150.企業の海外生産について



45歳の電気メーカーに勤める会社員です。
当社も既に生産の90%を海外に依存し、国内の空洞化の問題と無縁
ではありません。
しかし、思うに、国内の労働人口も減っている。その分生産も海外
に移転。
そして海外の生産子会社からの利益配当で日本の社員は食っていく、
ということでうまく回っているような気がします。
仮に日本での労働力が不足するのなら、海外からの労働力をもっと
柔軟に受け入れる体制にすればよい、と思います。

日本単独での国力が均衡縮小するのは確かですが、資本も、技術も国
の枠を超えた連結で見れば、日本の国力は海外に拡散されていってい
るだけの事、しかもきちんと利益は確保できるつまり日本に戻ってく
るシステムなので、、国内で生産しようが海外で生産しようが、最終
的な日本の富は変わらない。
その富で、どうしても海外に持っていくことの出来ない防衛とか日本
文化の保持とかは日本で行えば良いのではないでしょうか?

佐藤
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(Fのコメント)
その通りです。しかし、企業が海外生産に伴い、国内の部品産業も
海外に出て行き、国内空洞化は大きな波及を他産業に与えていくこと
は知ってほしいのです。失業率5%以上の状態が続くと、日本も米国
と同様に、今後貧冨の差が拡大し、海外からの利潤で儲けが多いグル
ープと、国内のサービス産業の低賃金の人とに2分割される可能性が
出てくるのです。

 日本の良さ、治安の良さは、日本国民のほとんどが中流階級との
意識があったことと、ほとんど全員が何かの仕事に就いていたことに
よるのです。この構造が変化するのは、いいことでしょうか?
恐らく、大きなインパクトを世の中に与えるでしょう。しかし、現実
は佐藤さんお勤めの企業のように、海外生産になるでしょうから、
この事態をどう解決するかを、今後検討する必要があるのです。
これも、普通の国家になることの1つですが。

 日本の戦後は非常に恵まれた環境にあったので、その夢から、日本
の全員が目覚めたくないのでしょう。しかし、現実は、日本にとって
、いい方向ではないのです。そこをどうするかが検討ポイントです。

 そのため、日本の国際化が必要なのです。偏狭な国家主義では、
日本の今後は危ない。国際化を推進しながら、どう国内の活力を維持
するかが問題です。今の日本は精神的鎖国状態です。日本のアイデン
ティティを日本国民が持つことは重要ですが、日本が国際化する必要
もあるのです。米国や中国、ロシアを批判するだけで、どこと友好関係
を結ぶか、はっきりとした国際戦略のない評論はおかしいし、日本を
益々鎖国状態にすることになるのです。これにも反対です。

 その意味では、佐藤さんの意見と同じですが、佐藤さんのような
企業が国際化するだけでは問題が解決しないと感じるのです。もう
少し問題の根は深いと思うのです。このため、深い根を掘り起こして
検討しておく必要があると思います。
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(読者からの質問)
マイクロソフトはIBMとくっついて発展できたが、ソニーは違いま
す。モルガン人脈で発展したと書いておられますが、ソニーは、
終始一貫、コンシューマー向けの大衆商品で発展してきたのです。
いかにモルガン人脈といえども、大衆がソニーブランドを購入する
のには、何の力にもなりません。
ソニーの発展は、トランジスターラジオ、トリニトロンテレビ、
ウォークマン、8MMハンディカム、プレステ、VIOといったヒット
商品を次々と生み出し、市場でヒットさせていったからこそであっ
て、だれそれの強力なコネで発展したというものではないと思いま
す。

もちろん保険会社とかそういったものは、それなりのコネクション
も必要かもしれませんが、その保険会社は、ソニーの企業活動の
ほんの一部分でしかありません。やはり今のソニーの中核はコンシ
ューマー向けのエレクトロニクス製品です。そしてそれの発展を
支えるのはあくまでもコンシューマー、そしてヒット商品を作るだ
けの会社の技術力とそれを可能にする企業風土だと思いますがいか
がでしょうか?

佐藤
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(YSのコメント)
佐藤様

御意見ありがとうございます。
御指摘の内容に対して全く異論ありません。
ただ既に多くの方が貴殿と同様の見解にてソニー史を描いています。

私のコラムは多くの方があまり触れていない面に
スポットライトをあてることで
企業の世界戦略を分析することに重点を置いています。

従って企業風土や技術力といった一般的な企業論
が目的ではない点をどうか御理解下さい。

敢えてお話すると御指摘のソニーグループの発展が
「その技術力とそれを可能にする企業風土」『だけ』で
成立している訳ではないことは
創業者御本人が一番良く御存じではないでしょうか?

企業とは有機的に繋がり合って活動しており
特に資金調達、資金決済、情報収集、そして最近ではM&A等
における金融機関との重層的な相互依存関係自体を
否定することはできないはずです。

とはいえ日本で先陣を切って社外取締役制度導入を行い積極果敢に
取り組まれるその姿勢は私自信本当に尊敬しています。
また御指摘の前に現在の社員の方に失礼かと思い、
もうひとつの投稿HPである『萬晩報』へは下記内容にて
修正を入れたことも御報告させていただきます。


このソニー創業者である盛田氏の人脈は1969年3月のJ・P・
モルガン国際委員会役員就任にさかのぼることができる。この「モ
ルガン人脈」こそがソニーの発展を『陰で』支えたのである。

YS
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(読者からの返事)
ご丁寧な返答ありがとうございます。
確かに企業というものは、一つの面だけでは言い尽くせないものが
あります。
ましてや、ソニーのような企業はなおさらだと思います。
そしてそのような企業が時とともに姿、業態を変え、どんどん発展
していくのだと思います。
反対に、硬直化した企業というのは、廃れていくものです。

今後とも、有益なメイルの配信をお願い致します。

佐藤

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