柳太郎です。 何度も同じテーマで返事を出す事になり、特に他の皆さんには申し 訳ありません。今回は反論ではなく、自分の思っている事をもう一度 書かせてていただきたいと思います。 > 私が会話する欧米、中国人のほとんどは自国の弁護はするが、自国 > を悪くいう人がいません。自国が悪いと本人も思う時は、会話をずら > すようです。日本人はほとんど歴史を知らないため、相手の言うこと > を無条件で認めることが多いようです。このため、後々問題を起こす > のです。 その通りです。私の周りで実際にあった事ですが、「日本人はお金が あるから海外に行ってもいろんなところでちやほやされる。韓国や中国 でもそうでしょ?」と平気で韓国人に言って、思いっきり批判され、 歴史の話をされて結局謝っていたという情けない女の子がいました。 > 自国民の感情を考慮に入れずに、諸外国の感情を見て外交をしろ > というのですか?これはこれで一方的ではないですか? 日本の場合、冷戦下のアメリカとソ連のような体制・イデオロギーの 違いだけではなく、中国などとは「過去」が絡むので、日本の国民感情 だけでなく、相手の感情も見る必要があるという事です。外国だけを 考えて政治をする政府なんて誰も望まないのは明らかですから。 > 自国民の感情と外国の感情をバランスさせないと、自国民の反動が > いい結果を生まないと思うが?村山首相以後の日本政府は、あまり > に中国と韓国、北朝鮮に配慮し過ぎていたが、この配慮が国民の > 反発を生み、日本の国民が不満を持つことになったと感じます。 私との違いはきっとここだと思うのです。つまり、「日本政府が対外 感情を考慮しすぎたから」ということと、「韓国・中国の対日感情が きついから」という2面を見るべきだということです。この根拠は、 去年か一昨年かは忘れましたが、金大中が来日した時には歴史について 言及せず、そのすぐ後に朱鎔基が来た時に相変わらず歴史歴史と言って 帰った後、日本の韓国・中国に対する国民意識調査がありました。 ここでは、韓国に対しては大幅に日本人の国民意識が改善している のに対して、中国に対してはそれまでよりも悪化していたと思います。 つまり、日本政府の政策に対する不満が主であるなら、そこにそれほど 大きな変化はないはずです。もし、日本人が強行的な対韓国意識を持って いたとしたら、韓国に対する感情が変わる余地も少なかったでしょう。 ですから、かつてBBSの方で議論をした時に、「韓国・北朝鮮では政府が 国民感情(または、Nationalism)を駆り立てるような事はいいかげんやめ てほしいものだ」と書いたことがあります。しかし、たかが60年に満た ない歴史で、植民地支配を過去の物にしてしまう事も難しいでしょう。 私は、この両面を見る必要があると思います。及び腰な政府の態度に不満 を感じている日本人も大勢いるでしょう。しかし、そこで強行的な感情 を国民に植え付ければ(政府がそうすれば国民感情もそうなるでしょうか ら)、韓国や北朝鮮・中国などとしている事が同じになってしまう。 力と力では摩擦を生み、亀裂を大きくしてしまう。 原因が日本の植民地支配である以上、日本は心を閉ざしている相手国民の 感情を汲み、理解を示していかなければ、長期的に考えると不毛な歴史 を繰り返すだけに思えます。韓国も、対日感情を強めるだけでは現代 では生き残るのは難しいと理解してきたのかもしれません。 最近の動きがそれのように感じます。 > 中国は、相当にきたない言葉「日本を火の海にする」等で脅しを > 日本に向けて、行うことがあるが、この声明に対し、抗議を日本政府 > はしていないのです。一度、北京にいるとき、声明が出て、さて > どうなるのだろうと思ったこともあります。しかし、この声明は、 > 柳太郎さんによると、中国の外交としては当たり前だというのです > よね。日本の知事が言うのはいけないが、中国の唐外相がいうのは > いいのでしょう。中国にも、相当多くの日本人がいるのですよ。 > その日本人はどう思うか想像してください。このような状況は > 日中の関係にいいわけがないですよ。実感として。 もちろん中国の発言がいいわけがないのです。それによってお互いの 国民感情を害しますから。石原慎太郎が中国に対して「一体何様のつもり かねぇ」と言うのも構わない。以前にBBSで書いたとも思うのですが、 日本は強く出るところでは強く出るべきです。直接脅しをかけてくる事 があるなら、日本政府はしっかりと抗議をするべきです。この点はFさん と何ら変わる事はないと思います。 が、気になるのは、それが国民の感情にどのように反映されるかです。 相手が脅してきた時には政府はしっかりと対応すべき。しかしこちら から相手の感情を逆立てる事は絶対にしてはならない。その意味で、 今回の「石原発言」には強硬に反対したのです。案の定、反日感情を 書き立てたし、日本でも安易に同意した連中がいたんじゃないですか? > 1960年代・70年代に、日本は韓国に投資したが、韓国は > 反日的で、少し韓国の人を注意すると労働争議を起こされ苦労し > たのです。これは私だけではなく、NECの元小林名誉会長も > 同様な経験をしている。そして、日本の経営者の多くが韓国投資 > を80年代に撤退しているのです。この経験から、反日的な雰囲気 > がある韓国に再度投資するはずはありません。柳太郎さんは傲慢と > いうが、どこが傲慢かわかりません。 私もこれらの問題は以前にいくつかの話を読んだ事があるので知って います。日本企業が技術協力として出向き、期限が切れたらそれが日本 の利益として返ってくるのではなく、「はい、さようなら。後は自分で やるから帰ってくれ。」になる。その他、技術使用料は極めてやすく 押さえられるなど、日本にはあまり利益として返ってこなかった。 > このため、部品等の補給を80年代以降、韓国におこなって > いたのですが、この部品を韓国は80年代作りたいと言い始め、 > 日本の新聞は日本の傲慢で韓国に技術を提供しないと書いた。 > しかし、反日に懲りている部品製作会社は、韓国に行きませんで > した。反日的な雰囲気では、出て行けない。 その通りでしょう。 > しかし、韓国は、その後、技術と金を米国の技術と短期資金に頼っ > たが、その資金を引き上げられたため、大きなダメージを受ける > ことになるのです。IMFの資金導入するが、この資金は、緊縮 > 経済にすることと引き換えであり、韓国は更に大きくダメージを > 受けたのです。 韓国の経済危機が、タイの金融不安・危機の伝染によるものだったと いうのは不幸でした。が、このような国内・国際環境の変化が日韓関係 の改善に向かう力となるとしたら、日本での反韓国感情が比較的強く なかったという点で、今後それなりにスムーズに行くことが期待できる かもしれません。金大中の念頭にはそれがあるはずです。日本の投資 を呼びかけてますし。 ところで、韓国の国民意識が改善し、日本の資本導入に頼っても、 90年前半に日本ではバブル経済が崩壊し、97・8年に経済危機が韓国 で起きたという点で、アメリカ中心にしかなりえなかったでしょうね。 結果論ですが。 > これを救ったのが、日本からの資金援助40億ドルです。 > その後、金大中大統領は日本の文化解放、日本との自由経済圏を > 提唱し、韓国国内で反日的な言動をしていないのです。このため、 > 日本人旅行者が100万人も韓国に行くようになってきて、正常 > な2国関係を築けるようになったのです。 日本の資金が救ったと言うのは少し大袈裟かもしれません。IMFの資金 援助は210億ドル、その他の援助をあわせると、日本の援助額として は極端に大きいとは言えないと思います。それよりも金大中結構思い 切った事をできたと思います。財閥解体までは行きませんでしたが、 IMFのあの間違った処方箋で何とかもったのですから。 反日感情が少なくなったから韓国に行く人が増えたというのはその通り かもしれません。が、日本側に反韓国的感情が強くなかったことも 見逃してはならない。 つまり、片方が欠けても良い方向には向かわないという事です。 日本の態度が敖慢になるかどうかは、相手がどう捉えるかであると 言った事から考えなくてはいけないのでしょう。金大中が大統領に なる以前に、アメリカの態度が敖慢な為にアジア諸国の対米感情が悪く なっていると非難したことがあります。私が言いたかったのはここ です。 > 中国は、法律解釈は人によって大きく変わるので、地方政府の > 役人が変わると、増税されたり、大変です。これも、裏に反日性 > 反米性を感じるので、もし、中国ビジネスをしたいなら、中国人 > にビジネスを任すしかないようです。ほとんどが損になるが。 中国とは体制・イデオロギーの違いから親日、親米になる事を期待する のは難しいのではないでしょうか?しかし、中国はこれ以上の経済発展 を望む以上、国内企業の体質を変え法整備をしてていかなくてはなら ないのも事実でしょう。そこに変化を期待するしかないのかもしれま せん。中国がどのように解決するのかは分かりませんが、頭が痛いと ころだと思います。 ところで、中国人はどうも自国にある企業は自国の物だと思っている ようです。 イギリスでビジネスを専攻している複数の生徒が日本の「日清」と イギリスの「香港・上海銀行」を中国の企業と信じていますから。 なお、Fさんに薦めていただいた論文は現在忙しくて読めませんが、 後日必ず目を通させていただきます。 ================================ (Fのコメント) 柳太郎さんと私は、国際的な物の見方は同様ではないかと思います。 違うのは、私は日本と中国・韓国の現状を見ているし、この3ケ国の ビジネスマンと交渉している。ビジネスのため、お互いのナショナリ ズムを押さえて、企業利益を図っているため、対応がマイルドです。 一部の中国のお役人さんは狭い国益や私利私欲の人である場合があり ますが。 それに比べ、柳太郎さんは、英国で、国際関係を学問として、また ナショナリズムの激しい観念論の学生と対応しているから意見の相違 があるのではないでしょうか? 日本人は、反中国でも、反韓国でもありません。このため、中国や 韓国の反日的対応が鏡に反射するような感じで反中・反韓国になるだけ ではないでしょうか?私もビジネスを通じて、反中国や反韓国になる ことはありませんし、日本人はアジアの仲間として対応しているように 感じます。しかし、反日的対応に中国や韓国で会うと、その瞬間は、 反中国や反朝鮮になることも事実です。 日本人ビジネスマンが現在傲慢というようなことはないはずです。 韓国系企業が中国で傲慢だと聞いたことはありますが、日系企業が 傲慢とは聞いたことがありません。ほとんど、日系企業は赤字でし ょう。中国人は短期的視野でしか相手を見ない。信頼感を得ることより、 今の利益を考えてしまう。このため、日本的ビジネス感覚となかなか 合わない。しかし、徐除に日本的信頼感、日本的ビジネスが分かる人 が出てきたように感じる。この人たちが日中を繋いでいくのでしょう。 日本サイドも、中国ビジネスの難しさを理解し、この解決が中国での 経営者育成から始める必要を感じているのです。国営企業との合弁 はあまりうまくいっていないことによるのだと思いますが。