131.英国事情について



柳太郎@Londonです。

> たとえば私が住んでいる英国では、多くの人が(私の周囲にいる人
> 、で英国人一般の基準から少々ずれるかもしれませんが)英国の
> 国旗・国歌に対して良い印象をもっていません。英国の皇族を尊敬
> しているという英国人は日本の皇族を尊敬している日本人よりはる
> かに少ないよいに思われます。
>
>   また、私の印象では国旗(イングランド旗・スコットランド旗
> なども含めて)を掲げている建物は日の丸を掲げている日本の建物
> より少ないと思います。

NationやNationalismをイギリスについて語る時には、以上のように
単純には語れません。イギリスではイングランド、スコットランド、
ウェールズそして北アイルランドにおいて、程度の差はあれ、強い
Nationalismを維持しています。

イギリス政府はNationalismに非常に神経をとがらせているのではない
かと思われます。ここではNationalismの歴史などは省きますが、なぜ
国旗をあまり掲揚しないのか(またはしようとしたがらないか)は主に
以上の理由によるところが大きいと思います。つまり、いたずらに
Nationalismを刺激しないようにしているということです。

また、英国王室に対する感情はClass Systemへの国民(労働者階級)の
反感という観点から見ないといけないと思います。

私も現在イギリスに滞在していますが、Nationalismは普段の生活の中
に見られます。例えば、ウェールズの建設現場で働く出稼ぎ労働者
などは、彼ら自身の主張として建設現場の外側を囲う鉄格子や足場に
使う鉄のパイプをウェールズの旗にある3色を使って色付けしています。

>  私はアメリカ人の異常なまでに愛国心が強いことが、そらおそろ
> しく感じます。

私には、なぜそら恐ろしいのか分かりません。アメリカはアメリカと
いう国への忠誠心を高めない限り、その国家の構成要因(他民族性)に
より混乱または崩壊する危険性があるのはみなさんもご存知でしょう。
アメリカは国家のために経済力・軍事力を高めるというイデオロギー
を国民に植え付けることに成功しています。これが悪用されれば
帝国主義に向かいますが、そうでなければ国家の繁栄を維持する方向
に利用できるわけです(これを経済的な帝国主義と形容する人々もいま
すが)。

現在の日本はどうか。日本政府は明らかにNationalismを高めようと
しているように見えます。つまり、更なる経済的発展を目指すなら、
国民が団結する必要性があるということを意識しているように見えま
す。(これは開発学の分野でも開発とNationalismといった内容の議論
があります。)現在の日本は、アメリカの力に押されているのは明らか
です。冷戦中のように、アメリカは日本に対して甘い政策を施さなく
なりました。アメリカ政府はもう1980年代のドイツや日本に経済的な
優位性を取られるというような失策は2度と犯すまいとしているよう
に見えます。アメリカはこの観点から自国の優位性を広めるために
Neo-liberalのイデオロギーを利用しています。日本政府もそれを感じ
取っているでしょう。

ですが、アメリカに反日感情を植え付けるあからさまなやり方は得策
では有りません。Neo-liberal的イデオロギーはまた日本にも有利な
条件を提示しています。
ですから、アメリカに対抗するため、または将来飲み込まれないよう
にするため、まず国内の意識変革を狙っているのではないかと思いま
す。アメリカは近年この点にもSensitiveになっているのではないで
しょうか?

アメリカは国民のMotivationを高めることに成功し、イギリスは失敗
しているのかもしれません。その結果が、アメリカの現在の反映と
イギリスの産業的な衰退に反映されているとすれば、日本政府は
イギリスを反面教師とし、アメリカに対抗するために国民の
Motivationを高めようとしているのかもしれません。
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(Fのコメント)
ありがとうございます。柳太郎さん。英国の事情がわかりました。
今後も、英国事情をお願いします。私は欧州に行ったことはない。
サイトの情報で判断している状態です。

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