224−2.海外メディアの総選挙評価



YS/2000.07.02

 選挙が終わるのを待っていたかのように、またしても吹き出した建設
省の発注工事をめぐる受託収賄事件。この国は、いったいどこに向かお
うとしているのか。
 
 海外メディアは、総選挙結果に対して厳しい評価を下している。

★「日本の経済にとってマイナス」
★「明らかに、日本国民は急激な変化を望まなかったようだ」
★「長期的視野に立ってみれば、日本の経済を逆行させるものだ」
★「米国の日本離れが進む可能性もある」
★「森首相はサミット後に退陣か」
★「悲劇的なほど口が軽い」森首相の退陣は時間の問題
★『自民党には「役立たずの首相」よりも、はるかに多くの懸念材料が
   ある』
★「自民党政権の終えんは確実に近づいている」
★「改革志向の野党への支持が上昇したことは、重要な一歩だ」
★「来年の参議院選挙で、有権者の厳しい判断が下される」

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Sun, 02 Jul 2000, 5:07pm JST Bloomberg 

総選挙結果は日本経済にマイナス-米ブルッキングズ研のリンカーン氏


ワシントン 6月30日(ブルームバーグ):米ブルッキングズ研究所の上
級研究員、エド・リンカーン氏は、日本の第42回衆院選挙に関するブル
ームバーグ・フォーラムで、連立与党が絶対安定多数を確保、森喜朗首
相の続投となった今回の結果は「日本の経済にとってマイナス」との認
識を表明した。

 同時に、 現時点での利上げは景気回復を損なうとし、ゼロ金利政策
は維持すべきとの考えを強調した。リンカーン氏は、森内閣の支持率が
低下していたにもかかわらず、連立与党が目標議席数を確保したことに
ついて、「明らかに、日本国民は急激な変化を望まなかったようだ」と
して、「さほど驚くべき結果ではない」と述べた。

 一方で、「今、日本に必要なのは大幅な規制緩和や構造改革。現行の
自民党政権では、それは期待できない」と強調。選挙結果は「長期的視
野に立ってみれば、日本の経済を逆行させるものだ」と述べた。

 日本の経済見通しについても、同氏は「いくつか明るい兆しが見えて
きたのは確か」とする一方で、景気回復が「まだかなり初期の段階にあ
るということを忘れてはならない」と語った。

 そのうえで、今利上げを実施すれば、「債務負担が大きい民間セクタ
ーに大きな打撃となり、せっかくの回復傾向も損なわれてしまう」とし、
現時点の材料だけでは、ゼロ金利政策を解除する理由は見当たらないと
の考えを示した。  
 
 リンカーン氏は1994年から96年まで在日米国大使館に駐在し、当時の
モンデール駐日大使の経済顧問を務めた経験がある。

ニューヨーク 河合美奈子 Minako Kawai MK

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Sun, 02 Jul 2000, 5:09pm JST Bloomberg 

米外交評議会グリーン氏:米国の「日本離れ」進む恐れも


ワシントン 6月30日(ブルームバーグ):米外交評議会の主任研究員、マ
イケル・グリーン氏は30日のブルームバーグ・フォーラムで、連立与党
が政権を維持した第42回衆院選挙について、「ある意味で、退屈な結果」
だったとし、森政権が今後リーダーシップを明確に示せない場合、
「米国の日本離れが進む可能性もある」と警告した。  

 グリーン氏は、「米政府は、世界2位の経済大国であるとともに安全
保障政策のパートナーである日本との関係の重要性を認識しており、そ
の基本姿勢は 今後も変わらない」との見解を示す一方、「このところ、
(日本を通り越して中国や東南アジア諸国などに強い関心を示す)ジャ
パン・パッシングの動きが一部に見られ始めているのは事実」と指摘。
森政権が「あまり良いイメージを抱かれていない」こともその一因とし、
7月の沖縄サミット(主要国首脳会議)でどの程度のリーダーシップを
発揮できるかが重要との認識を示した。  

 グリーン氏は一方で、「通商面でみると、94年、95年頃に比べ、日米
間の摩擦はかなり緩和されている」と述べ、米国内で反日感情が後退し
たことも日本の政局に関する米側の「無関心」に貢献してしまったとの
認識を示した。  

グリーン氏は94年から97年まで、米国防総省の国防研究所研究員として、
日米防衛指針の見直しに携わった。日本留学経験があり、衆院議員秘書
を務めた経験もある。 ニューヨーク 河合美奈子 Minako Kawai MK

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NYタイムズ紙 「森首相はサミット後に退陣か」

鳩山由紀夫代表の率いる民主党の健闘で、森喜朗首相の退陣は時間の問
題か   
2000.06.28 Web posted at: 7:36 AM JST (2236 GMT)
By 神立 景子(CNN)

沖縄・九州サミットが終われば、森喜朗首相はお役ご免――。

25日に投開票された総選挙で、連立与党が安定多数を確保し、森政権
の続投がほぼ確実となったが、米ニューヨークタイムズ紙は27日付の
国際面で、単独過半数割れした自民党の体質を分析、「悲劇的なほど口
が軽い」森首相の退陣は時間の問題、との見方を示した。

 同紙は、「自民党としても、国民に不人気の森首相をいつまでも続投
させては、来年の参院選に影響が出る。7月21日から開かれる先進国
首脳会議(沖縄・九州サミット)後も、森首相が政権を維持できるかが
今後の焦点」との学習院大学、河合秀和教授のコメントを引用。サミッ
トを無難にこなせれば、自民党は森首相に花を持たせて退陣を願えるだ
ろう、としている。

 さらに記事では、自民党には「役立たずの首相」よりも、はるかに多
くの懸念材料があるとして、「西側の民主国家よりも、共産主義の中国
と比較できるほど長期的な自民党支配が続いたが、自民党政権の終えん
は確実に近づいている」と結論づけた。

 その理由として、都市部の有権者は、公共投資のばらまきにうんざり
していることを挙げ、「田畑しかない田舎に、いきなり飛行場を作った
り、新幹線の赤字路線を建設し続けることで、過去2年で1兆5000
億円も費やした」と指摘。自民党支持の地方住民と、自民党離れの進む
都市住民の分化が進んでいる、との見方を紹介した。

 また、自民党の単独過半数割れとは対照的に、議席数を公示前の95
から127へと大きく伸ばした民主党の動きに注目。「ポスターを貼っ
たり、金をばらまく選挙ではなく、民主党は新たな税制など具体的な政
策で勝負し、差別化を図った」と評価。本格的な政治基盤としてはまだ
弱いものの、日本の再生へ向かうけん引役として、多くの評論家はこの
動きを歓迎している、と結んでいる。

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真の権力者の不在を露呈=衆院選でフィナンシャル・タイムズ紙
 
 [東京 26日 ロイター] 26日付フィナンシャル・タイムズ紙
は社説の中で、今回の総選挙について、日本の真の権力者の不在を露呈
したと評するとともに、日本に、世界第2位の経済大国として、日本自
身やその貿易相手国が大いに必要としている、より対応の早い政府を樹
立する機会を与える、との見方を示している。それは、ゆっくりとした、
混乱を伴う進展となるだろう、としている。
 
 ただ、25日の総選挙で、選挙区の利益を優先する長老政治で現代日
本を支配してきた自由民主党への支持率が急落し、改革志向の野党への
支持が上昇したことは、重要な一歩だ、としている。
 
 また、このことは、竹下登元首相と小渕恵三前首相の死去によっても
たらされた、現代日本政治の中枢での、初めての真の権力の空白をあら
わにした、としている。自民党という階層組織は、その空白を、都市部
の非常に多くの有権者が望んでいる、日本を悩ませている経済的、財政
的、社会的問題の悪影響をどのように解決するかについて明確な政策を
持つ、より若い政治家によって埋める機会を得た、としている。
 
 同紙によると、政界の影の権力者の座は現在空白となっており、その
価値も失われているという。そして、森喜朗首相も、その後継者と目さ
れる人々も、改革のペースを速めることはあまり期待できない、として
いる。 また、衆参両院で過半数を維持するためには、公明党との連立
を維持しなければならず、日本が真の変化への合意に基づいた安定政権
を築くには、あと1〜2回の選挙を経なければらないだろう、としてい
る。
 
 同紙は、次期政権が、まず取り組まなくてはならない課題は、多くの
自民党議員が示唆している公共事業への新たな資金投入について、持続
的な回復をもたらさないということを認識することだ、としている。さ
らなるリストラが必要で、それには勇気が必要だという。新政権はリス
トラに弱腰、との見方は、速水優日銀総裁に10年ぶりの利上げの可能
性を示唆させるに至った、としている。
 
 同紙は、産業の発展を刺激することが目的だとしても、利上げは間違
いだろう、としている。利上げにより貯蓄過剰をさらに助長し、需要を
抑制するだろう、としている。しかし、日銀の警告は、次期政権に利上
げを回避するためのリストラ圧力をかける可能性があるという。新政権
が、この機会をとらえることができなければ、持続可能な経済回復の機
会を棒に振ることになるという。そうなれば、来年の参議院選挙で、有
権者の厳しい判断が下されるだろう、としている。

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