北朝鮮問題・別の見方



お世話になっております。長くなりますが、北朝鮮問題に関して
です。

日本政府の対北朝鮮政策に対する批判を頻繁に目にします。それら
の根拠として横田めぐみさんを始めとする拉致された国民を救う
ことも出来ないままに食糧援助を行おう、国交正常化交渉を行おう
としている政府の姿勢が挙げられています。韓国の太陽政策や
アメリカのペリー報告に追随した形になっていること、98年の
テポドンミサイル発射事件や日本人妻里帰り問題、不審船問題で
対北朝鮮国内世論が悪化していたこともその背景と言えます。

しかし日本政府を一概に批判するのはどうでしょうか。外交が常に
国内世論と国際世論のジレンマに陥るのは言うまでもないことです
が、94年に合意枠組みが成立し、また99年にクムチャンリが視察さ
れたとは言っても北朝鮮における核兵器開発疑惑が払拭されたわけ
ではありません。北朝鮮の瀬戸際外交とは非常にゼロ・サム的
(オール・オア・ナッシング)な特質を持っているため追い詰める
と即核戦争へと発展する危険があることを忘れるべきではありません。

核戦争だけは避けなくてはならない、という危機感から登場したの
がアメリカや韓国の建設的エンゲージメント政策ですが、この政策は
これまで一定の成果をあげていると言えます。予想されたテポドン2
の発射は回避され南北朝鮮の経済・文化交流も格段と広がりました。
韓国の急進派やアメリカ議会・共和党員からは批判も多いもの
の、1998年8月以来今日までの平和(NO CRISISの状態)を
購入することに米韓は成功したといえます。2000年に入ってからは特に
、イタリアがG7で初めて北朝鮮と国交を樹立、イスラエル大使が
北朝鮮への農業面における援助の準備があることを発表、露朝間に新
たな友好条約の締結、オーストラリアが北朝鮮を訪問して外交関係の
回復を狙うなど対北朝鮮外交は活発になる一方です。イギリスをはじ
めとしたEU諸国もすでに北朝鮮政府とコンタクトを取っています。
このプロセスに乗り遅れるのではないかという不安が日本政府にも少な
からずあるでしょう。

北朝鮮の諸国に対する柔軟路線の裏には、キム・ジョンイルが国内の
権力基盤を固め本格的に外交へ乗り出すことが可能になったこと、
金日成の教えを曲げてでも諸国から援助を引き出さなくてはならない
経済事情、中国経済の成功を受けて資本主義の部分的な導入に対して
多少ながら理解を示し始めたことがあります。しかしこの柔軟路線は
あくまで一時的である可能性が高く、根本的な国内改革は始まってい
ません。先進諸国の間には昨年から援助疲れが見えているうえに、
MIG戦闘機購入、コンゴ共和国からのウラニウム輸入、イランへの
ミサイル輸出など疑惑は耐えません。

それでもなお、アメリカ・韓国はぴったりと歩調を合わせた政策を
推進し、さらに日本も協調路線を取るように圧力をかけています。
北朝鮮は解放・改革路線を取ることによって現在のキム・レジームが
崩壊してしまうことを極端に恐れているため周囲に非友好的な国
(それも米軍の滞在している国)が存在している間はエンゲージメント
政策には積極的な反応を示さないのではないかということが懸念さ
れているからです。各国が経済制裁を解除し次々を食糧援助などを
北朝鮮に提供している間、日本は米韓との協調を掲げながらも独立路線
を取ってきました。日朝会談において拉致疑惑の解決を求め、経済
制裁を加え、援助を停止してきたのです。

しかし北朝鮮側の回答は「国内に日本人行方不明者は存在しない」
(北朝鮮赤十字)、「人道的援助と政治問題は切り離して考慮すべき」
、「二次大戦に関して謝罪が済んでいない」などと主張し、話し合い
は常に平行線をたどりました。打開策を探るべく昨年の12月、日本政府
は対北朝鮮経済制裁を解除し日本からの経済援助が可能になったのです。
ですがいまさら日本が食糧援助をするといっても「米袋を外交カードに
使っている」と非難されてしまっています。

さて、これをお読みのアナタが(笑)日本の政策決定者であるとしましょ
う。こう言った状況の中で日本にはどう言った選択肢があるのでしょう
か。

国内世論の悪化を覚悟の上で米韓に協調しますか?
核戦争(=全国民だけにはとどまらない被害)を覚悟してあくまで
北朝鮮と対峙し続けるでしょうか?
軍事衝突に発展でもすればアジア諸国の反発は必至ですが、仮に通常
兵器による戦争で北朝鮮をたたいたとしても流出する移民や疲弊した
朝鮮半島の経済を支援する経済的な余力が今の日本にあるでしょうか。
拉致された日本人は北朝鮮エージェントの日本語教育係になっている
らしく、「彼らの生存は保障されている、しかし戦争になれば真っ先
に殺されるだろう」という北朝鮮から亡命した元幹部の証言もあります。

北朝鮮側はこういった日本政府のジレンマを十分に理解しているのでは
ないでしょうか。実際、ここ数ヶ月の北朝鮮は日本と米韓の対北朝鮮
政策の微妙な違いを拡大しようかとしているようです。諸国に対して
は柔軟に対応する中、日本に対しては強硬な姿勢を保っています。
日米の調和を乱しのちに日本の外交姿勢をエンゲージメントに積極反応
しない、あるいは軍事開発を続ける口実(=外交カード)として利用
するつもりであるとも考えられます。

私は大勢のために少数の人たちを犠牲にしろと主張するのではありま
せん。拉致された方のご家族もさぞお苦しみであろうと察し申し上げ
ます。ただ、日米中韓露と各国を巻き込んだ戦争や核危機を避ける道
(=日本の国益)を日本政府が探ることは単純に非難されるべきでは
なく、政策決定者を簡単に無能者扱いするのは賛成できません。
ステップ・バイ・ステップ、まずは北朝鮮を対話の席にとどまらせる
ことから始めなくてはなりません。合意枠組みに見られるように具体的
に取引内容を提示すれば北朝鮮は確実な反応を示しています。
莫大なお金がかかり、膨大な忍耐力を要求される交渉プロセスになる
でしょうが、それも拉致された人たちを救うためのお金・時間・忍耐力
の投資であると言えます。そして、投資には常にリスクが付きまとう
ものです。日本政府は国内世論(=民主主義における根本的な政治生命)
というリスクを背負いつつ北朝鮮との根競べをしていると考えるのは、
いかがでしょうか?

蛇足ですが・・・・
経済面からボーダーレス化が進行し国家という枠組みが薄れてくる現象
はいわゆるグローバリゼーションという言葉で表現できるかと思います。
見落とすべきでないのは、国民あっての国家ですから国民を保護するのは
当然の義務であると同時に、諸外国からの「承認」あっての国家でもある
ということです。仮に日本が憲法改正をして軍事的プレゼンスを拡大
したとしましょう。

東南アジアの反発→海外進出していた日本企業への打撃・貿易高の落ち
込み→不況&失業→政府財政の悪化・ビジネスセクターの縮小→失業者
保険・年金の破産といった連鎖が考えられます。天然資源や食料の輸入
もととは特に有効な関係を保ちたいのも明らかです。戦争の時代と違う
のは軍事力が国家の道具として使われる機会がめっきり無くなったと言
う点でしょうか。持たざる国において、諸国との関係を重視する日本政府
の姿勢も、ビジネスを守る(=国民の保護)と言う点であながちその義務
を果していないとも言いきれないのではないでしょうか。

北朝鮮問題も重要ですが、周辺事態への兼ね合いなど考慮すべき点は多
いと思います。

Summy さん
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(Fのコメント)
 ありがとうごいざいます。日米政府の立場を説明しています。
これに対しては、いろいろな意見があると思いますが、Summyさん、
その回答もよろしくお願いします。

 しかし、少し反論させてください。日本が米支援をしないと、戦争
になるという説明はおかしいと思う。日本と世界が連携して、また
社民党と連携しながら、北朝鮮問題を扱い、最悪の事態は引き起こさ
ない多次元の外交が必要です。単次元外交の発想はムリがあります。

 もう1つ、日本国民を守らずにボダーレス化は危うい。まだ、世界
は欧米や日本ほど、安全ではない。また、国民が民族としての誇りが
ないと、埋没する危険性があるため、自民族の歴史をほとんどの民族
はボーダレス化している現在、強化している。それと、当然道具とし
ての英語教育の強化です。
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