125.新日債銀にみる日本の終焉



YS/2000.03.12

日本長期信用銀行は「新生銀行」として強力な役員体制のもと新しく生
まれ変わることとなった。ここで気になるにはもう一つの特別公的管理
中の日本債券信用銀行の再生方法である。

2月24日金融再生委員会はソフトバンク、オリックス、東京海上火災
保険等の企業連合に譲渡することを決定した。その売却額は10億円。
ほとんどただ同然の最終処分特価に等しい。国民負担は3兆2000億
円に達している。

6月の新たなスタートに向け役員人事等の作業に追われていると思われ
る。一部にすでに決定しているものもあり、その内容を含め分析したい。

決定人事(日本経済新聞2000年2月25日付け朝刊より)

頭取     本間忠世元日本銀行理事

社外取締役  孫正義ソフトバンク社長
       宮内義彦オリックス社長
       樋口公啓東京海上火災保険社長

新しく頭取に就任する本間忠世氏は1963年東京大学法学部を卒業し
日本銀行に入行。人事局次長、管理局次長などエリートコースを歩んだ。
バブル末期の90年に信用機構局長に就任するが金融システム崩壊を防
げなかった。98年春にある事件をきっかけに日銀を退職し東京中小企
業投資育成特別参与に転出する。

この「本間頭取体制」実現の背景には孫正義氏から頭取人事の相談を持
ちかけられた宮内義彦氏が藤井卓也・日債銀現頭取に話しを持ちかけた。
藤井頭取は元日銀副総裁であった福井俊彦・富士通総研経済研究所理事
長と協議して本間氏を推薦したとのことである。

本間氏は98年秋に速水優・日銀総裁に呼び出され新長銀の頭取への就
任を打診されたが、この時は「処分されて退職したばかりで時期尚早」
と明快に断っている。

「処分されて退職したばかりで時期尚早」のある事件とは世間を騒がせ
た例の一件である。本間忠世氏は誰もがその人柄と実直さを認める人で
この事件では犠牲者的に見られているようだ。

(この事件の内容はあまりに下品な為敢えてここでは触れないが興味の
ある方は検索エンジンで情報収集して下さい。簡単に入手できます。)

新生長銀(新生銀行)の取締役として青木 昭・元日銀理事(現日本証
券金融株式会社取締役会長)も就任しており日本銀行の姿勢には疑念を
待たざるを得ない。

長銀譲渡はゴールドマン・サックスが、今回の日債銀譲渡についてはモ
ルガン・スタンレーがファイナンシャル・アドバイザーを務めた。日本
の証券業界は代理店窓口販売業となっており務める能力がないのは仕方
がないにせよ長銀同様の国際的人事が行われる気配を感じる。

その他の取締役人事は今のところ発表されていないが小林陽太郎・富士
ゼロックス会長は当然候補の筆頭にあげられていると思われる。この小
林氏の人脈から同じくJ・Pモルガンで国際諮問委員会のメンバーであ
るシンガポールの建国の父リー・クワン・ユー前首相の可能性も無視で
きない。日本のベンチャーの父親的存在である稲盛和夫・京セラ名誉会
長あたりも適任であろう。また長銀で候補にあがったロバート・ルービ
ン前財務長官もIT分野での実績から再び要請が行くかもしれない。A
OLタイムワーナーの取締役でもあるカーラ・ヒルズ元米通商代表起用
もお勧めだ。

長銀が長老重視に対し日債銀ではベンチャー及びIT分野重視の戦略か
ら若手重視の人事が行われるだろう。ぜひそうあって欲しいと思う。

引用

雑誌「選択3月号」P79

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