201−1.第2次アフガン戦争



 ロシアは、コソボ紛争、チェチェン紛争を陰から支援している
アフガン(タリバン支配地)を爆撃する可能性が出てきた。
また、ウズベキ、キルギス、タジキスタンなどの中央アジア諸国は
ロシア軍駐留を許し、タリバン支援の原理主義者の活動を抑制して
いる。
 日本人拉致事件でもわかる通り、このゲリラたちの基地は
キルギス国内ではなく、アフガニスタンのタリバン支配地なのです。

もう1方で、ロシアは数ヶ月で終わると見ていたチェチェンのゲリラ
掃討作戦が終わらない。前回、グルシア、アゼルバイジャンのゲリラ
補給基地をたたくかもしれないと書いたが、トルコや欧米諸国の反対
があり、今すぐにはできない。この欧米諸国からの経済援助は、今も
必要であるためだ。

 これに比べて、アフガニスタンのタリバンは米国も原理主義者を潰
したいと望んでいるため、国際的合意が得やすい。タリバンを叩く
方向で、プチン大統領は考えを傾斜させている。
プチン大統領の性格は、国家主義者であり、国を強くすることを
第1義に考えているが、政治・軍事面はある程度知っているが、経済
面は、ほとんど知らないという欠点を持っている。

 このため、国を強くするという思いの発露がどうしても軍事面に
現れるし、経済面でも軍艦やミサイルを売る方向になってしまう。
このため、中印はロシア製兵器により軍の近代化ができたが、アジア
の安定の脅威になっている。
それと、中央アジアがインド洋に出るルートとして、アフガンを考え
ているのかもしれない。戦略上の拡大である。カスピ海で、大油田が
米国石油会社の手で発見され、埋蔵量がサウジの油田以上で、相当大
きい。この石油地域の米ロの取り合いも絡んでいる。積み出しのため
、イランと米国は友好関係になる必要が出てきている。

 さあ、第2次アフガン戦争はどうなるのであろうか?
これは、空爆しかありえない。地上軍を送り込むことはないはず。
空爆なら、ほとんど被害がなしに、任務を遂行できるためで、米国
とも合意できる。

 タリバンとタリバンをアフガニスタンの正式政権と承認している
パキスタンとサウジ、首長国連邦の反応であるが、ロシアに対し、
非難の声明を出すが、それ以上はできない。
それより、3カ国は対空ミサイルなどの兵器をタリバンに送る可能性
が高い。それと、聖戦として、イスラム社会へアピールすること
になる。

 またもや、ロシア対イスラム社会になる可能性がある。
この時、ウズベキ、キルギス、タジキのイスラム教信者がどう動くか
だ。

 アフガニスタン内でのタリバンの評価は高いため、タリバン自体
は安定的であるが、タリバンが世界のイスラム教徒の中核として、
他世界との摩擦を繰り返すと、世界の孤児となり、世界の安定のガン
になる可能性が高い。もし、イスラム教徒が強くなると、世界対
イスラムという構図になっていく。

 また、サウジや首長国連邦が穏健派と強硬派に分裂すると、タリバン
自体も苦しくなる。このタリバンを支持する基盤のパキスタン、
サウジ、首長国連邦がどうするか?タリバンがどう支持を取り付ける
かだ。
また、これに付随して、中国との関係など、世界大国間のパワー
バランスがどうなるか、どう調和するかが、今後の動向を把握する
カギとなる。
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5月31日、共同
【モスクワ31日=高木桂一】
ロシアの有力日刊紙「コメルサント」は三十一日、チェチェン武装
勢力を支援しているとされるアフガニスタンのイスラム原理主義勢
力タリバンの軍事基地への空爆の準備を進めているロシア軍の司令
官グループがすでにアフガン領内に入り、反タリバン勢力と軍事協
力をめぐる協議を行ったとし、六月八−十日にも対タリバン軍事作
戦を開始すると伝えた。「反イスラム原理主義」を掲げるロシア側
は、後には引かない構えで、緊迫感がにわかに高まりつつある。
同紙は「ロシア高官によるアフガン空爆の示唆は、空疎な威嚇では
なく、反イスラム原理主義勢力に関する国際世論に基づく現実味の
あるものだ」と指摘し、五月下旬にロシア連邦軍の十六人の司令官
がアフガニスタン領内で、反タリバン勢力「イスラム協会」のアハ
マド・シャー・マスード司令官(元国防相)やラバニ大統領と、武器
供与など軍事協力に関する協議を行ったという。
マスード司令官の情報によると、ロシア軍によるタリバンの軍事基
地への空爆をはじめとする軍事作戦には空軍機のほか、旧ソ連国家
保安委員会(KGB)の後継組織である連邦保安局(FSB)の特殊部
隊や、軍参謀本部情報総局の偵察部隊、FSBに所属する“伝説”
の機密部隊「アルファ」が参加する。
作戦の狙いの一つに、昨年キルギスで日本人技師拉致(らち)事件を
首謀し、現在アフガン領内に潜伏しているとされる「ウズベキスタ
ン・イスラム復興運動」のナマンガニ、タヒル・ヨルダシェフ両野
戦司令官の抹殺があるとしている。
コメルサント紙は、ロシアの特殊部隊の情報として、ナマンガニ司
令官らは今夏、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン三国にま
たがる「イスラム国家」建設に向けた新たなテロ行動を起こす計画
を立てている−と指摘。「クレムリンはこれをロシアと中央アジア
の同盟国の安全保障に対する致命的な脅威とみなしている」とし、
「予防措置」としてのロシア軍のアフガン領内での軍事作戦の正当
性を強調している。 

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