158.「明らか」に偏った考え方を信用するな!



柳太郎@Londonです。No.149への反論です。

「醜い(みにくい)韓国人」(パク・テヒョク)についてですが
、私もこの本は読みました。(今現在本が手元に無いので、記憶で
書いていくことをお許しください。)確かに日本の植民地時代の
よい面を書いている部分が多くあり、韓国の現在の社会問題を多く
を取り上げ、批判する内容となっています。が、これが帝国主義を
肯定することになるのでしょうか?

> それは日帝時代のことを書いた本なのですが、現在日本は韓国から
> も執拗に謝罪を求められてますよね、ところがそれは政府やマスコ
> ミのポーズであり、実際その時代を生きた韓国人の方々は、大部分
> が日本人を敬愛し、懐かしんでいるとのことです。

まず、上記の内容には誇張があります。「日帝時代を懐かしむ」と
いう記述はあったとおもいますが、これはなぜでしょう。

私は韓国人の友人が多くいるため、いろいろ議論になることも多く
ありました。
その中の話として印象に残っているものが一つあります。私の韓国人
の友人が韓国で飲み屋から帰宅しようと店の外に出たところ、年輩
の人たちが何人か日本語で日本の古い歌を歌っていたのを見たそう
です。もちろん私の友人は何を歌っているのかはわからなかったそ
うですが、日本の歌であるというのは知っていたそうです。そして
、その人たちは私の友人にこう言ったそうです。

「いいか、これはおれたちが歌うのは許されるが、おまえたちは歌
うな。」

これは決して作り話ではありません。私の友人とは、かつて植民地
時代に親日派として、日本の植民地主義に反旗を翻さなかった人た
ちの子孫です。ですので、その友人は一つの笑い話としてしかとら
えていなかったようですが、私はこれを聞いて正直哀しい思いにな
りました。つまり、その韓国人の年輩の人たちは、昔を懐かしむに
も日本の占領下の記憶しかないのです。懐かしいと思う気持ちを否
定したくても、そうできないでいるのです。これは決してにほんの
統治が良かったからということで片付けられる問題ではないでしょう?

私の年齢は、先の文を書かれた「えりか」さんと同じようなものです。
ので、そんなに年をとっているわけではありませんが、今になって
分かるのは、自分が中学・高校・大学生の頃に覚えた歌が今流行の
よりもしっくりくるということです。もちろんその頃流行ったもの
を聞くと懐かしい気持ちになります。皆さんもそうではないでしょ
うか?

私の親友で祖父が(在日の)韓国人である者がいますが、その友人
がソウルで知り合いの韓国人といっしょに日本占領期の資料館(正式
な名前は忘れました)を訪れたとき、ある年輩の人に「ここは日本
人が来る場所ではない。帰れ!!」と言われたそうです。友人は大き
なショックを受けていました。

パク・テヒョクのこの本でのテーマは「行き過ぎた韓国内の反日感情
と制度的な弊害(腐敗した政治・女性の低い地位など)」です。これ
らに怒りを感じ、その感情に満ちています。「日本の植民地主義の
方がましだ」的なことを行っていますが、この本を読めばそれが逆
説的に書かれていることが分かります。つまり、本人は韓国が好き
であり、更なる発展を期待しているにもかかわらず、なかなかそう
はならない韓国の現状に苛立ちを覚えているわけです。

それを、厳しい言い方をしますが、「無知」が以下のような内容を
助長します。

> 何故なら、日本は季朝末期の乱脈な韓国を立て直し、韓国の近代
> 化に大いに貢献し、日本の役人は例外もあっただろうが、きわめ
> て清廉で誰に対しても公平な態度で執務をしたとのこと。
>
>  まず日本はむりやり韓国を統治したのではなく、合意の上で併合
> し、日本は莫大な金額を韓国の為に投資し、韓国の産業のあらゆる
> 分野において近代化をもたらした。他国で、このようなことを植民
> 地に対して施した国はないそうです。又階級制度を撤廃し、学校を
> 倍増して、常人やのびとよばれる人々の学歴をあげた。のてう大統
> 領も日本人の恩師を大統領官邸でもてなしたそうだ。又、当時の日
> 本軍は非常に立派であり、他の範となるべきものだったそうだ。 

「えりか」さんは、日本の韓国に対する謝罪に対して嫌悪感を覚え
ながらも、それに対して多角的に研究をしたこともないし、韓国人
の知り合いなどもいないのではないでしょうか?だから日本人に都合
のよい面だけが見えてくる。また、韓国内でどんな議論があるかな
んてことにはあまり興味が無いように伺える。「日帝時代」という
言葉を意識せず使ってるように見える。植民地化における韓国人に
対する差別感情を理解していないし、脱亜論的感覚を知らない。

もしそうだとすれば、このMMのテーマである「世界平和」なんてこ
とを口にすることはできないでしょう。
韓国では、反「日帝」感情が強く、それに対する本は多々あるよう
です。が、帝国主義の負の面を強調することはあっても、正の面を
見ることはきわめて希。更にそんな事を言おうものなら社会的に抹殺
されかねなかった。パク・テヒョクはそれに彼自身のシャーナリスト
としての信念をぶつけたわけです。「この国に発言の自由はないのか
」と。

そこで生まれたのが、この強い調子の論調だというわけでしょう。

なのに、彼の言っていることの論旨を理解せず、書いてあることを
鵜呑みにしてしまうのは「無知」のなせる業です。発言は自由でし
ょうが、しっかりと自分なりに研究してからにしてほしいものです
。話は少しずれるかもしれませんが、少し前にSamuel P. Huntington
の「文明の衝突」が日本で話題になりましたが、それを鵜呑みにし
ている人たちが多かったのではないでしょうか?まるでHuntington
が言ってることが本当だと信じている人たちが結構いたんじゃないで
しょうか?彼の議論に反論しようがしまいが、Huntingtonの国際関係
学者としての理論的立場がどのようなものかといったことを理解して
いた人たちはどのくらいいたんでしょう。そこから出てきた
イデオロギー的発言を読み取れなければ、あの本を読む意味は半減
します。パク・テヒョクの場合も同じです。

この本は確か最初に韓国で発売された本だったと思います。この本の
どこかに書いてあったと思います。さらに彼はジャーナリストで、
娘を持ち、行き過ぎた反日感情に異論を唱えることを基に書かれて
います。つまりこの本は韓国人に対してかかれたものです。ただ、
韓国を嫌うものではありません。元のタイトルは確か「レ・ミゼラブル」
の様な感じのものだったと記憶しています。つまり、韓国を愛する
がゆえに嘆いている本であり、日本の植民地支配をを賞賛するものでは
ありません。韓国人の間での、日本の植民地支配が弊害をもたらした
という議論を「前提」に、それに対する反論部分だけを強調してか
かれていると読むべきです。論旨を見誤っては行けません。
「醜い韓国人」などというのは日本で売り出すために後につけられ
たタイトルです。

ちなみに、日本植民地主義を賞賛する本で、日本人の気持ちをくす
ぐる本としては、台湾人の方が書いた「親日の台湾、反日の韓国」
といったようなタイトルの本を挙げておきましょう。(これも手元
に無く、タイトルは確かではありません。)これは日本の植民地支配
を賞賛する本です。が、少しでも開発学における帝国主義の影響に
ついて学んだことがある者ならば、彼がMarxistまたは、その考えを
真似ている者である事が分かるはずです。正直この本には日本での
商売的なきな臭さを感じます。また理論構成として、韓国と台湾を
同列、同質に扱っている点であまり文献的な価値はありません。
何か反日感情に対して不満を解消されたい方は読んでみてはいかが
でしょう。

植民地時代に「いい事もした」発言をするのは日本だけではなく欧米
の学者間でも見られます。そこで学んだ韓国人の間でも、日本の
植民地支配がもたらした正の面に着目して論文を書いているもの
もいます。(経済的な側面に偏っている気がしますが・・・)その点で
、パク・テヒョクは間違っています。たとえば、インドを例に挙げる
と、「イギリスは鉄道などのインフラを整備し、イギリスで教育を受
けさせる機会を少なからず与えた。それが社会の近代化に結びつき、
資本主義を導入することになった。イギリスで教育を受けた者たちは
自国に戻り、イギリスで身につけた平等の概念と民主主義の概念を基
に独立運動を発展させることができた。」というものです。インドが
今国家としてありえるのは、イギリスのおかげだというわけです。

われわれ日本人は、植民地主義により植民地化された国の人々の
気持ちを理解して発言をするべきです。日本が韓国を植民地化したの
は、韓国経済を発展させるためではありません。韓国国民に教育を施
すためではありません。もし純粋にそうであったなら、皇民化政策は
必要なかったわけです。結果論「だけ」で植民地政策を語ると見る
方向を誤ります。結果的に、韓国にとって益になったことはあるかも
しれない。でも、それは彼らの選択ではなかった。その裏では反日運動
が起こり、虐待が行われた。多数の死傷者が出た。日本の戦争に朝鮮
人民が使われ送り込まれた。

もしアメリカ人が「日本が戦後アメリカに占領され、民主化が行われ
た。すばらしい平和憲法が与えられた。その後アメリカ軍が日本に
駐屯しているのは日本のためである。日本の安全はこれによって保障
され、日本はアメリカに感謝はしても、反感を持つことはおかしい。」
と面と向かって言ってきたらどう感じますか?
もし、天皇が東京裁判で死刑になり、天皇制が廃止されていたら、
その後の日本でのアメリカに対する感情はどうなっていたでしょう?
日本人は1895年に「閔妃」をレイプ・殺害しています。

韓国・北朝鮮の反日感情に異を唱え、反西洋感情に訴える人たちが
いるようですが、その精神構造を疑いたくなります。自分たちの
やったことを棚に上げ、人を批判する。アメリカによる戦時下の
アメリカ国内での日本人強制収容は口にしても、関東大震災時の
朝鮮人虐待・殺害は口にしない。

私は別に韓国・北朝鮮側の人間ではありませんし、反日感情を指示しよ
うとも思いませんし飽き飽きしています。が、日本人であれ、韓国人
であれ、アメリカ人であれ、何人でも、「明らか」に偏った考え方し
かできない人たちの言うことは信用ならないのです。パク・テヒョク
がその本で韓国人に対して「大人になれ」と訴えかけているように、
日本人ももっと大人になるべきでしょう。

ちなみに、Kazuさんのおっしゃる日の丸に書き込みをすることに関し
ては、真ん中に「神風」などと書かずに「闘魂」や「がんばれ、日本」
と書かれてある分には構わないとおもいます。外国人がどう思おうと
、知ったことではありません。
日本人がそれを見てどう思うかです。
===============================
(Fのコメント)
 諸外国の例を出しているように、各国は自国の植民地政策を正当と
いっているのです。これは、当たり前です。自分から進んで悪いと
いう必要はないと思います。正当な評価が日韓で相互に会話できる
状態になるまで、待てばいいのです。そうしないと、感情問題を起
こしてしまいます。柳太郎さんの言い方では、日本だけが謝りなさいと
聞こえてしまい、日本人の感情として、受け入れられないものがある。

 国際外交ができる前提は、自国民の感情を考慮する必要があるはず
です。その範囲で外交や国際戦略を考えないと、国民感情を害し、
いい関係が国際社会と築けません。そこのところを考えてほしい
ですね。国際理論の問題ではないですよ。国民感情の問題です。

 このような感情問題は、お互いが冷静になるまで、両国の関係を
無理に友好関係化しないことであると考えます。しかし、このごろの
韓国を見ていると、反日的な雰囲気が無くなってきたので、日韓の
経済関係を復活することも視野に入れる必要が出てきたように感じ
ます。韓国はIMF流金融政策は懲りたのでしょう。

コラム目次に戻る
トップページに戻る