266−1.Aさんの話



nternet Times 編集長・北本 豊

 日本の植民地支配について、ことさらあしざまに喧伝する風潮が
あるように思う。
いうまでもなく植民地支配はヨーロッパ列強が始めたもので、大英
帝国などヨーロッパ諸国が繁栄したのもそのお陰だ。

 先の大戦でインドネシアに二年ほど、航空機の整備兵として参戦
したAさん(78)(津市在住)のお話を聞く機会が最近あった。いろ
んなお話が出たが、終戦後も残留していたジャワ島で、日本軍兵士
が退屈しのぎに演芸大会を行って、現地の人たちと一緒になって楽
しみましたよ、という話を伺ってエッと思った。

 日本が負けたと分かった後、外国(植民地)にいた日本人は軍人
であれ、民間人であれ地獄のような目にあったと聞かされていた。

 Aさんは「日本に帰る日、山から降りてトラックに乗ったら、子
どもたちが駆け寄ってきてさよならをいってくれました。港に向か
う列車では、現地の婦人らがコーヒーを水筒に入れてくれたり、列
車のトイレには竹を切った一輪挿しがあって感激しました」という。

 インドネシアはオランダの植民地から日本の植民地になっている。
列強による植民地支配の時代ともいえる。それにしてもAさんの話
は私の予想を超えるものだった。

 鈴鹿国際大学の久保憲一教授によると、中国と韓国、フィリピン
を除く、かつての日本の旧植民地諸国(台湾、パラオ、インドネシ
ア、マレーシアなど)では、日本の統治政策が高く評価されている
という。学校や病院を整備し、勤勉を教え、社会経済制度を整えた
といわれている。

 「松阪市の会社に、研修生として来ていたインドネシアの人たち
のお別れ会の席上、彼らがインドネシア国歌を歌い、最後に君が代
を歌ってくれた。感動しました」と語るAさん。

 終戦後、約二千人の日本兵がインドネシアに残り、インドネシア
の独立義勇軍として参戦したという。インドネシア政府はいまも共
に戦った元日本兵を手厚く処遇しているという。

 なにごとにも光があれば影もある。Aさんの話は、日本人として
知っておくべきではないかと思い、筆を取った次第だ。
インタネット・タイムズに掲載:(現在試行運用中)
インタネット・タイムズに掲載

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