256−2.2重国籍の必要性



今回も投稿者の原稿をまとめました。(Fより)
二重国籍の必要性について、以下のとおり、私自身の所見を述べさ
せていただきます。

私は、実際に外国の国籍を取得することが現実的になった時点では
勿論のこと、それ以前でも、二重国籍を認めない日本政府に対し、
極めて深い疑問を持ってきました。

今日、一説には、130万人もの日本人が海外で生活しているとい
われる現実の下、滞在国に永久に住み着く人も多くなることは、
明白です。

海外に移住した人たちには、それぞれに事情があります。ビジネス
上の理由、結婚など、「幸福な移住者」もいれば、最近は少ないも
のの、(以前のサハリンや中国残留婦人や孤児のように)、自らの
意志に反して、あるいは自らの意志を履行できない形で、移住させ
られた、あるいは海外に取り残された人もいました。

事情はどうあれ、このような人たちにとって、現地の一員として
生活していくためには、当然のことながら、単に「永住者」ではな
く、「国民」「市民」としての地位を自ら能動的のみならず、社会
一般からも求められるのは明らかです。

一方、海外からも、日本に多数の人たちがやってきています。日本
に幸せを求めて、自ら移住してきた人もいれば、第2次大戦当時に
強制的に日本に連行された韓国人・中国人、その子孫もいます。
どちらの場合も、滞在国と母国双方に、切れがたい絆で結ばれてい
ます。この「心」の絆は、滞在年数にかかわらず、切れるものでは
ありません。

しかしながら、現在の日本には、大きな障害があります。重国籍の
禁止です。外国に移住して、自ら現地の国籍を取得した場合は、
日本国籍をその時点で、自動喪失してしまいます。一方、日本に帰化
した場合は、母国を含め、他の国籍を離脱することを強制されてい
ます。

この日本政府の「重国籍者排除」は、以下の問題があります。

1) 発想が極めて「徳川幕府の鎖国政策的」(日本人が海外に移住、
  外国国籍を取得した場合)で、かつ「日本軍国主義時代の植民地
  支配的」(日本に移住、帰化する場合。創氏改名と発想がまるで
  同じ)で、どちらも極めて「非人道的」。
2) 外国との相互理解に大きな障害。
3)ひいては日本の経済・社会発展の障害となっている。

外国に移住・帰化した日本人に対する政策では、ウクライナが取って
いる「1993年以前に(外国に永住・帰化する目的で)出国した人につ
いては、もはやウクライナ国籍ではない。」という政策よりまだ悪い
です。ウクライナの場合は、1991年12月25日のソ連邦崩壊、それに続
く「不安定な情勢」から脱却する必要がありました。

また、海軍基地やクリミア半島の領有問題などで、ロシアとの対立が
深刻だったこともあり、ソ連邦崩壊直後、ロシアなど隣国との間に、
入国管理や税関が存在しなかった期間の「ドサクサにまぎれて」「動
機不純なまま」出入国した人に対して警戒する必要がありました。

今の日本が、ここまで不穏な情勢でしょうか? 外国に帰化した日本
人から、日本国籍を取り上げる理由が、まったくありません。自分が
生まれ、言葉を母国語として取得し、親、兄弟、多くの友人がいて、
人格の形成期をすごした日本に入国するのに、外国の旅券や、日本国
査証などを求める理由がとても理解できません。

こういう人たちを外国人扱いする、合理的理由がありません。現地に
住む人たちにとって、それぞれの国民として、生活することを求めら
れるのは、当然です。それぞれに「永住地」として定めた地に住む人
たちの共通で、自然な認識なのです。一方、現地の人たちは、「日本
人であるがゆえの社会貢献」を求めます。日本人だからこそ出来るこ
とに、大きな期待をもっています。

そして、現地での絆を強化する一方で、日本との絆も切らないことを
切に祈っています。
外国国籍を取得しておきながら、日本人であるがゆえに、出身国の国
籍(日本国籍)を失わなければならないのは、日本人から見て、極め
て不公平である一方、現地の人たちからも、国家指導者になるなどの
特別な事情を除けば、理解されません。さらに、外国の知識・スキル
を身につけた日本人に、これらを日本に伝授してほしいのです。

それには、日本人としてのステータスがないと、スムーズには行きま
せん。パスポートなど、ビザなど、滞在許可などに悩まされてはいけ
ません。

これは、日本に移住してきた人たちにも当てはまります。日本での
生活に順応する一方で、その人だからこそできる貢献に、大いに期待
します。例えば、インドからの移住者には、インド人だからこそでき
、日本人にはできないスキル、知識(例えば、ソフトウエア開発力は
日本人の10年先を行っています。)などに期待します。インドの国籍
政策はさておき、このような人たちに、日本国籍のみを保有すること
を押し付ける、合理的理由はありません。

むしろ、母国で発達中のスキル・知識を、過去形ではなく、現在進行
形で、遅延なく日本に持ち込んでほしいです。その為には、出入国な
どに、パスポートやビザなどの障害があってはいけません。

人それぞれの背景にかかわらず、「日本国籍か否か」を迫るのは、
極めて単細胞的発想としか、断じようがありません。中国や韓国など
の周辺国の国籍法と比べる必要はありません。日本国の実情にあって
いないという現実を見つめないと、解決しません。
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二重国籍許容度ランキング  

ランクA ほぼ無条件にOK。むしろ奨励しているくらい
フランス・カナダ

ランクB あまり奨励はしていないが、当事者はこまらない 
美国・英国   

ランクC 母国としてのつながりが強い場合はOK
ドイツ・イタリア

ランクD 重国籍禁止
日本

ちなみに台湾がランクB, 99年国籍法が施行された場合の韓国が
ランクCです。


オーストラリアについては、私はランクDにします。外国籍取得によ
る国籍消滅があるからです。
カナダのピカチュウ
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一般に、政治家にも役人にも、企業のトップや一般の日本人にも、
極めて強い排外思想があります。黒船以来の外国=害国です。
在外選挙の場合は、基本的に選挙権が憲法で保障されているのに
投票制度が無いと言う立場で戦ったので、正論に対してやむを得ず
という形で、まさに嫌々ながら作ってくれたものです。
国籍は、基本的権利として認められておらず、国際的にも先進国が
必ずしも重国籍を認めている訳ではないので、ゼロからのスタート
になります。
恐らく日本が世界で一番最後になるのではないでしょうか。
悲観的な話しで申し訳ありません。

オーストラリアの場合は、外国人がオーストラリアの国籍を取って
も、元の国籍の放棄は求められません。日本人の場合は、日本の政
府が認めないので駄目です。
オーストラリア人が自分の意志で外国籍を取った場合は、オースト
ラリアの国籍を失います。但し、これはもし今野党の労働党が政権
を取れば、恐らく国籍が維持できるように改正される筈です。
USAは既に重国籍維持を認めている筈で、当時政権の座にあった
労働党が、USAと経済競争面でハンデキャップになるとの考えで、
オーストラリアも全面重国籍に改正をしようとしていたのですが、
選挙で破れて(理由は国籍問題と関係ありませんが)ナショナリス
ティックな現政権の自由党は改正を考えていません。
オーストラリアには大勢のベトナム難民や中国人を始めアジア人が
住んでいて、これらの国と取り引きをするのに欠かせません。それ
をむざむざ外国籍にしてしまうと、USAと競争するのに不利になる
いう考えでした。
日本でもテレビ局買収で話題になったNews社のルパート・マードッ
クは、元はオーストラリア人ですが、USAのテレビ局を買収するため
にオーストラリア国籍を捨てました。オーストラリア政府は慌てま
したが。

日本が重国籍を認めるようになるとすると、心情的な理由よりも、
経済的な理由、しかも外圧が必要なのではないでしょうか。
日本経済は今破綻の道を歩んでいます。恐らく5年以内に、円安、
インフレ、増税、等が顕在化して、企業や円の流出が著しくなると
予想しています。人の流出はビザの関係で一番難しいと思いますが
、出られる人は出て行くでしょう。
外国、特にアジアで企業を買収したり、開いたりするには、国籍を
必要とする場合が未だ当分続くでしょう。
企業や人が国を選ぶ時代に、空洞化した税金の高い住み難い国が
孤高を保っていても、どうにもならなくなるのではないでしょうか。
相対的に、海外日本人の力が強くなって、良い意味での外圧で日本
の開国を求めて行く。
それともますます意固地になって、孤立を深めて行くのでしょうか
保坂
http://www.ozemail.com.au/~camellia

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