どうも、こんばんは。 光舟です。 昨日(4/23(日))付けの日経第3面に、通貨供給量の記事が 載っておりました。 見出しには、「名目GDPの1.28倍」「通貨供給量 バブル期 上回る膨張」とあります。 この通貨供給量の額、622兆円。。。 ロシア債務危機を受けた金融緩和での米国・ユーロでも、 名目 GDPの0.5〜0.6倍と紹介されていますので、 平たく言え ば、世の中にバブル期以上の資金があふれていると言うことなので しょう。 その原因として、記事では、日銀が大幅な金融緩和で潤沢に資金を 供給し続けたこと。 それにもかかわらず、過剰債務を抱える企業は借り入れ、設備投資 に慎重だったことから、 その結果、マネーを大量に供給した割には、 実体経済には資金は流れず、 この潤沢な流動性は、株式相場などの 下支え要因になっていると分析しています。 この日経の分析につき、わたくしは基本的に同感です。 ただ、この分析を基本に今の現状を見直すとおかしいところもある。 何がおかしいかというと、バブル期を上回るこれだけの資金が世の中 にあふれている。 にもかかわらず、バブル期と同じような我が国の株価ならびに土地の 価格は、バブル期と同じ水準にない。 一度痛い目にあったからといっても、この通貨供給量からすれば、今 よりも大幅な高値で安定しているはずであろう。 このように考えると、株価や土地に供給された資金が大幅に流れ込ん でいるわけではない。 株式市場や不動産市場の代わりに大幅に相場が上昇したという分野も 聞かない。 わたくしがおかしいと思うのは、この莫大な通貨供給量の行き先です。 これが国内に留まっているのであれば、バブルと言って差し支えない 現象が生じてもおかしくないが、 そのような事象は残念ながら見受け られない。 この供給された通貨は、もはや国内に存在しないのではないか?という のが、わたくしの推測です。 このようにバブル期と同じように通貨供給量を増やす政策を採りながら 、なぜ同じ結果が生じないのか? それは、当時に存在した「制度」が大幅に変更された点にある。その 制度とは、「外国為替管理法」です。 当時の外為法では、国内にある資金を国外に持ち出すのは、大幅に制限 が課されていました。 その結果、日銀により資金が潤沢に供給されても、その資金は国外に 流出することはなく、 行き場のない余剰資金が、株式市場や不動産市場 に大幅に流れ込み、大幅な盛況を生じ、バブルと化したものと 考えら れます。 しかし、現在では、外為法は改正され、ほぼ自由に資金を持ち出すこと ができるようになりました。 その結果、日銀がどれだけ潤沢に資金を供給しても、その資金は、国外 の有利な市場に流出するため、 相対的に魅力のない国内市場に留まら ず、国内市場の盛況すら導けなくなった。 (こういう観点から、個人的には、戦前の「金解禁」と同じだけの インパクトが外為法改正にあったと思います。 外為法改正により、不利益もいくつかもたらされましたが、反面、 手数料が下がるとか自由化が大幅に促進したというメリットが存在した のも事実です。 これが良かったのか悪かったのか、あと2,30年 経って冷静に見ないと判断できないのが実感です。) もっとも、外為法の改正を前提に考えても、国外市場に比べて国内市場 が比較優位であれば、 供給された余剰資金は、国外に流出することはな い。 しかし、現に流出しているところを見ると、国内市場が比較劣位にある といえる。 比較する基準も、実体経済の強さやら自由度などいろいろとありますが、 一番大きい基準は、利回り。金利差です。 どこの国外市場と比べて比較劣位なのかと言えば、米国市場。特に N.Y.株式市場です。 そして、米国での金利と日本での金利の差がどれだけの落差があるかは、 周知の通りです。 国内で資金を運用するよりも、国外で資金を運用した方が有利なことは、 火を見るよりも明らか。 この比較劣位の根本的な原因は、日銀の『極端な低金利政策』にあります。 何故、日銀(大蔵省も含めるべきか?)は低金利政策にこだわるのか。 「資金の流動性を高め景気を刺激する」というのが、お題目ですが、 先に触れたように、資金の流動性を高めても、肝心の資金が国外に流出す るようでは、 景気の刺激にはほとんど結び付かない。 この低金利政策 は、実質的に国内金融機関の保護にあります。 外為法改正後において、日銀の低金利政策は国内金融機関の体質強化だけ に目を向けているだけでは、 「木を見て森を見ず。」 かえって経済 政策の本筋を誤る可能性がある。そんな気がいたします。 しかしながら、この低金利政策を転換して金利を上げるとなると、 国内市場が比較優位を取り戻す結果、 国外に流出していた資金がほぼ 必然的に国内にもどってくる。 これは、実質的にN.Y.の株式が大幅に下落する可能性を含むもの です。 この事態を米国の当局者が黙って見過ごせるでしょうか? おそらくは、日本の担当者に低金利政策の維持を求めるでしょう。 ここ最近のN.Y.株価の下落と日銀速見総裁の低金利見直し示唆発言 の関連も、調べてみれば面白いかもしれません。 もっとも、かかる要求に対して、日本の当局者が拒否することはできない でしょう。 日本が米国債を巨額に買い貯めているのは周知のことですし、これを 売ると発言することも事実上禁じられているのも周知のことです。 穿った見方かもしれませんが、この米国債が紙屑になれば、日本は今 と比べられない膨大な不良債権を抱えることになります。 かかる事態 を避けるために、日本の当局者は必ず米国の当局者と妥協せざるを 得ないでしょうから。 (このような状況が続けば、おそらくは、日本の国庫が底をつくのが 早いか、それとも米国債が紙屑になるのが早いかのチキンレースになり かねません。 これ以外のシナリオがあればいいのですが、今のわたく しの想像力では、いまいちイメージできません。 ) 国外に自由に流出することを知りつつ、資金供給量を大幅に拡大させて いるのか。知らないでやっているのか。 国外に資金が流出しているが、極端な低金利政策が、よりこの資金流出 に役立っていることも知っているのか。 何はともあれ、今の経済政策担当者がどのようなところまで認識して 政策を決定しているのか興味があります。 以上、経済学を勉強したことはありませんが、思いつくまま筆を走らせ てみました。 いかがでしょうか? >>> 光舟 〜悠久の神州(休止中)〜 http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1388/ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (Fのコメント) その通りでしょう。貯蓄合計1200兆円は、世界に投資さ れているのです。この資金が日本に還流すると、米国の資金は 不足して、株価下落の方向になるはずです。 このため、G7で、金利上昇の日銀総裁の見解を否定する圧力は たいへんなものでした。日本景気回復感は米国等への輸出によるの ですから。日米は一体ですよ。経済的には。 しかし、米国の株価下落は、決定的でしょう。今後、緩やかに 株価下落になるので、専門家は短期売買で、下がれば買う。 上がれば売る。しかないと言っている。そして全体的に下げの 方向だそうです。 しかし、暴落はない。下がれば、買う人がいるため。徐々に下がる。 米国の問題は、今までインタネット産業により景気が上がった のですが、このインターネット商店企業(B2C)の業績が、よく ならないのが問題。赤字のまま。このため、ナスダックが大幅に下 げている。 第3次産業革命は一段落したのではないでしょうか? 今後は、このインターネット革命が、日本化されて、日本の産業 を活性化することを期待したいですね。そうしないと、米国の景気 後退に日本も巻き込まれることになり、日本の浮上はなくなることに なってしまう。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− (YSのコメント) 光舟さんの原稿おもしろいですね。 でも理由は簡単です。 日本の証券会社を含めた機関投資家に 資金「運用」能力がないからです。 日本の証券会社は現在資金回収窓口店にすぎず、 運用はほとんどが外資です。 新聞広告を見れば一目瞭然です。 一時期かなり頑張っていましたが今は完全に 敗北してしまったようです。 これはアメリカが悪いのではなく 日本の問題です。 ================================ YS/2000.04.23 この記事は特に重要です。 今後の日本の政局と株価に大きな影響を与えるはずです。 ========見落としてはいけないニュース========== 2000/04/23 朝日新聞 朝刊 国ごとにばらばらに定められている企業会計ルールを、世界統一の単一 基準にしようという取り組みが欧米を中心に始まろうとしている。イン ターネットの発達などで国境を超える企業取引、金融取引が活発になり、 「市場」は1つになっているのに、企業を評価する尺度が国ごとに違う のは、投資家にとってもまずいからだ。そのため、国際会計基準委員会 (IASC)は来年初めにも、主要各国の有力な会計専門家を集め、予 算規模も増やした組織に全面的に衣替えする。ところがルールづくりを 担当する理事会に日本からメンバーを送り込めない可能性が出ており、 関係者は危機感を強めている。理事会メンバーは今年後半にも選出され る予定だ。まず、そのメンバーの選任権をもつ評議会(委員19人)が 来月にも決まる。日本はここに、三井物産の福間年勝副社長と公認会計 士の田近耕次氏を推薦しており、2人が選出されるかどうかが日本代表 理事の実現のカギを握る。新IASCの理事に代表を送り込めないと、 新基準づくりに影響力を行使できなくなる。その場合、日本の経済シス テムや商慣行などがまったく考慮されずにルールが決まる可能性があり、 日本企業には不利になる。だが、昨年12月に開かれた指名委員の選出 で、日本は7人枠に代表を送り込めなかった。指名委員会は評議会の指 名に影響力をもつことになり、いわば理事選出レースの「前哨戦」だっ た。指名委員に選ばれたのは欧米代表が中心で、アジアから選ばれたの は香港の証券監視当局トップだった。この結果に大蔵省や公認会計士業 界などの関係者は一様にショックを受けた。相次いで破たんした大手金 融機関で粉飾まがいの会計手法が明らかになり、日本の企業会計への信 用が揺らいだためだった。関係者の1人は「日本の会計制度への評価が そこまで低かったのかとがく然とした」という。日本公認会計士協会の 奥山章雄副会長は「IASCには絶対に代表を送る。このままでは日本 の会計基準が世界で孤立してしまう」として、対策の一環として企業会 計ルールづくりの主体を大蔵省・企業会計審議会から、民間運営の新組 織にゆだねることを提案した。日本企業の財務内容に対する国際的信頼 性への影響を憂慮する経団連もこれに賛同。現在、この3者と証券業界 が中心になって新組織について検討に乗り出している。 2000/02/17 日本経済新聞 朝刊 『だれが作る日本の会計基準(下)「世界市場」への対応― ―主導権獲得へ理事選出。』 「ルービン(前財務長官)を候補に考えているのだが」――。一月中 旬、米証券取引委員会(SEC)を訪れた大蔵省金融企画局の課長補佐 は、面会した幹部の一言に色を失った。 会計の国際統一基準作りを進めてきた国際会計基準委員会(IASC) は今年五月、全面的な組織改正に踏み切る。会計基準を強制的に各国に 徹底させる事実上の世界基準設定機関を目指すといわれる。新生IAS Cを運営する「評議委員会」の十九人のひとりに、ルービン氏を推すと いうのだ。「評議委員会」は実際に会計基準を決める「理事」の選任権 を持つ。 日本代表としてIASCの理事会に出席している山崎彰三・日本公認 会計士協会常務理事は、「基準作りの主導権を握ろうという米国の戦略 が鮮明になってきた」と言う。「世界基準を米国基準と同質化すること を狙っている」 米国は長年、国際会計基準は米国基準よりも甘く問題だとしてIAS Cに距離を置いてきた。その米国が戦略を変えたのには訳がある。九〇 年代後半から欧州やアジアを中心に、国際会計基準を採用する国が急増、 事実上のグローバル・スタンダード(世界基準)となったためだ。 米国が会計の世界基準を牛耳ろうとする背景には、急速に進む資本市 場のグローバル化がある。ナスダック・ジャパンの創設や、取引所の連 携による世界株価指数の算出など、「世界で一つの資本市場」へと変ぼ うしつつある。新IASCでの主導権争いは、グローバル市場のルール をだれが作るのか、という問題にほかならない。 「新IASCに日本人を送ることができないと、欧米が決めた基準を 唯々諾々と受け入れることになりかねない」と会計士協会の幹部は言う。 日本は新IASCの「評議委員」候補として、田近耕次・監査法人トー マツ前会長と、「日本で最もマーケットを知っている企業トップ」(経 団連)として福間年勝・三井物産副社長を推している。 会計士協会や経団連、大蔵省には、「今度こそは」との思いがにじむ。 この前哨戦ともいえる評議委員を選ぶための「指名委員」七人には昨年 末、日本ではなく香港が入ったのだ。 国内で会計士協会や経団連が民間の会計基準設定機関づくりを急ぐの も、IASCの動きに密接に関係している。「日本が理事を出すには、 欧米並みの会計基準づくりのインフラを整える必要がある」(藤沼亜起 ・国際会計士連盟次期会長)という見方が強い。 「大蔵省は会計基準づくりは民間に任せて、マーケットへの監督機能 を強化する方法を考えるべきだ」と塩崎恭久参院議員は言う。米国の世 界戦略は会計基準設定にとどまらず、グローバル化した市場をだれがど う規制するか、という問題にも及んでいるからだ。 塩崎氏が委員長を務める自民党企業会計小委員会は今後、直接金融市 場を一元的にみる機関としての証券取引等監視委員会の改革を議論する 方針だ。今年スタートする金融庁は銀行行政にウエートがかかり、直接 金融市場への対応が十分にできないと懸念する。 実際、金融システム不安と大蔵省から金融庁への移行というタイミン グが重なったため、日本の直接金融政策は後手に回った。大蔵省にも「 米SECと親密な関係にある幹部はいなくなった」(金融企画局幹部) と悔やむ声がある。 会計基準の設定機関問題をどう決着するのか。日本がグローバル・マ ーケットに対応できるかどうかの試金石でもある。 (この連載は証券部の磯山友幸が担当した) 1999/12/17 日本経済新聞 朝刊 会計の世界基準づくりを進めている国際会計基準委員会(IASC) はオランダで開催中の理事会で、来年に予定している新組織への改組案 を正式承認した。十四人で構成し、会計基準の決定権限を握る強力な理 事会を設置する。理事会の選任権を持つ評議会メンバーを選ぶための指 名委員会も決めたが、七人の委員に日本は選ばれなかった。理事の選任 などに影響するのは必至で、世界基準づくりに日本が影響力を持てなく なる可能性も出てきた。 指名委員会のメンバーに選ばれたのは米証券取引委員会(SEC)の レビット委員長のほか、ウォルヘンソン世銀総裁ら七人。英国とフラン ス、香港の証券監視当局のトップや、世界五大会計事務所の一つである デロイト・トウシュの最高経営責任者(CEO)、独シーメンスの監査 役会メンバーも加わった。 日本は国際派の公認会計士や大蔵省の大物OBを候補として調整して きたが、主要七カ国の中ではカナダとともにメンバーを送り込むことが できなかった。今回の人選では米SECが主導権を握った模様で、今後 の世界基準づくりに米国が大きな影響力を持つ可能性が強まってきた。 日本代表として会議に出席している山崎彰三・日本公認会計士協会常 務理事は「目に見える形で会計基準づくりを担う国内組織を整備しなけ れば今後、日本は基準づくりにまったく参画できなくなる恐れがある」 と危機感を強めている。