カ」がある。この曲はギリシャの美空ひばりと言われるハリス・ア
レクシールの持ち歌であり、これを彼が譲り受け、次のように作詞
した。詞の内容はかつてアメリカに移住したギリシャ人がアメリカ
への失望と望郷の念を歌ったものである。

イタリー コルシカーニ ポルトガーリ イスパニー キェリネス
チューインガム デモクラシー ベーブルース エンパイアステート
 リズム&ブルース JFケネディ ジェームスディーン 
キャディラック ディズニーランド ハリウッド
憧れすぎて アメリカ 心染みこむ アメリカ 一色だけの飾りか
 僕はどこの人
ジャズ フォーク ロック マリリン プレスリー カシアスクレイ
ハイウェイカーチェイス ET&ナサ ヒッピー&ドラッグ
ハーバード スタンフォード ウォールストリート コカコーラ 
ブロードウェイ
大好きなまま アメリカ 別れを告げようアメリカ 天の邪鬼の強
がりか孤独な旅の不安
グッバイ グッバイ アメリカ 古い恋人アメリカ 街は心の名残
りか 風は向かい風

つまり、アメリカの魅力とはこれだけのものである。決してこれ以
上のものではない。行き過ぎた個人主義に基づくデモクラシー(神
なきデモクラシー)、白人社会のみを対象とする、ご都合主義な「
自由と民主主義」・人種差別、エリート支配による貧富差拡大(中
産階級没落による階層化)、(銃)犯罪の多発、大統領が常に呼び
かけねばならないほど劣悪な学校教育と家庭の崩壊…。最近の日本
はこのアメリカの病弊さえも盲目的に真似し、「アバタもエクボ」
として無批判に導入しようとしている。連邦制、首相公選制、また
軽率な年功序列批判やアメリカのお先棒担ぎの官僚批判等、然りで
ある。

先年のバブルはアメリカの強要でもたらされたことを忘れてはいけ
ない。ところが、いまなお日本はアメリカの国債を買い支え、浪費
大国アメリカの従順なパトロンとなっている。
「宗教」と「軍隊」によるかつての植民地支配に代わり、北米自由
貿易協定(NAFTA)等「法」と「金」によるアメリカの発展途上国支配
は今や実に過酷である。他方、自国労働者を低賃金、パート雇用に
切り捨てている。

冷戦後のアメリカがもはや自国の国益追求のみに生きていることを
、わが国の政治家は早く気づき、わが国の国益を守らねばならない
。そして独自の針路「百年の大計」を確立すべきである。

小椋佳さんは言う。「日本も明治維新以来、とくに第二次大戦後、
アメリカ崇拝し、アメリカのものはすべて素晴らしいという考えを
持ってきた。もちろんアメリカが素晴らしくないということはない
のだが、そろそろ日本独自のものを考えて行かねばならない」と言
い、この曲は今なおアメリカの影響から抜け出せないでいる日本人
へのメッセージであると。
           水廼舎 こと 久保憲一
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