180−1.国際的な債務帳消しの動き(BBSより)



●ローマ法王「西暦2000年祝い、債務帳消しを」 

 「貧困や社会の底辺に取り残された人を見よ。借金があまりに
多すぎ、返済などかなわない。西暦2000年の祝いの年には、
債務の軽減、もしくは帳消しが最も好ましい」/ローマ市内で
このほど、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世が7月の沖縄サミット
に向けて、途上国の求める債務削減を呼びかけた。 
[2000/05/04 17:45] (朝日新聞) 
YS
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2000/05/01 日本経済新聞 朝刊 
〇…ジュビリー2000の運動はカトリック教会などが中心で、
先進国で唯一の「非キリスト教国」日本の姿勢が問われやすい
側面もある。同時に、重債務貧困国の約八割はアフリカ諸国だけ
に「旧宗主国の欧州各国は日本に救済させ、自分たちの対アフリカ
・ビジネスを維持したいという利害も絡んでいる」とのうがった
見方さえある。 

 だが、ジュビリー2000がサミット参加各国に大きな影響を
与えてきたことも事実だ。一九九八年五月、英国で開かれた
バーミンガム・サミットでは、発祥地ということもあって約七万人
が「人間の鎖」で会場を包囲した。 

 九九年六月のドイツでのケルン・サミットでも約五万人が
「人間の鎖」で会場を囲んだ。同サミットでは、議長声明で重債務
貧困国に対するODA債権の全額放棄、非ODA債権の九〇%以上
削減の方針が打ち出された。 

〇…国際的に活動するNGOの数は現在、数万ともいわれ、その力
はもはや軽視できない。昨年十二月の米シアトルでの世界貿易機関
(WTO)の閣僚会議の際、労働団体や環境団体などNGOが大規模
な抗議デモを展開して混乱し、交渉が決裂したことは記憶に新しい。
デモ隊は現場で携帯情報端末を使って連絡を取り合っていたという。 
 「NGOのネットワークが世界中に張り巡らされ、これが政府や
国際機関を突き動かす新しい構図が生まれつつある」。民間国際交流
団体「ピースボート」の設立者でNGOに詳しい社民党の辻元清美衆院
議員はこう指摘する。 

 沖縄サミットに向けては、ジュビリー2000日本実行委員会が
七月十九、二十の両日、那覇市内で国際会議を開く計画で、「ボノが
沖縄に来るかもしれないという情報もある」(井上礼子事務局長)。
同サミットの主要議題はIT革命だが、皮肉にも議長国・日本は世界中
とネットで連携しているNGO対策にも神経をとがらさざるを得ない。 
YS
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累積債務帳消し問題ですが、私のこの問題の見方は、「結局また日本は
いいように使われただけだな」というものと、「日本の政策の戦略性の
無さを示しているな」というものです。 

80年代の債務危機は、アメリカ、イギリスの銀行救済の為に日本は
出資する事になりました。Baker PlanやBrady PlanはLatin America
諸国を中心にHICs(Highly Indebted Countries)として指定する事で
結局はアメリカの銀行を救うPlanをたてた訳です。その時に、アフリカ
の小国は無視されました。アメリカの高金利政策や一次産品の下落など
により借金が自動的に増え、アフリカの借金国の負担はかさみ、ODA
などの援助が結局借金返済に回った訳です。結局ODAの大部分は開発の
為ではなく、借金返済の為に使われてきた事になります。 

日本は景気が良かった頃に多額の出資をしているはずです。アメリカ
などは80年代の債務危機で痛い目に会っているので、基本的には日本
に払わせておけばいいという感じだったでしょう。 

日本は「先進諸国でアフリカ諸国に武器を売っていないのは日本だけ
だ」という主張をしました。つまり日本やその外の国々のODAが多額の
武器・兵器の購入代金として他の先進諸国に還元されている事実を
指摘しようとした訳です。日本は出資して失うだけですが、他の国々
は出資しつつ金稼ぎをしっかりとしてきた訳です。そうすると、日本
以外の国の負担は全額帳消しにしても、実際は額面以下の負担で済む
事になります。さらに、現在アメリカはもちろんイギリスも景気が好
い時期です。借金がこれ以上膨らまないうちに自国の借金分だけを
全額免除にしてしまえばその後の負担が減る事は言うまでもありません。 

「重債務貧困国の約八割はアフリカ諸国だけに「旧宗主国の欧州各国
は日本に救済させ、自分たちの対アフリカ・ビジネスを維持したい
という利害も絡んでいる」とのうがった見方さえある。」という記事
がありましたが、これは旧宗主国であるヨーロパ諸国の本音であるの
は疑う余地はありません。日本は金だけだして人を送り込まないので
、植民地解放後もヨーロッパ人のいる地域であるアフリカで日本の地位
を築く事は極めて厳しいでしょう。日本の政治的影響力も極めて小
さい。日本の主張は「他の先進諸国も均一に負担すべき」というもの
でしたが、日本は相変わらず相手にされず、その主張もどこに行って
しまったのやらという感じです。 

結局日本に残されているのはアジアだけです。ここへの投資を行い、
現地に住み込める人材を作り送り出すとともに、各国のエリート層の
子供たちを日本の大学に招き入れ、日本の言葉と文化を教育しない事
には、結局は英語を話すメリットのあるシンガポール・フィリピン・
ホンコンなどの国と地域はすべてアメリカ・イギリスに持っていかれ
るでしょう。アメリカやイギリスの大学は留学生を受け入れる事で、
他の国のエリート層を作り上げているのです。この点で日本は100年
遅れています

柳太郎
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●ジュビリー2000の債務帳消し問題について 

ネット上でさまざまな議論が行われているようですね。 
現在私の方は、個人的な人脈を使って政治家や大学教授や官僚の方
と意見交換している最中です。この途上国援助の手法自体に、有効な
解決策が現状見出せていないため、その議論の多くが平行線を辿って
いるように思います。また、日本側に受け入れる準備ができていない
ことが、感情論となっているようにも思います。 

平成12年4月10日の「重債務貧困国に対する債務救済に関する我
が国の追加的措置についての官房長官発表」にて、政府は非ODA
債券の削減率の引き上げ(90%→100%に)と国際金融機関へ
の拠出額の上積みの追加措置を打ち出しており、事実上全額帳消し
を認めています。 

現在の焦点はその時期と方法をめぐるものとなっているようです。
日本政府は「債務帳消しは債務国の自助努力を損ないかねない」と
して40年間かけて債務と同額の資金を贈与する「債務救済無償方式」
を主張しており、2000年中を主張するジュビリー2000と食い
違いを見せているようです。 

政府は沖縄サミットで史上初の各国首脳とNGOの直接対話の場を
設ける構想を発表しており、5月29日に行われるジュビリー2000
を含めたNGOと大蔵省国際局との政策対話である程度方向性が決
まるのではないでしょうか。 

帳消し時期については、双方共に歩み寄りながら納得できる合意
を引き出して欲しいと思います。むしろ「債務救済無償方式」に
ついての議論を徹底して行って欲しいです。 

帳消し自体に対して私個人は賛成です。ビジネスマンとしての立場
からその価値があると判断します。この点は、各人の置かれた立場
や考え方によって違ってくるように思います。 

そのメリットについては、その多くをBBS N0.241(2000/05/04)
 にて柳太郎さんが非常に分かりやすく書いてくださっているので
参考にして下さい。 

ただし、国民が1兆円を超える負担をするわけですからこの金額に
見合う価値を求めることは当然のことかと思います。ここに従来
とは違ったNGOの姿に期待しています。 

私はよく投資起案書を作成しますが、その効果をどう書くかが腕の
見せ所です。対象が政府だけではないことを認識して一歩踏み込ん
で欲しいです。ちかいうちにその経験が政策決定などにも生かせる
時期が来るはずです。今のままでは「債務救済無償方式」によって
同じことが繰り返されるだけでしょう。 

このあたりを説明すると政治家の態度も変わってくることは経験済
みです。NGOとの協調関係への関心は非常に高いように思います。 

帳消しにともなうメリット・デメリットについて意見交換しては
どうでしょうか? 
またどうすればよりメリットを得られるかもおもしろいかもしれま
せん。 

このあたりの議論からなにか将来に向けた希望のようなものが出て
くるような気がします。 


重債務貧困国に対する債務救済に関する 
我が国の追加的措置についての官房長官発表 平成12年4月10日 
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kanbo/index.html 

ジュビリー2000福岡−ニュースアーカイブ 
http://www.windfarm.co.jp/members/jubilee/

YS

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