231−2.市民感覚で「論憲」を



暑中お見舞い申し上げます。
毎度お騒がせいたしております。

総選挙前に地元の北陸中日新聞の若手記者と雑談したことが、うまく
まとめていただいて記事にしていただきましたので、お届け申し上げ
ます。

ここでいう市民感覚とは、普通の市民の常識あるいは人情のことです。
吉田松陰も「情の至極は理も亦極せる者なり(情を極めれば、理も自
然と極まってくる)」といっておりますか、難しい条文や用語の解釈
はひとまずおいて、自分たちの日常感覚の次元に憲法を引き寄せて考
えてみようという趣旨です。

なお、桶谷秀昭「昭和精神史 戦後篇」においても日本国憲法制定時
の舞台裏が紹介されておりますので、ご興味のあるかたは御一読くだ
さい。

得丸久文(鷹揚の会)
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北陸中日新聞 平成12年6月19日(月曜日)22面

接点を問う 2000 衆院選と有権者 5

市民感覚で「論憲」を ー 昔の常識消えていった

私的勉強会「鷹揚の会」代表 得丸久文さん

ー 各党が繰り広げている憲法論議をどう思うか。
「第九条と自衛隊との整合性や、第一条で国民統合の象徴と定められた
天皇が元首かどうかという論議が中心で、他の部分に目がいっていない。
九条を条文の通り読めば、確かに自衛隊の存在はおかしいし、どちらか
を変える必要があるという論理は成り立つ。でもその部分さえ直せばパ
ーフェクトな憲法になるのか。そうはならないだろう」

ー 足りないのは何か。
「憲法そのものの構成に目を向けようという視点がない。今の論議を続
けても、過疎化や高齢少子化、ボーダーレス化など社会が抱える問題の
解決には何の役にも立たない。言葉じりばかりに目を奪われ、紙に書か
れただけの概念をいじくろうとしている。国民レベルの議論が一向に高
まらないのは、社会とかけ離れた次元で憲法を論じているからだ。すべ
ての議論がむなしく感じる」

ー そもそも憲法とは何かという基本的な視点が忘れ去られている、と。
「憲法がすべての法律の最高位にある一番大切な法律であることは、み
んなの共通認識のはず。しかし、私たちが日常生活を営む上で、どれだ
け憲法を大事だと意識しているだろうか。
 法律は、社会の中でみんなが幸せに生きていくための”決まりごと”
で、あくまで日々の暮らしの延長線上にあるべきもの。私も一生懸命に
読んだが、現行の憲法の条文は、そういう仕組みにはなっていないし、
憲法に従えば幸せに生きられるものでもない」

ー 今の憲法そのものに問題があるということか。
「憲法が制定されてから今日まで社会は目まぐるしく変化したのに、条文
を変えなくても生活に不都合はなかった。長い歴史の中で培われた慣習や
社会通念などが存在し、憲法に頼らなくても何が正しくて何がただしくな
いかを判断する基準が別にあったからだ。今の憲法も明治憲法も、日本古
来の慣習や考え方よりも欧米の憲法や理念に比重を置いてつくられたもの
だという点は同じで、市民感覚では捉えにくい構造になっている。ここに
問題がある」

ー 市民感覚で憲法を論じることは可能なのか。
「一番大事な法律であるはずの憲法が、生活の中で守らなければならない
ルールと別の次元で語られていることに間違いがある。『自分にとって一
番大切な決まりって何だろう』と国民一人ひとりが心に問いかけ、どんな
ことが必要なのかを日々の暮らしの中で考えていくことが国民レベルの憲
法論議につながる。自分自身、家族、地域と感覚を広げていけば、防衛や
外交など国家レベルの問題にも最後には行き着くはず」

「社会の規範力が薄れ、昔の常識が消えていっているから、自分を律する
モラルやルールがない社会になってきている。憲法を守ることがいい社会
をつくることにつながってほしい。今こそ市民感覚で本当の論議をしてい
く必要がある」
(聞き手 高岡支局・大森凖)
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(管理人Tからのコメント)
 この2・3日の記事は、得丸さんのMLからの転載です。

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